MBS(毎日放送)

よんチャンTV(テレビ)

特命取材班 スクープ

去年は7000件以上に対応...大阪府警『児童虐待対策室』の捜査員たち 虐待被害を未然に防ぐため「地道な聞き込み」「アポなし訪問」

2021年12月08日(水)放送

SHARE
Twitter
Facebook
LINE

大阪府摂津市で当時3歳の男の子を殺害したとして母親の交際相手の男が今年9月に逮捕・起訴された。男の子が亡くなる2か月前に市に通報した女性は「このままでは殺される」とSOSを発していた。どうすれば子どもたちを守れるのか。相次ぐ虐待事件を受けて大阪府警に新たに組織された専門の捜査員たち、その最前線を取材した。

去年は7000件を取り扱い…大阪府警『児童虐待対策室』

(大阪府警・児童虐待対策室の捜査員)
「216番の0135」
「きょう対応していただいた135番になるんですけど」
2.jpg
暗号のような数字が飛び交うオフィス。ここは「大阪府警本部」の一室で、日夜“ある事件”と向き合っている。

(大阪府警・児童虐待対策室の捜査員)
「207の110番。ネグレクト容疑で2~3歳の子どもを上半身裸で保護しているというのが入っているんやけど、そのほかにも子どもがいてるみたいなんで、安全確認とかできているか確認してくれる?」

彼らは『児童虐待対策室』の捜査員。大阪府内には警察署が66あり、虐待の疑いなどの情報の多くは最前線の警察署にもたらされることが多い。
5.jpg
(大阪府警・児童虐待対策室の捜査員)
「児童虐待は基本、警察署員が対応するんですけれど、その申告内容や対応の経過を全部入力して、オンラインで本部と共有しているんです」

取材をした日には“迷子になった幼い子どもが保護された”という事案が入ってきた。上半身裸だったことから「ネグレクト」が疑われた。

(大阪府警・児童虐待対策室の捜査員)
「すみません、少年課児童虐待対策室です。これ児童にけがはなかったですかね?」

各地の警察署と連携してわずかな異変にも目を光らせている。
8.jpg
大阪では、虐待死事件が相次いだことから、4年前に児童虐待専門の部署が作られた。去年取り扱った虐待事案は7000件以上に上っている。

摂津市の児童虐待死事件…知人がSOS出したが市は「緊急性低い」と判断

そんな中、今年8月に事件が起きた。

今年4月には誕生日ケーキを前に笑顔を浮かべていた新村桜利斗ちゃん(当時3)。この4か月後、摂津市の自宅マンションの浴室で全身にやけどを負い死亡した。
10.jpg
大阪府警捜査一課などが捜査に乗り出し、母親の交際相手だった松原拓海被告(24)を殺人罪で逮捕・起訴した。
11.jpg
なぜ事件を防ぐことはできなかったのか。取材班は母親の知人女性に話を聞くことができた。桜利斗ちゃんが亡くなる2か月前に異変に気づいていたという。

(桜利斗ちゃんの母の知人)
「1日で消えるようなアザではないですし。1日2日で消えるアザだったらわかりますけれど、そうじゃない大きなアザが何回も見受けられたのに」

女性はすぐに「このままでは殺されてしまう」と摂津市に通報したという。
12.jpg
こんな強い言葉でSOSが出されたにもかかわらず、摂津市は目立った外傷がなかったことなどから「緊急性は低い」と判断。児童相談所への要請や警察への通報はしていなかった。

市の“誤った判断”と『全件共有』の“仕組みの欠陥”

こうした対応について今年11月、改めて摂津市の担当者に話を聞いた。

(摂津市・次世代育成部 橋本英樹部長)
「保護者である母親との関係を重視し、交際相手と会う機会を特に設けず見守りをしてまいりました。(Q通報内容を受けて松原被告に確認しようということにはならなかった?)児童虐待の対応といたしまして、保護者にまず対応いたします」
14.jpg
事件をめぐっては母親も桜利斗ちゃんへの暴行容疑でその後逮捕されている。当時の市の対応は、母親との関係を重視したことで、松原被告との面会は行われなかった。
15.jpg
大阪府では、“児童相談所”が取り扱った虐待情報は、警察に全て伝えるという『全件共有』の仕組みがある。一方で今回の事件は、“摂津市”が主体となって対応していたため、警察と共有する対象にはならなかった。摂津市がリスク判断を誤ったと指摘されているが、仕組みに欠陥があったことは否めない。

捜査員の目的は『虐待被害を未然に防ぐこと』

大阪府警の児童虐待対策室の捜査員たち。『全件共有』の現場では何が行われているのかを取材した。今年11月中旬、この日は過去に虐待が疑われた家庭を訪問するという。

(大阪府警・児童虐待対策室の捜査員)
「お子さんにけががある身体的虐待なので」
18.jpg
(大阪府警・児童虐待対策室の捜査員)
「連絡を取って『今から警察が行きますよ』と言うと構えられることもありますし、本当に虐待をしている家庭とかであれば隠されてしまうこともありますので。基本的にはアポを取らずに行って普段の状況を見るという形をとっています」

事件捜査ではなく任意での聞き取りになるが原則事前の約束はしない。
19.jpg
捜査員たちが訪れたのは、数か月前に父親が子どもに暴力を振るい、けがをさせた家庭だった。

(捜査員)「すみません、大阪府警の少年課です。事件事故というわけではないんですけれども、お話をお伺いしたいなと思いまして。今お時間よろしいですか?」
 (住人)「はい、大丈夫です」

捜査員たちが家に入った。家の中には母親と子どもがいて、その後、父親も帰ってきた。最近の状況や悩みを聞き取り、子どもは目視確認をして、今後も継続して様子を見ていくことにした。

(大阪府警・児童虐待対策室の捜査員)
「どうしても家庭訪問にしてもそうですし、警察の取り扱いにしてもそうですけれど、一点でしか見られないので、即断即決をせずに、必要なことを調べて心配がなければ打ち切る」
20.jpg
こうした家庭訪問は月100件近くに及んでいるが、訪問した際に子どもにけがが見つかり親を立件したケースもあったという。

児童虐待対策室の目的は虐待被害を未然に防ぐこと。

地道な聞き込み調査「聞かないと何事も始まらない」

11月中旬、大阪市内のマンション住民から「子どもの泣き声と男性の怒号が聞こえる」という110番通報を受けて、捜査員が集まっていた。

(集まって話す児童虐待対策室の捜査員)
「地図でとりあえずマンションこれだけあるんで、一応全部行きましょうか」

虐待かどうかはわからないが刑事事件さながらに聞き込みが行われていた。

(集まって話す児童虐待対策室の捜査員)
「対象のマンションが10階建てで、2階から201は不在、202は『子どもの赤ちゃんの声は聞こえるけど(通報のあった)水曜日はわからん』と。『マンションに子どもがおりますよ』という感じですね。203は不在」
24.jpg
【聞き込みをする捜査員】
(捜査員)「夜10時ごろなんですが、子供の泣き声と男性の怒鳴り声がするという通報がありまして、いろんなところに聞き込みをしているんです」
(住人1)「このマンションですか?」
(捜査員)「いろんなところになるんですけれど」

(住人2)「ちょっと覚えてないですね。赤ちゃんへの怒鳴り声がもし聞こえていたら、そういうことがあったという記憶はあると思うんですけれど」

一軒一軒つぶすという地道な聞き込みだ。

(住人3)「うちも2歳の男の子なんで」
(捜査員)「男の子?2歳?いま保育所?」
(住人3)「はい。泣くことはありますけれど、そんな虐待ではない」

(住人4)「もし暴力とか虐待とかさせているようやったら、おむつ替える時とかに体見たら気づく」

終日かけて聞き込みは行われたが、この日は泣き声の出元は見つからなかった。出元を見つけるか、この地域に住む子どもの安全確認ができるまで、聞き込みは続けられるという。
25.jpg
(大阪府警・児童虐待対策室の捜査員)
「お子さんが泣くのは当たり前だと思いますので、一概に泣き声通報=虐待ではないので。家庭を特定して聞かないと何事も始まっていかないので、当たるまでは時間をかけてでも調整するという感じですね」

密室での犯行が多い虐待事件。「被害者が子どもで加害者が家族」という状況が多い中、どこまで家庭に踏み込んでいくのか。現場では難しい判断が常に求められている。

関連記事

SHARE
Twitter
Facebook