田辺礼子(真矢みき)は、総合病院内のホスピス病棟の主任看護師。患者が残り少ない人生を少しでも痛みや精神的な不安なく、質の高い生活が送れるようさまざまなケアに心を配ってきた。礼子にはある信念があった。人が生きてゆくために一番大切な力は希望。そしてそれはどんな時にも必ず見つかる、と。
久々の休日、夫の史昭(鶴見辰吾)と釣りに行った礼子はふと胸騒ぎを感じて病院に戻る。予感は的中。胃がん患者の三上房江(正司照枝)が吐血して倒れていた。一時は危篤かと思われたが、房江は趣味のコーラスの録音を聞いて、奇跡的に持ち直す。若い看護師の西村紗希(本仮屋ユイカ)はそんな礼子を尊敬すると同時に、自分にはとても勤まらないのではないかと思う。 今、ホスピスには気になる患者が3人いた。そのひとり末期の肝臓がん患者、土屋尚雄(遠藤憲一)が無断でホスピスを抜け出し、駅で倒れて市民病院に担ぎ込まれた。身寄りもなく、生活保護を受けていた土屋は自暴自棄に見えた。 子宮頸がん患者の小池比佐子(石田ひかり)には、春から小学校へ行く息子の直人がいた。「入学式一緒に行こうね」と屈託のない直人に病気のことをどう話したらいいのか。比佐子は悩んでいた。やがて、肺炎を併発した房江は亡くなるが、「やりたいことがもう一度出来た」と明るく話していた生前の房江の言葉に、比佐子も「家に帰って直人と過ごしたい」と強い希望を持つ。それは比佐子の病状からは厳しい選択だったが、礼子は出来る限りのサポートを約束する。
もうひとり、乳がん患者の北山君子(岸本加世子)は、「ブライトフラワー」という花屋を5店舗経営するキャリアウーマン。部下にてきぱきと引き継ぎをし、「プラス思考よ」と豪快に笑う、あくまで前向きな北山だったが、彼女には離婚で引き裂かれたままの娘がいた。その娘、里香(黒川芽以)とも仲直りできたと礼子と紗希に笑顔で話す北山。が、誰も里香の姿を見た者はいなかった。
そんなある夜、土屋が屋上から飛び降りようとした。巡回中だった礼子が発見し、幸い大事には至らなかった。心から心配する礼子の熱意に負け、土屋はこれまで口を閉ざしていた過去を語り始めた…。常に患者に寄り添い続け、患者の“心の声”を聞こうとする礼子のサポートでかたくなだった患者も、次第に自らの心のなかにある“希望”に気づいてゆくのだった…。