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完成間近!?"海なし県"奈良の山奥で育つ『フグ』過疎化が進む天川村の未来を託す...試行錯誤の3年間

2022年02月03日(木)放送

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奈良県南部に位置する天川村。天川村は世界文化遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部の大峰山があったり、洞川温泉があったりと、観光資源が多く自然豊かなところです。一方で最寄りの鉄道駅は約25km離れているなど山深い場所にあり、人口減少などの課題を抱えています。そんな中、天川村では、活性化の起爆剤になればと『フグ』に目をつけました。海のない奈良県でフグ。一体どんな取り組みなのか、取材しました。

廃校になった校舎で『フグの養殖』

皿にきれいに盛られた“てっさ”。
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雪が舞い散る中、食べているのは奈良・天川村の職員たちです。

(天川村の職員たち)
「めちゃめちゃうまいです」
「やっぱりフグはうまいですね」

文字通り“喜びを噛みしめる”のには深い理由がありました。
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前回取材したのは去年7月。廃校になった校舎を利用して新しい取り組みが行われていました。
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(記者リポート 去年7月)
「今は使われなくなった小学校の校舎です。教室に入ってみると黒板も残されたままですが、その前にあるのは机ではなく『いけす』です」
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いけすを覗いてみると、そこにいるのは『トラフグ』。
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この教室は、その名も「トラフグ学級」。村役場が3年前から教室を使ってフグの養殖を始めたのです。しかし、なぜフグなのでしょうか?
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(フグ養殖を担当する下西勇輝さん 去年7月)
「冬の特産品がやはりないので、海なし県の奈良県で海産物を作ることで、みなさんの興味をひけるのかなと思って始めました」

天川村の水はフグの養殖に適している?

夏場は避暑地として賑わう天川村ですが、冬は寒さが厳しく観光客が激減。そこでトラフグを目玉にすれば冬にも観光客を呼び込めるのではないかと考えたのです。
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フグ養殖を担当する下西勇輝さんは、大学時代の研究でフグを飼育していた経験を買われ、村に呼ばれました。下西さんによると、天川村はフグの養殖に適しているといいます。

(フグ養殖を担当する下西勇輝さん 去年7月)
「天川村の水がフグの養殖に非常に適していた。ストレスを感じるとエサも食べなくて成長もしないですし、泳ぎも鈍くなってきたりするので、水にカルキが比較的入っていない天川村だからこそできた養殖だと思います」

そしてフグが旬の季節を迎えた今年1月。再び養殖場を訪れました。

(フグ養殖を担当する下西勇輝さん)
「(Qどのような変化や成長がありましたか?)ちょっと身が丸々としてきて、重みが増してきたような。ですが実際、夏の間に成長が思ったより伸びなくて」
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現在の重さは平均約700g。高値での取引には1kg以上が目安とされるため、出荷に向けた試行錯誤が繰り返されています。
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(フグ養殖を担当する下西勇輝さん)
「昨年度に試食した個体は、身が柔らかいという意見があったので、今年度は身を引き締めるためにも水流発生器で運動させたり、出荷前に海水と同じ3%の水につけて身を引き締めるという対策をとっています」

天川村では林業の衰退とともに過疎化や高齢化が進む

ここまでするのには、冬の観光客の減少だけでなく、天川村が抱える根本的な問題がありました。それが“人口の流出”です。
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林業が主な産業だった天川村。
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ピーク時の1956年には人口が約6000人いましたが、林業の衰退にあわせて人口も減少の一途をたどり、現在ではわずか1300人ほどになりました。
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(天川村役場 豕瀬充参事(60))
「子どものときの話なんですけれど、映画館が3軒ぐらいあったんです。たくさんの人がいますので、お祭りでありますとか、例えば学校の運動会とか、非常ににぎやかに行われたという子どもの頃の記憶がありますね。今はそんなんないですよ」

過疎化や高齢化といった深刻な問題。そこで村が生き残りをかけて白羽の矢を立てたのが“フグの養殖”だったのです。

村の商店やフグ料理店も「天川村のフグ」に期待

村で90年以上にわたり生活用品を売り続けているという今西商店。
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店を切り盛りする親子もフグの出荷を心待ちにしています。そんな2人が取ったのはフグの調理師免許。養殖が始まると聞いて2年前に取得しました。

(今西商店 今西岳人さん)
「村でやるということもあるし、応援しているという意味も込めて。村の閑散期に、将来1人でもフグを食べに天川村に来てくれる人がいたら、いいことですよね」
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天川村のフグに期待を寄せているのは村の人だけではありません。全国にチェーン展開するフグ料理店「玄品」の大村美智也営業本部長は、養殖が始まった頃から出荷を心待ちにしています。そんなフグのプロに味を確かめてもらうことに。
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いけすから出したフグを手際よく締めて、発砲スチロールへと入れていきます。
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(大村さん)「元気です。いいフグですね。後は食べさせていただいて、どうかというところですね」
(下西さん)「ちょっと緊張で。なんとか昨年度よりも改善できていればなとは思います」
(大村さん)「自信を持ってください」

プロが捌いて試食

1月29日、大阪市中央区の「玄品 法善寺総本店」では、持ち帰られたフグを職人が皮を剥ぎ、毒のある内臓などと食べられる身の部分とに切り捌いていました。
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そして、てっさが完成。気になるそのお味は…。大村さんと法善寺総本店の請谷俊介店長が試食します。
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(大村さん)「どう?歯応えはしっかりしていますね」
(請谷さん)「そうですね。しっかりしていますね」
(大村さん)「味もこのサイズにしてはしっかりしていますし」

出荷前とあってまだ小ぶりですが、味についてはフグのプロも太鼓判を押してくれました。

天川村は今年度内の出荷を目指す

3年間の試行錯誤の末、ようやく完成が見え始めた天川村のフグ。1月31日、大阪で捌かれたフグを、村の職員らが試食しました。

(天川村の職員たち)
「うまいです」
「身のコリコリ感が最高やな」
「やっぱりおいしいなあ、フグは」
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(フグ養殖を担当する下西勇輝さん)
「身が締まっていて、うまみが強く感じられるような気がします。ここからどれだけエサを食べてくれて大きくなってくれるのか。それで悪い影響を出さずに死なせずに、上手に出荷できればいいなと思います」

今年度内の出荷を目指す天川村。過疎化を食い止める新たな資源として、山奥育ちのフグに村の未来が託されています。

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