脚本家 清水有生

今回、キーポイントとなる遺品は「こいのぼり」です。パート2の撮影時に、実際の遺品整理人の方から、「こいのぼりを探して欲しい」という依頼の話を聞いたのがヒントになりました。「これだな!」と。監督と一致しました。「こいのぼり」をキービジュアルに、ある男の家族、親と子、兄弟の関係と確執が浮かびあがり、短絡的に殺人につながってしまう…。こいのぼりは、たたむと薄っぺらいもので、他愛ないものなんですが、当事者には思い入れのあるもの。家族にとっては大切なものだった。それを兄弟の愛情の象徴にしようと。1年ほどかけて話し合って、本が出来上がりましたが、「青空にこいのぼり」というイメージだけは変わりませんでした。

 このドラマは最初から犯人わかっているので、何が原因でこうなってしまったのか、毎回その理由を2時間かけてみせていきます。言うのは簡単ですが、書くのは難しい。中盤以降は演出に負うところが多いです。大杉さんがこの犯人役をぜひやりたいということだったので、大杉さんのイメージを監督と共有しながら本を書きました。セリフの量を少なくして、あまりしゃべらない、人のよさそうな顔の一方で、職場で秘かに懸垂をしたりして身体を鍛えている。薄気味悪い、感情移入しにくい男です。今回も、主人公の藍子は犯人探しをするわけではなく、あくまで遺品を遺族に手渡すだけ。渡された方が、罪の意識にさいなまれていく。「モノを探して渡す」。物の中から真実が見えてくるわけです。犯人像をより緻密に描いた分、ドラマとして濃密なものが出来ていると思います。

最後に藍子と犯人が対峙するシーンでは、単なるサスペンスにならないよう、かなり議論しました。藍子の指摘で、物語が過去に向かって進んでいく。脚本のセオリーと違って、後ろに進むんです。このドラマの醍醐味というか、テイストを存分にお楽しみください。