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【特集】「学童保育」指導員は何人必要?「待機児童問題」で揺れる"規制緩和"の是非

2019年05月14日(火)放送

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小学生たちが放課後に過ごす居場所のひとつが「学童保育」です。働く親の代わりに子どもたちを預かってくれる施設ですが、そこで働く指導員の人数をめぐって国が定めた基準が議論を呼んでいます。制度と現実のはざまで揺れる学童保育の今を取材しました。

放課後の子どもたちをみる「学童指導員」

大阪・鶴見区にある「榎本めだか学童保育」。午後2時になると…

「ただいま~」
「おかえり~」
「ただいま~」
「おかえり~」

子どもたちが学校から続々とやって来ます。ここで働くのは、指導員歴13年の宇治丈晴さん(38)です。

(児童)「うっちゃん、めだかの連絡帳忘れました」
(児童)「うっちゃん、タオル忘れました。明日持ってきます」
(宇治さん)「休み明けやからって忘れ物が多いな」

宇治さんは“うっちゃん”と子どもたちから呼ばれているようです。指導員は働く親の代わりに放課後、子どもたちの世話をします。ここには、小学1年から6年まで40人の子どもたちが通っています。

(宇治さん)「(書き取りノートを見ながら)さくらちゃん、ここ最後“シュッ”て払うねん」

子どもたちを見守る指導員は3人。宿題の面倒をみたり、遊び相手になったりします。

(宇治さん)「(駒は)しっかり前に投げて」
(児童)「こう?」
(宇治さん)「そうそう」
(児童)「おお、回った!」

時には、親代わりとなって子どもを諭すこともあります。

(宇治さん)「5年生から『もっとはよ歩けや』『さっさと行きや』って言われたら嫌やろ」
(児童)「いや」
(宇治さん)「じゃあ、それを2年生にするのは間違ってないか。自分がされて嫌なんやったら、人にしたらだめ」

学童に通う子どもたち全員としっかり向き合うには、3人の指導員でもやっとのこと。かつて1人で20人の子どもをみていたこともある宇治さんは、その難しさをこう話します。

「あれもしないといけない、これもしないといけない、子どもも見ないといけない。そうこうしているとトラブルが起こったり、子どもの仲裁に入ったりしてたら、また別のところで誰かが泣いていたりとか。指導員に余裕がないと、子どももわーってなってしまったりとか、けがが出たりとか。見られてないところが出てしまったり、ということにつながる」(宇治さん)

「指導員の数」減らす方向へ、背景にある“学童の待機児童問題”

しかし、その指導員の数が減らされるかもしれないという事態が起こっています。それが「指導員の配置人数の緩和」です。

そもそも、学童保育は各自治体が定める条例によって運営されます。地域によってバラバラだったサービスを一定に揃えるため、厚生労働省は4年前に学童保育の設備・運営基準を定めました。

自治体が行う研修を修了した人に与えられる『放課後児童支援員』という資格が作られ、「施設には指導員を2人以上配置、うち1人は資格保有者」とする基準などが設けられました。これらは「学童保育の質の向上と子どもの安全や安心を守るためのものだ」と基準の策定に関わった専門家は話します。

「サッカーしたい子もいれば、ゆっくり本を読んでたい子もいる。いろんな子どもたちのニーズに応えていくのが、放課後児童クラブ(学童保育)。もう一つは安心・安全のため。1人がけがをしたり、けんかが起こっているときにけんかを仲裁したり、けがをしたらけがした子の面倒をみないといけない。そうしたら、ほかの子たちの対応をする人がいなくなってしまう」(基準の策定に関わった 柏女霊峰さん)

しかしその基準がいま、事実上の廃止に追い込まれています。背景には“学童の待機児童問題”があります。

学童を利用している子どもの数は年々増加。待機児童も変動はありながらも数を増やし、去年は約1万7000人です。しかし、受け入れを小学3年までに制限している施設もあり、実際の待機児童はこれよりも多いといわれています。そこで国は、4年後までに約30万人の受け入れ枠を増やすことを目標に掲げました。

地方では“指導員集め”が厳しい現実 「基準緩和」衆議院で法案通過

しかし、壁となるのが“厚労省の基準”です。運営を担う自治体は常に指導員不足に悩まされています。2人以上の指導員が必要な今の基準では「学童施設の運営は厳しい」と、200以上の自治体から声があがりました。実際に基準緩和を求めた平井鳥取県知事は…

「地方は人集めに四苦八苦してまして、結局(指導員が)2人集められないために、子どもたちの居場所ができないという、そういう事態に陥ってしまっている。小さいところは本当の数人で、(子どもが)1人か2人いるかなという日もある。地方の実情に合わせてやるという工夫が必要なんじゃないか」(平井伸治 鳥取県知事)

こうした声の高まりから5月10日、衆議院で学童保育の基準を緩和する法案が通過。参議院で可決されれば制度上、指導員1人でも学童保育を運営できるようになりますが、問題は現場がそれで回るのかという点です。

現場では“指導員1人での運営”に困惑の声

子どもたちがけがをしたりけんかをしたり、学童にはトラブルがつきもの。危険を未然に防ぐことも指導員は求められます。「榎本めだか学童保育」の指導員・宇治さんは…

「こけてガラスの上とかだと、普通にこけるのとまた全然状況が違うんで、なるべく大人の目で広く見て、障害物というか、危険なものを取り除いて」(宇治さん)

先月、大阪市内で開かれたシンポジウム。集まった指導員たちからは切実な声が聞かれました。

「子どもっていつどこでけがをするかがわからないんで、けがしたときに病院に行かなきゃいけない、保護者との連絡しないといけないとなると、1人だと本当にやっていけないんですよ」(吹田市指導員)

「チームワークだと思うんです、子どもを保育していくっていうのは。1人だと、悩みとかあっても相談相手とかできないし、子どもたちにとって大人が複数いるというのは、子どもたちの視野というか、世界も広がっていくと思う」(吹田市指導員)

現場の声に耳を傾けてほしい

再び、大阪・鶴見区にある「榎本めだか学童保育」。午後7時、子どもたちが帰る時間です。宇治さんは1人1人に連絡帳を書いて、子どもたちを送り出します。

「1日の様子とかを書いたりして、帰るときにお渡ししています。学童での様子をおうちの方にもちょっとだけでも報告というか、伝えるためなのがひとつと、これ(連絡帳)をためていくと思い出になったりとかしますし。おうちで学童でこんなことしたんやって、お話のきっかけになってもらえたらいいかなと」(宇治さん)

制度によって振り回されてきた学童保育。現場で働く指導員の声に耳を傾け、何が子どもたちのためになるのか、地域全体で考える必要があるのかもしれません。

「本当に地方公共団体の地域の考え方によって、学童って右に傾いたり左に傾いたりするところがあるので、現場の声として、『資格を持ってて、複数体制をとってほしい』というのは、ぜひ国会であったり議論される場に伝わればいいなと思う」(宇治さん)

(「Newsミント!」内『特集』より)

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