谷崎藍子役 高畑 淳子

シリーズ第4弾を迎えることが出来ました。第1弾では母子の、第2弾では女の友情、第3弾では兄弟の心の葛藤をベースに、遺品をテーマにしたドラマが展開してきました。今回は夫婦と花瓶です。時が流れて、あることをきっかけにお互いの心がすれ違って、上手くいかなくなった夫婦の話です。若い頃の仲が良かった2人の回想を交え、過去と現在を行き来しながらドラマが展開します。

岸本(加世子)さんとは、ご一緒にがっぷり組んでお芝居をさせていただいたのは初めてで、こんなに葛藤してお芝居をしたのも初めてです。クライマックスシーンの岸本さんはすごい集中力で、台本を読んで、遺品を整理して相手に届けるという冷静なお芝居をするつもりが、思わず感情が出てしまって、こんなはずじゃなかったと。それだけ岸本さんの(お芝居の)アタックが強かったでしょうね。普通にお芝居できると思っていたのに、思わぬ方へ行ってしまうのって、(お芝居って)面白いなあ、と改めて思いました。

私は学生運動が華やかなりし頃に学生生活を送ったので、今回の夫婦の若い頃の姿や「三丁目の夕日」みたいな回顧調のものを見ると、とても切なくて…。男の子のランニングシャツ姿とか、女の子のファッションとか、見ただけで、グッと来るものがあります。ドラマの中に生活感というか、皮膚感を感じますね。そんな日常的でドキュメンタリーっぽいところがいいと思います。青春時代に知りあって、こういう風に夫婦になって、それでもすれ違ってしまうことに胸が痛くなります。日常の生活は決して派手なものではなく、人はいずれ死ぬわけで、そんな人の生き死に関わってきたモノ(=遺品)に藍子が何を見つけるのか、ご期待ください。

このドラマは毎回、美しい景色も見どころのひとつですが、今回は滋賀の近江八幡市へ行きました。新町通りや八幡堀など古くからの町並みがすごくきれいでした。能登川の石馬寺へも行きましたが、そこの階段がすごい。山間の石段を上って行ったのですが、雨上がりの暑い日でしたが、緑がきれいで。石とか緑とか、雨が似合う景色でしたね。琵琶湖岸もとてもきれいでした。