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「AED使用で救命率2倍」なのに、"女性には使いにくい"現実

2019年06月06日(木)放送

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5月、命をめぐる「男女差」が明らかになりました。学校で心停止をした生徒にAEDが使われたかどうかの調査で、女子高校生は男子高校生に比べて使用率がかなり低かったことがわかったのです。原因として、専門家は「女性の肌に触れる、服を脱がせることへの抵抗感が表に出た結果」だと分析します。そこで、服を脱がさなくても対応できる、正しく知っておきたい「AEDの使い方」を取材しました。

AED使用で1か月後の社会復帰率2倍に

プールの授業が始まるのを前に、中学校の教職員向けに救命講習会が大阪市立西中学校で行われました。

「7、8、9、10」
「離れてください。(電気)ショック落とします」

毎年開催されていることもあり、参加する先生たちは慣れた手つきで心臓マッサージやAEDのパッドを貼っていきます。

「毎年近く受講していますけど、『忘れているな』というのがやっぱりあります」(受講6回目の男性)
「学校ではないんですけど、AEDを使った機会は一度だけありました。毎年1回必ず受けていても、そういう時って一瞬体が動かなくて本当に手が震えました」(受講10回目の女性)

大阪市消防局によりますと、昨年心停止で救急搬送をした人のうち、救急隊が到着する前に居合わせた人がAEDや心臓マッサージなどの救命処置をしていたのは約46%。まだ半数に満たない状況ですが、10年前と比べると10%も上昇したといいます。

「1か月後の社会復帰率を比べた場合、救急車が到着するまでにAEDを実施すれば約2倍以上の救命率となっています。より多くの方が、ひとりでも多く応急手当をしていただくと」(大阪市消防局 藤山圭典さん)

AED使用に男女差があるわけ

しかし今回、専門家の調査※で明らかになった「女子高校生にはAEDが使われにくい」という現実。この調査をまとめた京都大学の石見教授は「女性の肌に触れる、服を脱がせることへの抵抗感が表に出た結果」だと分析します。

※学校で子どもが心停止したときAEDが使われたか?
男子高校生83.2%、女子高校生55.6%
(京都大学 石見教授らの調査から)

「一般社会にでると、より関係のないまったくの他人の方が倒れているという状況も多い、さらに抵抗といいますか、いろんな不安だとか心配があって、行動を起こしにくいこともあり得る。とにかくAEDというのは早くつけないといけなくて、心臓が止まっている人というのは1分1秒を争って死に向かっていますので、少しでも早く行動を起こしてAEDを貼ってあげると」(京都大学健康科学センター 石見拓教授)

緊急のときでもAEDの使用を迷ってしまう方もいるかもしれませんが、まずパッドを貼ることが大切だといいます。電気を流す必要があるかないかの判断はAEDがするので、できるだけ早くパッド貼ることが最優先です。また妊婦さんにも、赤ちゃんの命を救うためにも躊躇なく同じように処置が大切です。

駅で意識を失った女性…AEDを使った現場の声

実際に、AEDを使って女性を助けた人に話を聞くことができました。JR加古川駅の駅員の宮崎さんと為広さんです。昨年6月に帰宅ラッシュの午後7時ごろ、30代の女性が加古川線のホームで意識を失って倒れました。

Q.女性はどういった状態だった?
「頭から倒れて顔も真っ青だったので、とりあえず線路から遠いところに移動させて、消防の方を呼んでもらってすぐにAEDを取りに行ったという感じですね」(為広さん)

為広さんがホームを離れて改札口に設置されているAEDを取りに行っている間は、「応急手当普及員」の資格を持つ宮崎さんらが救命処置にあたりました。

「もうひとり社員がいたんですけど、そちらの方が心肺蘇生をおこなって、自分が人工呼吸をして役割分担しながら」(宮崎さん)
Q.30代の女性にAED、抵抗はなかった?
「抵抗はなくて、お客様を助けたい一心やったんで」(為広さん)

一方、プライバシーの配慮は、周りにいた乗客が手助けしてくれました。

「周りのお客様に助けていただいて。ちょうど帰宅ラッシュの電車が止まっていたもので、中にたくさんお客さんがいて、実際見える状況だったので、(衣服で)窓を隠していただいた」(宮崎さん)

素早い救命処置が行われたことで、女性は通常の生活を取り戻しているといいます。

「通っていただくたびに、ほっとします」(為広さん)
「元気そうでよかったです」(宮崎さん)

衣服をつけたままのAEDの使い方

では、実際に目の前で女性が倒れた時にどのようにAEDを使えばよいのでしょうか?市川いずみアナウンサーが訓練用の人形にブラジャーと衣服を着せて、教えていただきました。

「右が肩のすぐ下あたり、左が脇の下あたりに素肌に貼り付ける。服をよけられれば右の肩の下のところに」(京都大学健康科学センター 石見拓教授)
Q.(パッドの)向きはどうでもいいんですか?
「向きは大丈夫です。左はずっと脇の下のほうに。その後は服で被せて隠してあげても大丈夫です」

服を脱がせたり、女性の気になるところを見ることなく貼ることができました。

Q.ブラジャーのワイヤーとかは大丈夫なんですか?
「金属があると電気が流れる時に多少やけどする可能性があるが、やけどよりも心臓を元に戻してあげて救命することの方がずっと優先される」

体験した市川アナウンサーは…

「同じ女性同士でも、『全部脱がせてというのはちょっとな』と思うところがあったんですけど、間からすっと手を入れるだけで、ちゃんと貼らないといけない場所に貼れますし。これだと抵抗がない気がします」

長年救命処置の普及に携わってきた石見教授は、今回の調査結果が訓練のあり方を見直すきっかけになったと話します。

「教える側が少しかたちにはまってしまっていて、最初から人形が当たり前のように男性であったり、服を脱がせて素肌に貼ったりという前提になってしまっている。みんな躊躇しているということが明らかになったわけなので、よりリアリティーのある、服を脱がせて配慮するシチュエーションを体験するとか、そういう訓練はとても重要だなと感じています」

ペットボトルでできる「心臓マッサージ訓練キット」

そしてAEDと共に救命処置で大切なのが、心臓マッサージです。「助かる命を確実に助けたい」その思いで、驚くほど簡単な訓練キットを開発した人たちがいます。

「一般に売られているペットボトルで訓練ができます」(ファストエイド代表理事 玄正慎さん)

玄正さんたちが進めているのは、飲み終わったペットボトルを使った心臓マッサージの訓練キット。

「心臓突然死で倒れる場所の7割が家。家だと『誰か』と呼んでも誰も来てくれないので、家族全員が知識がないといけない。家でただで手に入るものでと思ったときに、ペットボトルができるんじゃないかと」(ファストエイド玄正慎さん)

6年前に電車の中で急病人に遭遇し、何か普段からできることはないかと考えた玄正さん。救急隊員として10年の勤務経験がある小澤貴裕さんに声をかけ、訓練キットの開発を始めました。2人は、様々な種類のペットボトルを集めてテストを重ねます。その結果、「サントリー天然水」のボトルが訓練用の人形と同じ弾力であることが判明。そこで、ペットボトルに合わせた専用のシートを開発し家庭でも、心臓マッサージの訓練が簡単にできるようにしたのです。心臓マッサージがちゃんとできているとライトが光る机で体験させていただきました。

(市川アナ)「あ、いけました?」
(小澤さん)「できていますね。リズム良く引いた力をそのまま落とす」
(市川アナ)「実際体重をかけてみると、結構反発があって思ったより硬かったです」
(小澤さん)「消防職員に触ってもらったりしたんですね、『人形に似ているかと思ったけど、むしろ人体に似ている』という意見がでた」

すでに、様々な企業や大学などでこのペットボトルを使った心肺蘇生の講習会が開催されていて、今後はシートを一般に販売する予定だそうです。

(市川アナ)「実際にやってみて、自分がひとつこれを覚えるだけで人の命を助けられるかもしれないと思うと、いつでもできる状況にしておくことは必要だなと改めて感じました」
(小澤さん)「自信を持つ、自分はできるようになったと思うことが緊急時にやろうという行為につながると考えています。ひとりの知識がその家族とか友達とか職場とかに広がっていく、そういういった仕組みをつくりたいと考えています」

(『特命取材班・チームF』より)
※このコーナーは女性スタッフが企画を出し合い、調査・取材をするコーナーです。

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