■ 井口昇監督のコメント

『古代少女ドグちゃん』の監督からのコメントをお届け!
今回は、井口昇監督です。

(1) 誕生の経緯

昨年、毎日放送のプロデューサー・登坂さんが僕の「片腕マシンガール」という作品を気に入ってくださいまして、「一緒に深夜ドラマの企画を考えてみないか」と僕に持ちかけて頂いたのが全ての発端です。
それから二人で「何か現代に訴えかける社会性のあるドラマを考えよう」と「ああでもない、こうでもない」と一年近く企画を練っていたんですが、次第に煮詰まってしまったんです。
そんな時、雑談中にふと「実写版ラムちゃん」みたいなドラマがあったら面白いんじゃないかと思いつき、登坂さんに伝えたら「それ面白いやないか」と乗ってくれました。
それからは「美少女版鬼太郎」「土偶のビキニ」「80年代風ラブコメ」といったキーワードが次々浮かんできて、それと「現代の病みが妖怪となる」というシリアスなテーマを軸にすることでコンセプトが固まってきました。ドグちゃんの可愛らしさと内容の馬鹿馬鹿しさで笑ってもらいながらも、最後には社会的な苦味まで感じさせる「大人の特撮もの」にしていきたいと思っていました。

企画が具体化しはじめたら怒涛のスピードで進んでいきましたね。特にキャスティングは「この役者さんに出演してもらえたら素晴らしいだろうな」という理想のままオファーしてみたら、ほとんどの役者さんからOKがとれたのにはビックリしました。低予算なのに神がかり的な超豪華キャストになったのは「ドグちゃん」という「神様」を扱ってるからこそのパワーのお陰ではないかと本気で思っています。

(2) 谷澤さん起用の理由

谷澤さんはオーディションで選んだんです。とにかく圧倒的な明るさと愛嬌さが印象的でした。ドグちゃんにはどんなに怖い妖怪が現れても、それを跳ね返す「愛嬌」が絶対に必要だと思ってたし、谷澤さんにはその魅力が凄くあった。あと「漫画っぽい」仕草と、程よいドジ加減も求めていたんですが、オーディションの時に始めて「ウララー」ポーズをやってもらって「この子にはその全てがある!ドグちゃんは谷澤さんしかいない!」と直感しました。
でも谷澤さんは明るいだけじゃなくて、繊細だし、辛抱強くて賢いし、周囲のスタッフキャストにも気を遣う品の良さがとてもあって、神々しくみえる瞬間が多かったです。

(3) 衣装をまとったのを見て

ドグちゃんのコスチュームは僕がずっと頭の中で妄想していたものだったので、衣装合わせはイメージがそのまま実体化していて度肝抜かされました。というかイメージ以上でした。企画の時に「土偶のビキニ?」と頭を捻られる事も多かったので実物をもいて「思った通り良いじゃんか!」と勝ち誇った気持ちにもなりました。とりあえず、「これでこの作品は成立できる!」と確信した瞬間でした。

あと土偶ビキニスタイルだと撮影中は目のやり場に困るだろうなあ、と心配していたんですが実際は大丈夫でした。谷澤さんと土偶ビキニがすぐに一体化に感じられて、「ドグちゃん」以外の何者でもない感じに撮影現場はなっていきました。撮影が進むにつれ私服の谷澤さんの方に違和感まで感じられてきたのは不思議でしたね。

(4) 演出のこだわり

「お馬鹿な事を真剣に」というのはプロデューサーの登坂さんがクランクイン前に掲げたモットーで、僕をはじめ全てのスタッフキャストも皆撮影中に心がけていました。
こういう一見馬鹿馬鹿しい内容のものこそ「チャラチャラした気持ち」で撮ったら駄目になるものなんです。だから僕は更に「はしゃがない」「一日一回、自分の中で反省会をする」「作品に骨身を削る」事を最大のテーマとして演出してきたつもりです。
あと「女の子はなるべく元気よく」「男はなるべく元気なく」を最大の演出のこだわりにしてきました。元気のいい男の人が本当に苦手なんです。

あと 「深夜ドラマ」だと思って見ると裏切られる演出をするように心がけました。妖怪の造形も、CGも予算と状況の限界に挑戦して見る人を驚かせたいと思っていました。

(5) お気に入りの妖怪

僕的には二話の「ちちでか」です。
初代仮面ライダーに「蜂女」っいう怪人がいて、それが子どもの頃に凄いインパクトがあったんです。女が怪人であることや、胸に渦巻き模様がある異様なルックスであることが強烈に記憶に焼きついていて、自分でもそんな妖怪を撮ってみたかったんです。「ちちでか」に刺されると男が風船のように脆く破裂してしまうのは僕の男女感の暗喩だと思います。

(6) 蟹光線について

蟹光線のアイディアは僕が考えたのですが、まさか自分で演じるとは思いませんでした。
あんなに特殊メイクされたのは初めてで、大変ではありましたが楽しかったです。これからは特殊メイクされた役者さんにもっと優しくしょうと思いました。
いつも演出している側の谷澤さんと窪田君と共演するのは物凄くやりずらかったです。NGを出さないように心掛けてましたが無理でしたね。

(7) 大変だったエピソード
僕の演出した回では必ず雨に祟られて大変でしたね。外撮りのシーンはいつも雨で、それが終わって室内シーンになると確実に晴れるのが皮肉でした。 そのお陰で「ドグちゃん誕生」のシーンがずっと撮影できなかったんです。あの場面は晴れてないと成立できないんで、ずっと延期していたら偶然にもクランクアップの日に撮影する事になりました。撮影最終日に「誕生」を撮ることになるなんて、不思議な感覚でした。

(8) 妖怪ボツ案
イケメンのホストの顔に張り付くお面型モンスター「妖怪いけめん」
ネットカフェが生き物になって客を乗せたまま首都高を爆走する「妖怪 熱闘カフェ」
ラブホテルに来たカップルのコンドームを食べてしまう怪物「妖怪なま好き」

(9) 撮影を終えて
とにかくよくぞ12話分撮影をやりきったなあ。という気持ちです。内容も、予算も、撮影スケジュールも「実現は苦難だろう」と言われていたこの作品ですが、全てのキャスト・スタッフの皆様から発せられる愛によって無事乗り越える事が出来ました。関係者みんなが子作品の無謀さを実感しつつも、それを逆手にとって愉しみつつ、のめり込んで頂いた事に感謝しております。後は視聴者の皆様を揺さぶりながらも楽します作品にするべく、仕上げていけたらと思っております。

〜ありがとうございました〜



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