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国宝や名画など本物を超越する!? スーパークローン文化財とは

2019年05月14日(火)放送

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世界的な名画や門外不出の国宝、これらをデジタル技術で見事に再現する「スーパークローン文化財」とは?世界が驚く最先端の現場に潜入しました。

複製とは違う「スーパークローン文化財」

スーパークローン文化財の展覧会が開かれている東北歴史博物館(宮城・多賀城市)を訪ねた辻憲太郎解説委員。学芸員の方に会場を案内してもらいました。

「法隆寺金堂のご本尊、釈迦三尊像のスーパークローンです。奈良に行っても入口からしか見ることができないご本尊。門外不出のご本尊がこのように前からだけでなく、横からも後ろからも見ることができる。これがスーパークローンの大きな魅力です」(東北歴史博物館 芳賀文絵学芸員)

細部まで忠実に再現した奈良・法隆寺にある国宝・釈迦三尊像のクローン。本物のように見えます。

(芳賀学芸員)「それだけではなく、真近で写真を撮ることもOKなんです。2ショットもできちゃいます」
(辻解説委員)「2ショット!釈迦三尊像とこんな形で…法隆寺では絶対できないですよね!」

クローンだからこんなことも可能です。

(辻解説委員)「これまで文化財の複製とかコピーとかというと、ネガティブなイメージがあったと思うんですけど、クローン文化財は違うんですか?」
(芳賀学芸員)「単なる形を写し取るだけでなく、そこに含まれている技法や素材、文化的な背景、そういったものも組み込んで、後世につなぐ技術として同じ形で文化財を作る。それがスーパークローン文化財というもの。単なる複製とはちょっと違うんです」

「オリジナルを超える」助言や文献をもとに“現存していないものも作る”

このスーパークローン文化財の技術を開発したのは、東京藝術大学名誉教授の宮廻正明さんです。クローン文化財はどのように作るのか、最先端の現場を見せていただきました。

「いま、パソコン上に釈迦三尊像が映っているんですけど、パソコンの中で作り出したものです。360度動かすことができるのが、いまの技術です」(東京藝術大学 宮廻正明名誉教授)

釈迦三尊像のクローンは、38ミクロンという細かさまで計測できる高精度の3Dスキャナーで形を読み取り、そのデータをもとに3Dプリンターで原型を作ります。

「クローン文化財はいかにオリジナルに近づけるか。でもオリジナルを超えられないというのが、いままでの常識だったんです。我々は『オリジナルを超えることができるんじゃないか』と。(釈迦三尊像の)欠損して現存していないものも作っている」(宮廻正明さん)

クローンは最新技術だけで作られる訳ではありません。大事なのはここからの手作業。伝統的な鋳造や彫刻技術で質感、形、色などを忠実に仕上げていくのです。

また本物には現存しない仏像の背後の飛天まで、専門家の助言や文献をもとに蘇らせたのです。

立体になった「笛を吹く少年」

スーパークローン文化財の展覧会ではさらにこんな作品も…

(芳賀学芸員)「音楽の教科書にも載っている『マネ』の『笛を吹く少年』。こちらは油絵のスーパークローンになりますが、その少年が(立体になって)飛び出したのが、こちらの笛を吹く少年」
(辻解説委員)「飛び出しましたね!これは…一休さんでしか聞いたことがない話ですけどね、『描かれたトラを出してみよ』というね」

立体になった少年は笛の長さから大きさを計算して作り、表面は油絵具で仕上げました辻解説委員、釈迦三尊像に続いてここでも写真を撮りました。所蔵しているパリのオルセー美術館でも撮れません。

ほかにもゴッホの自画像のクローンでは…

(芳賀学芸員)「この油絵の筆のタッチであったり、絵具の立体感。こちらも写し取っているのがスーパークローン文化財です」
(辻解説委員)「絵の具の“ふくらみ”もありますが、これも同じ?」
(芳賀学芸員)「そうですね」

失われたものも、劣化で非公開になったものも“再現”

クローン文化財は世界の紛争で失われた遺産にも活用されています。アフガニスタン、バーミヤンにあった石仏は2001年に反政府勢力のタリバンによって爆破されました。

宮廻さんはこの天井壁画を蘇らせようと、過去に京都大学の調査団が撮影した約1万5000枚の写真をもとに、複雑に凹凸があるドーム型の壁を発泡スチロールで製作。その上に壁の質感まで追求した絵を貼り付け調査で得られた色を再現し完成させました。遺産の再現はこれだけではありません。

(芳賀学芸員)「ぐるっと一周、まるで現地にいるかのように…」
(辻解説委員)「すごいですね」

観光客の増加で劣化が進み、現在非公開になっている中国・敦煌の世界遺産「莫高窟第57窟」です。現地から取り寄せた土を表面に使うなど、本物に近づける工夫をしています。

「横山大観の紅葉」は2億画素のカメラで撮影

いま、宮廻さんが取り組んでいるのは日本の近代美術です。

「(横山大観の)『紅葉』。最終段階の仕上げに入っていまして、まったく同じものに作っているクローンなので、本物と偽物の区別がつかない」(宮廻正明さん)

本物は島根県の足立美術館に所蔵されています。クローンの製作には2億画素もの情報を記録できるカメラで撮影。今年夏の完成に向けて作業が進んでいます。

Q.製作作費は?
「いろいろな事情があってお話はできない。ただこれは(保存のため)年間3か月間しか展示ができない。でもお客さんはこれを目当てに来る。足立美術館も1年中、皆さんに見てもらいたいということで、クローンを作っておくとまったく同じものなので、9か月はこれでカバーできる」(宮廻正明さん)

“祈りの対象”にまでクローンの価値を上げていきたい

文化財の継承は人類の課題。しかし、数百年、千年以上前に作られたものは劣化や破損が起こっています。文化財を守るためにも保存が必要な一方、広く一般に公開が求められることもあります。これらの問題を解決する方法としてクローン文化財を生み出した宮廻さん。さらなる挑戦があるそうです。

「いま、オリジナルを超えるところまで行った。我々はもうひとつ先のステップに行きたいんです。先のステップは何かと言うと、『精神性の再現』なんですよ。だからこれを見て、みんな手を合わせたくなって“祈りの対象”として見られるところまでクローンの価値を上げていきたい。精神性をどう入れていくのか。どういうふうに理論付けていくのかが今後の大きな課題」(東京藝術大学 宮廻正明名誉教授)

(『辻憲のちょいサキ!』より)

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