花屋のチェーン店を経営するキャリアウーマン北山君子。明るく前向きな姿の裏には、離婚で引き裂かれた娘との確執があったのです。「こういう裏のある役は好き」という岸本加世子さんにお話を伺いました。
―最初にこの話を聞かれた時は、どう思われましたか?
実は、私の友人が石田ひかりさんが演じる役と一緒で、余命1年という話があったところだったんです。余計に胸に迫るというか、他人ごとではなくて、すぐ隣にあることなんだという気持ちを強く持ちました。
―北山君子の役作りはどのように考えられましたか?
おなかに物をためない人で、ズバっと何でも言ってしまう。でも情に厚い人で、別れた娘のことで心に傷を負いながらも、それを胸に秘めたまま一生懸命に生きている。イメージしやすかったです。明るく見えて実は何かを抱えて、人は皆生きています。今回は衣裳がほとんどパジャマだったので、ガウンは派手にと思って、豹柄を取り入れました。そこはこだわりました(笑)。
―淀川キリスト教病院のホスピスには行かれましたか?
ホスピスのチャペルでロケがあった時に行きました。イメージしていた感じではなかったですね。普通に明るくて、落ち着いた雰囲気で…思ったよりずっと明るかったです。患者の一人の方が(私と会ったことを)すごく喜んでくださって。(ホスピスナースの)田村さんから「みなさん、エネルギーをもらって元気になるんですよ。興奮して睡眠導入剤が必要になるくらい喜ばれるんですよ」と聞いて、考えさせられました。私がもし、その立場だったらあんなふうになれるだろうか、あんなに穏やかにいられるだろうか…と思いましたね。
―田村さんとお会いになっていかがでしたか?
田村さんのビデオは見せていただいていましたが、真矢さんが「形状記憶の笑顔」と言っていらしたように、人柄が顔に出ていらして。あんなに優しい笑顔はないですよね。私はがさつな性格なので、「心から寄り添われた人が日々亡くなる日常に、死に慣れてしまうことはないですか?」ってストレートにお伺いしたんです。そしたら、「それが、ないんです」って。「ひとつひとつが、又新たな出会いなので、又新たな気持ちで看護をしようと思うんですよ。この人の一生はこういう一生だったんだ、この方に人生に関われたというのを感じ取ってその最期に立ち会えることに感動がありますし、やりがいがあります」とお話され、使命のある素晴らしいお仕事だな、と思いました。
―大阪で長期間収録されるのは初めてだとか。
日帰りはあったんですけど、ドラマでこんなに大阪に連泊するのは初めてですね。6日間! 収録の合間に大阪の友達と鶴橋のコリアタウンに行ってマッサージを受けたりして、それなりに堪能させていただきました。たこ焼きも食べました。美味しかったです。
―真矢さんとは初共演ですね。
山本圭さん以外、真矢さんも遠藤さんも本仮屋さんも初めてでした。けっこう長い間仕事をしているんですが、こんなに初めての人が多いのも珍しいです。真矢さんは思ったとおり、さっぱりしていて、きちんとされていて、気遣いがすごくて、素敵な方でした。すっかり意気投合してしまいました(笑)。
―このドラマを通じて、感じられたことや改めて考えられたことがあればお願いします。
死もそうですし、死に方もそうですが、今まで日常ではあまり何も考えてこなかったんです。人生があと何日となった時にどういう選択をするか、必ず迫られる時が来る。そのことを考えさせられました。