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「ロボットの展示会に行こう」から...どうして『暗号資産のマルチ商法』に 狙われる大学生たちAさんBさんの実情 勧誘したC氏を直撃すると

2023年05月24日(水)放送

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 バイト先の友人に勧誘された大学生Aさん、同じ大学の人物に勧誘された大学生Bさん、大学生もターゲットとされる「暗号資産を利用したマルチ商法」の被害にあった。詳しく指導されたという『勧誘マニュアル』の実態に迫るとともに、今回記者は勧誘側の人物にも直撃取材した。

投資知識の乏しい大学生も被害に

 5月24日、特定商取引法違反の疑いで逮捕されたのは東京都港区に住む無職・坂本昂洋容疑者(33)ら計9人だ。警察によると、坂本容疑者らは去年6月~9月にかけて、20代の男女3人に「マーケットピーク社」が発行する暗号資産を販売した際、必要な契約書を交付しなかったなどの疑いがもたれている。

 坂本容疑者はマルチ商法で暗号資産を販売するグループを率いていて、グループはこれまでに20代の若者を中心に2500人あまりの会員を集め、約7億7500万円を集めていたとみられている。警察は坂本容疑者らの認否を明らかにしていない。

 投資の知識の乏しい大学生らも被害にあった暗号資産のマルチ商法。その勧誘の実態はどのようなものだったのか。
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 坂本容疑者らが販売していたのはドバイに本社がある「マーケットピーク社」が発行する暗号資産だ。ホームページには、暗号資産を購入すると派手な生活ができるかのような動画が掲載されているが、その実態はよくわからない。
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 一方で、SNS上には被害を訴える声があった。

 【SNSに書き込まれた投稿】
 「なんだよマーケットピーク。返金もされなければ出金もできないじゃないか」
 「マーケットピークで被害に遭われた方々、共に頑張りましょう」

【Aさんの場合】バイト先の友人から『月20万円稼げる』

 一体どのような被害にあったのか。取材班は関西の大学に通う21歳のAさんに話を聞くことができた。始まりは去年8月、アルバイト先の友人からインスタグラムのダイレクトメッセージが届いたことだった。
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 【Aさんに届いた友人からのメッセージ】
 「わんちゃん20万円もらえるかも。友達もらってるし」
 「いやなんもしてなくてもお金入るらしい笑笑」

 (Aさん)
 「月20万円稼げるみたいな感じの、やばいみたいな、なんか語彙力ないようなDM(ダイレクトメッセージ)で。友達でしたし、話を聞いてみるのは悪くないかなと感じましたね」
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 その後、Aさんはその友人と大阪市内の喫茶店で会うことになった。そこには友人のほかに見知らぬ男女2人がいて、マーケットピーク社の暗号資産を買うように迫られたという。

 (Aさん)
 「仮想通貨(暗号資産)市場はこれからバブルを迎えるから、みたいな感じで言われた。絶対2倍3倍は上がるし、それ以上は絶対行くよ、みたいな。早くもう今日やった方がいい、今からやったほうが絶対いい、これやらへんとか意味わからん、みたいな感じの雰囲気で話が進んでいったという感じですね」
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 「お金がない」と言うと、喫茶店近くにある複数の消費者金融に強引に連れて行かれたという。

 (Aさん)
 「お金をおろさないと帰れない雰囲気でしたね。(消費者金融の)ドアの前で待っているみたいな感じで。もうやるしかないみたいな感じになってしまって」
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 結局Aさんは消費者金融から65万円を借りて暗号資産を購入した。しかし、この暗号資産の価値は去年の秋以降暴落して、今となってはほぼ価値は無いという。Aさんの手元に残ったのは消費者金融の借金だけだった。

 (Aさん)
 「とても悔しいです。何とかしたいという思いもあるんですけど、自分の知識不足だった」

【Bさんの場合】同じ大学のC氏に誘われ約140万円投資…その後は勧誘も

 被害にあったのはAさんだけではない。大学生で21歳のBさんは、去年7月に同じ学科のC氏に大阪市内で行われている展示会に誘われた。だが、連れられた先は会場の向かいにあるタワーマンションの一室だった。そこで見知らぬ男性2人から暗号資産を購入するよう勧誘されたという。

 (Bさん)
 「ロボットの展示会が国際会議場であるから一緒に行かへんか、みたいに誘われて行きました。仮想通貨(暗号資産)で、今はまだ流行っていないけど、そのうち段々上がっていくからそれで稼ぎつつ、なおかつ人を誘って稼ぐ、みたいな。誘った人はその相手が振り込んだ額の20%もらえる、みたいな」
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 それは『マルチ商法』だった。警察によると仕組みはこうだ。Bさんが勧誘した友人がマーケットピーク社の暗号資産を購入すると、Bさんに購入金額の8%の暗号資産が支払われるという。まさに被害者が加害者になるシステムだった。
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 C氏から「これで一発逆転しよう」などと説得され、Bさんは9回に分けて暗号資産約140万円分を購入。その後、勧誘の練習が始まった。勧誘のやり方を指導された際のメモには、「やばい。えぐい。すごい」「日給8万円」など、勧誘する際に使うべき言葉やアポイントを取るためのノウハウを指南された。
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 また、ノウハウには「アポ取り3原則」というものが。「お願いをしない・声を2トーンアップ・内容を話さない」の3つで、下手に出てこれを買ってくださいというのはでなくこの商品に自信があると見せ、その際に声を2トーンアップして強調して、詳しく内容を話さず相手の解釈に任せる、という内容だ。他にも「マーケットピーク・マルチ・ねずみ講・いつ空いている?」というワードはNGで、代わりに「エムピーやMP(マーケットピークの頭文字)・ドバイの事業・Bigプロジェクト・○日と○日のどっちが空いている?」などと言い換えるなど細かい指導があったという。

 C氏らの監視の下、Bさんは約1か月の間、連日勧誘の電話をさせられたという。

 (Bさん)
 「もう毎日のようにやっていたんで。1日で長くて4時間とか。もうほぼC氏の予定が空いている限りです」
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 その後、Bさんは勧誘に嫌気がさしてグループを脱退。支払った140万円を返金するようC氏に訴えたがいまだに金は戻っていない。

 (Bさん)
 「(Q相手に対してどう思う?)苛立ちですね、怒りですね。あいつのせいで騙された。あいつに騙されたなっていう感じですね」

C氏を直撃『買うか買わないかはあなた次第と言った』

 ではBさんを勧誘した同じ大学に通うC氏はどう思っているのか。取材班はC氏を直撃した。

 (記者)「マーケットピークについて」
 (C氏)「撮らないでほしいです」
 (記者)「何人くらい誘ったんですか?」
 (C氏)「そんなことお答えする気ないんで」
 (記者)「特定商取引法は知っていましたか?」
 (C氏)「やめてもらっていい?ほんまにしんどいんで」
 (記者)「被害に遭った人から聞いているが?」
 (C氏)「被害じゃないです」
 (記者)「悪いとは思っていないですか?」
 (C氏)「自分の買い物なんで、自分の責任になります」
 (記者)「買う人に選択を委ねていました?」
 (C氏)「買うか買わないかはあなた次第と言いました」

 暗号資産の購入はBさんの判断で、自身に責任はないと最後まで主張した。

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