小学校に上がる息子に自分の病気のこと、別れの日が近づいていることをどう話したらいいのか、悩む30代のシングルマザー役を演じられた石田さん。「演じているのがとても辛かった」といいます。石田さんにお話を伺いました。
―最初にこの話を聞かれた時は、どう思われましたか?
実はこのドラマのお話をいただく前にドキュメンタリー番組で、モデルのホスピス看護師・田村恵子さんのことは存じ上げていて、本当にお会いしたかったんです。それで、(田村さんの)写真入りの企画書をいただいた時には、もう、びっくりして…。ご縁を感じて、このドラマをぜひやらせていただきたいと思いました。
―今回、その田村さんにお会いになりましたね。
陽だまりのような方でしたね。どこまでもついていきたいと思いました。日々、患者さんが亡くなっていくことを自然に受け止められていらっしゃる。一番印象的だったのは、「病気になったことは、不幸ではない。がんになったことは、残念ではあるけれど、不幸ではない」という言葉ですね。田村さんに言われて、ハッとしました。
―石田さんにもお子様がいらっしゃいます。今回の役はご自身と重なる部分もあったのではないですか?
私にも7歳と8歳の子どもがいて、実生活に子どもの設定が近いから、親としてこんなに辛いことはないですね。私自身、病気で亡くなる役は今回が初めてなんです。普段はもっと(現場で)明るくしゃべったりしているんですが、今回はそんな気持ちになれなくて。静かに、自然な感じでいました。辛かったです。本当に辛かった…。
―役作りについては悩まれましたか?
収録現場に入ると、(共演者の)皆さんがいらっしゃるし、作りすぎず、考えすぎずに現場に入りました。一人でいろいろ考えるより、(役作りの)答えは現場にあるな、と。クライマックスシーンでは、直人役の行木瀬声くんが、ぼろぼろ泣いてくれて、その涙に助けられました。すべての気持ちを込めて、(比佐子として)生ききることは出来たかなあ、と思います。
―真矢さんとは初共演ですね。
お会いするのは初めてです。とても懐の深い方で、包容力もあって、ホスピス看護師の役柄にぴったりだったと思います。すごく安心して命を預けることが出来ました(微笑)。
―このドラマでホスピスや生き方について考えられたことを教えてください。
ホスピスは、陽だまりのような場所という言葉がぴったり。ですが、実際に子どもを残していかなければならない方もたくさんいらっしゃると思います。明るいとか、前向きに人生を楽しむというような言葉だけでは片付けられないと思います。死と真正面に向き合って、そこに向かって精一杯生きていく毎日は、実際には大変なことだと思います。生きている私たちは、普段、死について考えもしない生活を送っています。こういう苦しみを抱えていらっしゃる方が実際にいらっしゃることを考えれば、生きていること、健康であることがどれだけありがたいことかというのを、痛切に感じます。