谷崎藍子役 高畑淳子

 このシリーズが始まった2年前に比べて、亡くなった方の遺品を片付ける遺品整理の仕事の認知度は高くなった気がします。高齢化社会になって、自分の死を考える方も増えてきたのではないでしょうか。ダイイングノートとかも売れていると聞きます。ドラマの主人公の藍子は、物にこだわることで、事件の裏に潜む人の心を読み解いていきます。遺品整理のプロの方には、整理を依頼された部屋の中に入ったとたん、その人と家族との関係性がわかってしまうそうです。それだけ、物がその人を語っているんだと思います。怖いですね。

今回の見どころは、犯人役の大杉さんとお兄さんとのすれ違った心。見逃していたことや、届かなかった言葉、気づかなかった思いがドラマを作り上げていきます。このドラマはゲストの方のための本というか、とても丁寧に心をなぞっていくドラマ。今回は犯人役の大杉さんのドラマだと思います。(大杉さんの)笑っていない目を眼鏡のレンズ越しに見たときに、この作品が成功すると確信しました。大杉さん、目つきが山の天気みたいにコロコロ変わるんです。(この役は)大杉さんしか出来ないと思いました。大杉さんは芝居を決めないんです。セリフは覚えて、その場で起こったことをやる、役柄の人物として居ようとしているのがいいですね。私にとっても、こんなに真摯に向き合える現場はありません。人間の心の奥に切り込む、この暗さが好きです(笑)。
今回は大阪府の能勢町でロケをしたんですが、棚田百選にも選ばれた「能勢の棚田」がとてもきれいで。300年前のわら葺の家などもあって。そんな風景も今回の見どころのひとつだと思います。