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田丸 一男アナウンサーのブログ

田丸一男のことばエッセイ

圧着ハガキ

更新:2015年3月31日
先日、ラジオで「圧着ハガキ」という言葉が出てきました。一瞬、何のことか分からなかったのですが、中身が見えないよう、折りたたんで全面を貼り合わせたハガキです。端を持ってぺりぺりと剥がすハガキといえばお分かりでしょう。どういう仕組みなんでしょうか?

★専用紙を2つ折り・3つ折りに圧着(プレス)して1枚のハガキに加工

請求書や明細書など個人情報、官公庁からの通知はもとより、最近は商品やイベント案内など「圧着ハガキ」を受け取ることが増えてきました。1991年に発売されて20年あまり、もともとは情報量を増やすことを目的に考え出されたのですが、明らかに中身が隠れていることが分かることで、開きたくなる心理をくすぐり、封書で送るより見てくれる確率(開封率)が高いそうでニーズは高まっています。

一度はがすと、もうくっつかないメカニズムはどうなっているのでしょう。

圧着ハガキを剥がした時、表面が透明なコーティングをされたように光って見えます。実は「ニス」が使われているそう。塗装で光沢を出すために使われる、あの「ニス」です。ニスは糊の役目もするんです。貼り付ける際に2トンのローラーで押さえて圧着しているため、一度はがすと、ふつうの力ではもう貼り合わせられないのです。

抜き差しならない

更新:2015年3月30日
民主党の枝野幹事長が、記者の質問に「法をふりかざし、沖縄を斬り捨て、沖縄の心情に目を背けることを繰り返せば、本当に『抜き差しならない状況』に陥りかねない」と話していました。「抜き差しならない状況」とはどういう状況でしょうか?

★刀がさび付いてさやから抜いたり差したりできないこと

江戸時代の「刀」に関連して生まれた言葉のひとつです。刀はさび付いたりすると、さやから刀を抜いたり差したりすることができません。そこで「抜き差しならない」状況は『どうにもならない、身動きが取れない』という意味です。

生活の中から刀はなくなりましたが、「刀」に関連した言葉は、他にもまだたくさんあります。

●切羽詰る・・・刀のつばに接するところに「切羽」という小さな楕円形の金属が付いています。切羽が詰まると、刀が抜けなくなることから、窮地に追い詰められてどうしようもなくなる意味となったものです。

●反りが合わない・・・刀の緩やかに曲がっている部分「反り」の曲がり具合が、さやと合っていないとうまく収まらないところから、人間関係にも使われるようになりました。

●相槌を打つ・・・鍛冶(かじ)が刀を鍛えるとき、師が槌を打つ合間に弟子が槌を打つことを「相槌」や「相の槌」と言いました。そこから相手の問いに答える意味や、相手の話に合わせる意味になりました。

●元のさやに収まる ・・・一旦抜いた刀は違うさやには入らず、元のさやであればすんなり収まるところから、仲たがいしたものが再び元の関係に戻るという意味。

●付け焼き刃・・・鈍刀に鋼の焼刃を付け足したニセ物のこと。そこから本来、実力の無い者がその場をうまくごまかすためにいかにも有るように見せかけたり、にわか仕込みの勉強で急場をしのごうとすること。

1カップの容量 世界で違う

更新:2015年3月27日
ハワイみやげに頂いた「Eggs 'n Things(エッグスンシングス)」のバターミルク・パンケーキミックスを朝食に作りました。粉に水を入れるだけ、卵や牛乳も入れなくていい、実に簡単です。でも、驚いたんですが日本とアメリカでは1カップの容量が違うんです。

★日本:200ml アメリカ:240ml

日本語の作り方まであって「100グラムの粉に3/4カップの水」とありました。日本では1カップは200ミリリットルですが、アメリカでは240(236.58)ミリリットルなんだそう。さらにオーストラリア、カナダ、ニュージーランドでは250ミリリットルです。これは知りませんでした。要注意です。

ちなみに1cc=1mlですが、このCCは「キュービック・センチメートル」の略。センチメートルの3乗、いわゆる「立方センチメートル」です。一辺が1センチメートルのサイコロの体積です。1リットル=1000立方センチメートルと決められています。

「大さじ」は15ミリリットル、「小さじ」は5ミリリットル。

現在利用されているこれら計量カップ、大さじ、小さじの規格は、いずれも女子栄養大学創立者の香川 綾(1899-1997)が1948年に考案したものだそう。規格として正式に制定されたものではないのですが、事実上、日本での標準規格となっています。

「しばらく道なりです」の「なり」って?

更新:2015年3月26日
カーナビでよく耳にする「この先、しばらく『道なり』です」のアナウンス。「道なり」の「なり」ってどういうことばでしょうか?

★道なり=道の言いなりになるイメージ

「道なり」の「なり」は「成り」から来ている『形・態』を表すことばです。国語辞典・大辞林(三省堂・第二版)で「なり」を調べると次のように記されています。

(4)名詞・活用語の連体形の下に付いて、それによって制約・決定された状態、それ相応の状態などの意を表す。

「道なり」を漢字で書くと「道形」。道のまま従って進むということなんでしょう。国語辞典に上げられた用例では「彼には彼なりの意地がある」「人の言いなりになる」「短いなりにまとまった作品」「背が高ければ高い―の悩みがある」とありました。

「形」(なり)は、「身なり」「なりふり構わず」の「なり」と同じです。 「人の言い成りになる」の「成り」は漢字が違いますが、意味は同じです。

ただカーナビでは省略されていて分かりにくいのも事実。「この先、しばらく道なり(に進みますと目的地に到着します)」ということでしょうか?

ロコモティブ・シンドローム(ロコモ)って?

更新:2015年3月25日
新聞広告に「ロコモ」の大きな文字が躍っていました。厚生労働省が国民の健康づくり運動「健康日本21」で「メタボ」に続き、これから認知度を上げようしているのが「ロコモ」だそうです。

★寝たきり、要介護の原因となる骨や関節、筋肉などの衰え

厚生労働省が2003年からの10年間掛けて国民にアピールしてきたのが「メタボリック症候群」です。内臓脂肪など肥満が原因で、心筋梗塞や脳梗塞などの危険性が高まること。今では「メタボ」の認知度は9割以上あるそうで、脂肪を分解する「特定保健用食品(特保)」お茶などがよく売れています。

そして、これからの10年で国民に認知してもらおうとしているキーワードが「ロコモ」です。「ロコモティブ(Locomotive)シンドローム(運動器・症候群)」の略で、骨や筋肉、関節など体を動かすために必要な「運動器」の障害で、歩行や日常生活に障害をきたしている状態です。日本整形外科学会が2007年に提唱しました。

骨や筋肉、関節などは年を重ねるとともに働きが衰え、「歩く」「立つ」能力が衰え、自立が困難になり、その結果、介護が必要になってしまいます。つまりロコモは、「現在は自立できているが、近い将来、要介護になる危険性が高い症状を持っている状態や、すでに要介護になってしまっている状態」を表します。予備群を含めると4700万人いるとされています。40歳以上の男女の5人に4人が“ロコモ及び予備群”といわれます。「メタボ」の次は「ロコモ」、なぜかよく似た言葉です。

ドヴォルザークの表記は改めるべき?

更新:2015年3月24日
JR大阪環状線で、きのうからすべての駅で「駅ごとの発車メロディー」が導入されました。JR新今宮駅のメロディーは、チェコの作曲家、ドヴォルザークの「新世界より」です。大阪を代表する繁華街「新世界」が近くにあるからという理由です。このドヴォルザークの日本語でのカナ表記、もともとの綴りは「Dvorak」ですが、なぜ「ドヴォルザーク」と表記するのでしょうか?

★もともとの綴りは「 Dvorak 」

英語では「Dvorak」ですが、チェコ語での発音に最も近い「ドヴォルザーク」になったそうです。しかし、音楽評論家の東条碩夫(ひろお)さんは「ザーク」は誤りだとおっしゃっています。

ある演奏会のプログラムで東条さんが書かれた曲紹介の文章から引用させていただきます。

『チェコの人々は「ル」を呑み込み気味にしつつ、「ジャーク」と「シャーク」の中間で発音する。それもあって音楽之友社の「音楽中辞典」は「ドヴォルジャーク」を、ニュグローヴ世界音楽大辞典(講談社)は「ドヴォジャーク」を採用しているほどだ。もういい加減に「ザーク」を改める時期にきているのではないか』

東条さんによりますと、昔の日本の資料では、「ドヴォラック」(明治45年・東京音楽学校プログラム)、「ドゥヴォルジャック」(明治45年・東京日日新聞)、「ドボルジャック」(大正11年・近衛師団軍楽隊)、「ドヴォルシャック」(昭和3年・ジャック・ティボー提琴大演奏会プログラム)など耳で聞いた外国人の発音を忠実に再現しようとする姿勢がうかがえるといいます。

私はチェコ語の発音に近い「ドヴォジャーク」の表記が一番だと思うのですが、統一は難しいでしょうか?

金の純度 24Kって?

更新:2015年3月23日
金沢まで新幹線が伸びて、金沢の伝統産業「金箔」について紹介していました。よく24金、18金などと言いますが、なぜ24なんでしょうか?金の純度について調べました。

★昔、24分率で数値を表していた時代があった!

金の純度には主に5種類あります。24K、22K、18K、14K、10Kです。単位「K」(カラット)は日本では慣習的に「金」と発音します。

金の取引質量単位である1トロイオンスを=24カラットと計算し、1トロイオンス中、18カラットが純金で6カラットが混ぜ物の事を18Kとしています。

なぜ24分割なのかと言うと、金の歴史は古くこの制度が決まったときは24進法が主流だったからです。

●24Kは全体の99.99%が混合物の入っていない純粋な金で「純金」と表示してもいいことになっています。24Kは基本的にはコイン、延べ棒のように金そのものの価値を十分に出せるように加工されます。
●22Kは純金含有量が91.7%で、その他の混合物が8.3%混じっています。最近では22Kのジュエリーが増えてきています。
●18Kは純金が75%で残りの25%は他の金属が混ざったもの。
●14Kは純金が58.5%で残りの41.5%は他の金属が混ざったもの。
●10Kは純金42%で残りの58%は他の金属が混ざったものです。この10K以上が貴金属としての金です。

金には他の金属(割り金)によって色が変わります。イエローゴールドは銅と銀、ホワイトゴールドはプラチナやパラジウム、ピンクゴールドは銅、グリーンゴールドは銀を混ぜて加工します。

金の純度を調べる手法として、かつては試金石を用いた方法が主流でした。「試金石」というと「物事の価値や人の力量を判断する目安」として使われますが、本来は、読んで字のごとく、金の品質を計るために使う石のことを指します。「那智黒石」と呼ばれる黒い石で碁石にも使われる黒く硬質の石です。

「学ラン」の「ラン」って?

更新:2015年3月20日
男子学生の制服で、詰め襟(つめえり)のものを「学ラン」と呼びますが、どういう語源でしょうか?同僚から尋ねられましたので、早速調べました。

★「オランダ」の省略だった!

「学ラン」は詰め襟の男子の学生服のこと。首のまわりを筒状に覆い、襟の前をホックで締めて着る襟の服です。かつて制服といえば男子は詰め襟で、女子はセーラー服がスタンダードでした。 私も中学・高校とこの制服だったのですが、最近はずいぶん、少なくなっている気がします。詰め襟の男子学生服は明治時代の海軍の士官の制服をモデルに、1979年に学習院で導入されたのが最初だそう。

語源辞典[講談社]で調べると、学ランの「ラン」は、江戸時代末期に徐々に目にするようになった西洋人が着ていた衣服の事を隠語として「オランダ人の着ている服」と言う意味から『ランダ』と呼んでいたことからきています。鎖国時代から西洋人というとオランダ人のことだったんですね。

それが明治時代に入ってから、多くの学生がハカマなどを着ている時に洋風の軍人服(詰め襟)を使用した際に「学生用のランダ」と言う意味で『学ラン』と呼ぶようになったということです。

他にも小学生が背負う「ランドセル」も「負いかばん」のオランダ語「ransel(ランセル)」が変化したもの。軍人が物を入れて背負うかばんを「ランドセル」と呼びましたが、1885年に小学生が学用品を入れるものとして学習院が「ランドセル」を使用したのが最初で、戦後、一般的になったということです。また子どもの運動靴「ズック」もオランダ語の「doek(ドゥック)」が由来です。オランダからは西洋文化とともにたくさんのことばがもたらされたのですね。

「嫌気する」の読み方

更新:2015年3月19日
きのうのラジオニュースで「日経平均株価は、欧米市場での株価下落を『嫌気』して反落しました」という原稿を読みました。経済ニュースで出てくる「嫌気」の読みは「いやけ」「いやき」、どちらでしょうか?

★株式市場では「イヤキ」

「嫌気」は読み方で意味が違います。

「もう嫌だと感じる気持ち」は「いやけ」と読み、「嫌気(いやけ)がさす」などと使います。

一方、「株式市場で相場が思い通りにならないで人気が落ちること」は「いやき」と読み、「嫌気(いやき)する」「嫌気(いやき)売り」などと使います。

さらに「けんき」と読むのは「空気を嫌う」という意味で、生物学的な分野の言葉になります。「嫌気性」「嫌気性生物」「嫌気呼吸」「嫌気性細菌」といった言葉があります。

「あっさり」と「さっぱり」の違いは?

更新:2015年3月18日
味の表現は難しいです。「あっさり」と「さっぱり」の違いを尋ねられて、すぐに応えられませんでした。ともに「薄味」のイメージがありますが、どう違うんでしょうか?お分かりですか?

★味付けが淡白な「あっさり」、口がさっぱりする「さっぱり」

まずは、国語辞典で調べてみました。大辞林(三省堂)には次のように掲載されています。
味については「あっさり」には「さっぱり」と書かれていますし、「さっぱり」には「あっさり」と書かれていて区別は付きにくいです。

<あっさり>

●人の性質や事物の状態などがしつこくないさま。複雑でないさま。さっぱり。
●時間や手間をかけずに物事が行われるさま。簡単に。

<さっぱり>

●不快感や、わだかまりなどが消えて、気持ちのよいさま。すっきり。
●いやみのないさま。また、しつこくないさま。あっさり。
●あとに何も残らないさま。すっかり。
●(あとに否定を表す語を伴って)全然。まったく。
●物事の状態が、非常に好ましくないさま。

ともに副詞として使われる「あっさり」「さっぱり」ですが副詞としては意味は違います。

「あっさり諦める」「あっさり負ける」は「簡単に」の意味ですが、これを「さっぱり諦める」「さっぱり負ける」とは言い換えられません。
また「成績はさっぱりだ」「何を言いたいのかさっぱりわからない」は、「成績はあっさりだ」「何を言いたいのかあっさりわからない」とは言い換えはできません。この点で二つの副詞は意味が分かれます。

では料理の場合はどうでしょうか?

●「あっさり」は、味付けが淡泊で脂っこくないとき、「あっさりした味付け」というように使います。
●「さっぱり」は、口の中がさっぱりするような料理(酢の物など)に使います。清涼感でしょうか。

揺れを抑える 免震・耐震・制震

更新:2015年3月17日
「建物の揺れを抑える免震装置」に国に認定された性能を満たしていない製品があった問題で、装置が使われていた建物では、工事を一時中断するなど、影響や懸念が広がっています。「免震」「制震」「耐震」って違いわかりますか?

★建物と地盤を切り離す「免震」

地震に対処する方法には、「耐震」「制震」「免震」の3つの工法があります。 国内で一番普及している工法は「耐震」。しかし、揺れを軽減するのは「免震」が一番効果があるとされています。ただ導入コストが高いのがネックです。

<耐震(たいしん)>
壁や柱を強化したり、補強材を入れることで建物自体を堅くして振動に対抗する仕組み。

<制震(せいしん)>
土台と梁の間に設置した振動吸収装置(ダンパー)が地震のエネルギーを吸収。建物に粘りをもたせて振動を抑える仕組み。

<免震(めんしん)>
基礎部分に免震装置を入れて、建物と地盤を切り離し、地震の振動を建物に伝えにくくする仕組み。

免震は、地震による強く激しい揺れを、大きくゆっくりとした揺れに変えることができ、これまで実際の地震でも効果が確認されています。

「場」の読みは「ば」か「じょう」か

更新:2015年3月16日
大阪市枚方市の運送会社で火事があり、倉庫と「荷さばき場」が全焼したニュースを読みました。「荷さばき場」は辞書をみると「にさばきば」「にさばきじょう」両方ともあります。「じょう」か「ば」か、読みに迷いました。

★狭いところは「ば」、広いところは「じょう」

○○場の読みは、「ば」か「じょう」か迷うことがあります。どちらの読みもしっくりくることも少なくありません。例えば、「工場」は「こうじょう」とも「こうば」とも読みますし、「社交場」も「しゃこうば」とも「しゃこうじょう」とも慣用で使われています。

しかし、「ば」と「じょう」ではイメージする大きさが違う気がするのですが、いかがでしょうか?「じょう」の方が広いところを指す事が多いようです。

例えば、酒場、踊り場、風呂場など比較的狭いところは「ば」と読みます。一方、飛行場、競技場、競馬場、スキー場は「じょう」と読みます。

これらから「荷さばき場」も倉庫の中の一部のスペースだし、「ば」がふさわしいかと判断しました。「場」の読み方は感覚的なもので区別されるようです。

「フィルム」「フイルム」?

更新:2015年3月13日
大阪の初代・通天閣のカラー動画が初めて確認されたニュースがありました。神戸映画資料館(神戸・長田区)が「フィルム」を保管したそう。リポートしていたアナウンサーは「フイルム」を連呼していましたが、どうなんでしょうか?

★61年前の文化庁・国語審議会の答申では「フイルム」

英語の表記・発音からすると「フィルム」です。国語辞典にも「フィルム」しか載っていませんが、年配の方には「フイルム」と発音する方も少なくありません。もともと「フィ」という発音は苦手な人が多いのかもしれません。

文化庁の「外来語表記委員会」のホームページを見ますと、1954年(昭和29年)に「外来語表記」について国語審議会の報告が出ました。以来、新聞・放送・出版・学校教育などでは、大体それに準拠した表記が行われてきました。

その報告の中で、「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」についてなるべく「ハ」「ヒ」「フ」「フ」「ヘ」「ホ」と書くこととし、ただし原音の意識がなお残っているものは「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」と書いてもよいとしています。さらに「フィルム」か「フイルム」かは『語形の差』であるとも書かれています。

つまり、学校教育では「フイルム」と教わった世代も多いということがわかります。ただ「フィルム」も間違いではありません。現に、メーカーの「富士フイルム」は文字のバランス、体裁を保つためにわざと大きな「イ」で表記します。マヨネーズの「キユーピー」も同じです。

確かに、昔の8ミリフイルムの発音は「フィルム」より「フイルム」の方が「フィット」している気がします。ただ、放送の発音では、特定の企業名、商品名以外は「フィルム」でしょう。

「胸ぐら」の語源

更新:2015年3月12日
小学校教師が、クラブ活動中の態度が悪いと、6年生の男子児童の「胸ぐら」をつかみ、投げ飛ばすなどして、背骨を折り、重傷を負わせるというニュースがありました。「胸ぐら」の語源を調べました。

★複合語になると「むね」は「むな」に変化する

国語辞典(小学館の日本国語大辞典・第二版)で調べると、漢字では「胸倉」「胸座」と表記します。意味は、着物の左右の襟が重なって合わさるあたりのこと、とあります。

「むねぐら」でなく「むなぐら」と読みます。他にも「胸毛(むなげ)」「胸算用(むなざんよう)」「胸当(むなあて)」「胸板(むないた)」「胸内(むなうち)」「胸帯(むなおび)」「胸交(むながい)」などのように複合語になると「むね」ではなく「むな」と読みが変わります。

さらに「ぐら」の語源にはいくつか説があるようです。

・着物の襟が重なり合う部分で、他よりも盛り上がっているので、「クラ(倉・座)」の意味、もしくは「やぐら」の意味とする説。
・左右の襟が重なる部分で絡み合っているところから、「からむ(絡む)」の意味
・「がら」の変化で「外皮」「外殻」など「カラ(殻)」の意味とする説

「水を得た魚」は「さかな」?「うお」?

更新:2015年3月11日
職場の同僚から『「水を得た魚」を「さかな」と言っているのを聞いたが「うお」でないのか』と尋ねられました。FMの若いDJがしきりに「さかな」と言っていたといいます。私は「うお」で覚えていたのですがどうなのでしょうか?

★「魚」は「うお」という呼び方しかなかった!

「水を得た魚(うお)」は「自分に合った活躍の場を得て、生き生きとしている様子」の意味の慣用的に決まった表現です。

もともと「魚」という字には「うお」「ギョ」の読み方しかありませんでした。それが1973年(昭和48年)に当用漢字が改正されて「さかな」の読みが認められるようになったのです。

「トビウオ」「魚市場(うおいちば)」「魚河岸(うおがし)」などのように、生き物のほうは「うお」と呼んでいたんです。そして酒を飲むときに添えて食べるものを「さかな(肴)」と呼んでいたんです。

では、なぜ「魚」を「さかな」と呼ぶようになっていったんでしょうか?

酒の肴(さかな)の中でも「魚(うお)」が一番美味しかったので「魚」を「さかな」と呼ぶようになったんだそう。江戸時代、江戸前では新鮮な魚が豊富に採れたので、毎日のように肴(さかな)として魚(うお)を食べたので「魚=さかな」の呼び方が広まったとも言われています。

私たちは「魚」を「さかな」と違和感なく言いますが、「水を得た魚」は「さかな」とはいいません。慣用的に決まっています。

オリンピック・レガシーとは

更新:2015年3月10日
東京都の舛添要一知事が2020年の東京オリンピックで「良いレガシーを残す」としきりにおっしゃっています。馴染みのない言葉ですが、オリンピックでは「レガシー」が大切なキーワードなんだそうです。

★オリンピックが大切にしている「レガシー」

レガシーは英語で「遺産」「受け継いだもの」という意味。オリンピックはこのレガシーを大切なテーマとしていて「オリンピック・レガシー」と呼んでいます。

国際オリンピック委員会(IOC)の「オリンピック憲章」の中には、2002年から「レガシー」という言葉が盛り込まれました。この条項は下記のように示されています。

<第1章「オリンピック・ムーブメントとその活動」第2項「IOCの使命と役割」>
14.オリンピック競技大会の良い遺産を、開催都市ならびに開催国に残すことを推進すること。

オリンピック開催で、「後世に何を残すか」「何を残せるか」という理念と戦略を問うことを開催候補都市に強く求めるようになっているのです。

2012年からは開催地として立候補する都市が、IOCに提出する「立候補ファイル」に、「レガシー」に関する記述を明記しなければならなくなっています。

この遺産=レガシーとは具体的にどういうものなのでしょうか?例えば施設やインフラの整備、雇用創出、観光客の増加、環境配慮、スポーツ選手への助成増強・健康生活の向上、スポーツ振興により生活の利便性が高まるなど人々の暮らしにさまざま出るいい影響のことです。

椎茸の「いしづき」

更新:2015年3月9日
椎茸の話です。椎茸の「いしづき」ってどの部分のことかご存知ですか?私、軸のことだと思っていましたが、違うらしいです。語源は何でしょうか?

★もともと槍(やり)などの柄の、地に突き立てる部分

漢字では「石突き」と書きます。一番下の根の事で、茎の下、1センチぐらいの、木に付いていた硬い部分を指します。美味しくないのでこの部分は食用に向きません。マツタケやエリンギ、シメジは、傘はもちろんのこと軸をメインに食べるキノコですが、シイタケは傘をメインに食べます。軸も美味しく食べられます。

なぜ「石突き」というのでしょうか。もともと矛・薙刀(なぎなた)・槍(やり)などの柄の、地に突き立てる部分を包んでいる金具のことを言います。

傘の先に金属製の尖った棒も「石突き」と言いますし、ステッキ(杖)の先っちょ(地面に付く部分)も「石突き」と言います。

もともと、「石」というのは、「地面のように、何か硬い部分」で、きのこの「いしづき」は、「硬い部分(地面とか、樹木の表面とか)を突いている部分」だから、「石突き」と呼ばれているのです。

「理由」は「わけ」「りゆう」?

更新:2015年3月6日
大丸心斎橋店(みせ)が店内に常設のアウトレット売り場「理由あり横丁」を開いたというニュースがありました。何の疑問もなく「わけあり横丁」と読みましたが「理由」には読み仮名は付いていませんでした。「わけ」と読むときはどういうときなんでしょうか?

★意味の上から代用した「当て読み」

「理由」を国語辞典で調べると「わけ」という読み方はありません。「理由」の正しい読み方は「りゆう」です。「わけ」はいわゆる「当て読み」です。正当な読み方ではありません。

「理由」という言葉の意味に「事情、わけ」があります。理由が「わけ」と読まれるのは、意味の上から代用されているのです。「わけ」は、漢字で書けば「訳」ですが、「訳」の字は”翻訳”の意味に使われる事が多いため、一目見てすぐに意味が分かる「理由」を「わけ」の字にあてています。

運命を「さだめ」、時代を「とき」、秋桜を「コスモス」、本気を「マジ」、宇宙を「そら」、瞬間を「とき」などと読ませるのと同じです。歌の世界では歌詞やタイトルによく出てきます。

放送でもナレーションする際、流れ、雰囲気から当て読みの方がぴったり合う時があります。ディレクターと相談して当て読みを採ることは結構多いのです。

ただ、正統な読み方ではないので必ず「読み仮名」を添えないといけません。

「鼻濁音」は消したくありません!

更新:2015年3月5日
けさの朝日新聞に「鼻濁音 消え行く運命?」という見出しがありました。記事によれば「日常生活で鼻濁音を使う人は5人にひとりだけ、全国的に著しく衰退しつつあることが国立国語研究所の調査でわかった」といいます。来世紀には東北地方でわずかに残るだけで、それ以外の地域では消滅する可能性が高いともありました。

★3分の2の若手アナウンサーが鼻濁音を使っていない

アナウンサーには鼻濁音の発音は欠かせません。しかし、大阪生まれ、育ちの私は、大学で放送部に入るまで、鼻濁音の存在は知りませんでした。共通語の発音アクセントや無声化とともに新たに法則を学びました。アナウンサーになって31年、いまも、原稿の下読みで鼻濁音にすべき語に濁音の点々「」のかわりに「○」をつけて区別しています。

もともと近畿地方では鼻濁音をあまり使う地域ではありません。今回の調査でも、近畿で鼻濁音を使う人はわずか4.3%しかいませんでした。私も学校教育で教わることはありませんでしたし、なくても過ごせるものなので不自由はありませんでした。国立国語研究所 名誉所員の佐藤亮一さんは「民放の約3分の2、NHKでも約3分の1の若手アナウンサーが鼻濁音を使っていない」と指摘しています。

ノートルダム清心女子大学の尾崎喜光教授(社会言語学)によりますと、鼻濁音が衰退した理由について次のように記しています。「鼻濁音か否かは、意味の識別にほとんど役立たないこと。日本語の標準的な表記法で、両者(鼻濁音か濁音か)を書き分ける手段がないことが指摘されている。いずれ日本語の発音から消えるかもしれない」

鼻濁音は日本語を柔らかく響かせるという事で演歌歌手はこだわっている方が多いと聞きます。アナウンサーも、まったく同じ。これからも鼻濁音を大事に守っていくべきだと思います。

「地代」は「じだい」「ちだい」?

更新:2015年3月4日
京都の下鴨神社の境内に、分譲用マンションが建設されることが分かったニュースで「地代収入」という言葉の読みについて迷いました。「じだい」か「ちだい」か?調べると、どちらも間違いではないようです。長い間「ちだい」と思い込んでいたのですが「じだい」が主流です。

★「じだい」アクセントは頭高

土地利用者が土地所有者に渡す利用料「地代」。国語辞典では「じだい」に解説があり、最後に「ちだいとも」と添えられていて「ちだい」の項には解説がありません。つまりメインは「じだい」なのです。

NHKのアクセント辞典にも「じだい」しかなく、何とアクセントは「頭高」。「ジダイ=高低低」とあります。驚きでした。

確かに「ジダイ」というと「時代」が浮かびますが、不動産業界の知り合いに聞いても、法学部出身の同僚に聞いてみても、法律用語でも「じだい」の読みが主流だそう。

三省堂の国語辞典、新明解(第六版)には「ちだい」は「じだい」の古風な表現とあります、どうやら今風ではないようで。

「難易度が高い」は難しいの?やさしいの?

更新:2015年3月3日
高校入学試験の新聞記事で「問題傾向や難易度は例年通り」という見出しがありました。難易度が高いというと「難しい」という意味ですが、どうも意味のわかりにくいことばです。「難易度」でなく「難度」が高いのではないでしょうか?

★「難易度」でなく「難しさ」でいいのでは?

「難易(なんい)」を新明解国語辞典(三省堂)で調べると
1.難しいことと、たやすいこと。
2.難しい程度(意味の実質は「難」にある)とあります。

難易度が使われるときは、必ずといってもいいほど「難しさ」を基準に表現するときです。学校の受験の偏差値、スポーツ競技の技術難度(ゴルフのコースの難しさ)、ゲームのレベルなど難しさの指標に使われます。なぜか「易しさ」の指標に使われることはありません。

「難易度が高い」は難しい、「難易度が低い」は難しくない。

難度が高いとはいいますが、易度が高いとはいいません。「難易度」には「易」の意味はほとんどないのです。

意味の良く分からない言葉で国語辞典にも掲載されていません。難しいのか易しいのか言葉として曖昧です。

難しさと易しさを両方を数字で表せるようなら「難易度」といえるかもしれません。しかし難しさだけを伝えるのに「難易度が高い」というのは不適切で「難度」が高いというべきではないでしょうか?

ひな祭りの「ひな」って?

更新:2015年3月2日
あす3月3日はひな祭り。わが家でもひな人形や桃の花を飾り、ひなあられやハマグリのお吸い物を頂きます。娘も二十歳になりましたので、いつまでこの行事を続けるのか今朝、妻とも話していてふと寂しい気持ちになりました。ひな祭りの由来を調べました。

★鳥のヒナのように小さくてかわいらしいの意味

ひな祭りの起源は、季節の節目や変わり目に災難や厄から身を守るための節句が始まりとされています。ひな人形も、昔は飾るのではなく川に流されていたと聞くとちょっとびっくりです。
昔の中国では、3月初めは災いに見舞われやすいとされ、水辺で体を清めて桃の酒で邪気をはらう風習がありました。この風習が日本に伝わり、平安時代には盃を水辺に流して歌を詠むという行事が、貴族の間で行われるようになりました。これに、貴族の娘たちによる「雛(ひいな)遊び」などが結びついて、現代のようなひな祭りの形になったと言われています。

雛遊びの『ひいな』は、鳥のヒナのように小さくてかわいらしいという意味。雛遊びは「お人形さんごっこ」のことです。

今では女の子のための日ですが、昔は男女共通の行事として厄払いや邪気祓いが行われていました。しかし江戸幕府が、節句を三月三日と定め、さらにひな人形を飾ることから、この日を女の子の日と決めたのです。

中国では、今でも桃の花を愛で、桃の花を漬けたお酒を飲み、桃の葉が入ったお風呂に入って邪気祓いをおこなっているそうです。



プロフィール

田丸 一男Photo
名前:田丸 一男
生年月日:1960年9月11日
入社年:1991年
出身都道府県:大阪府
出身大学:関西学院大学
趣味:ワインとイタリアン、クラシック音楽鑑賞、日本美術と印象派絵画
何でもひとこと:寝起きの良さが強み、朝一番からしっかり声が出せます。ナレーションにはこだわりがあって、硬派から軟派までOK。
もう9年、チェロ演奏が趣味。クラシック音楽が頭に常に流れていますし、庭の草むしりをしながらモーツァルトを口ずさみます。アイロン掛けや料理など家事が好きで、妻からは重宝がられていると思います。

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