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"泣き叫ぶ3歳児に高温の湯"全身やけどで死亡《摂津虐待死亡事件》男に下される量刑は?専門家が法廷で証言『被告は"ヤングケアラー"』あす判決

2023年07月13日(木)放送

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 3歳の男の子の身に一体何があったのか。真相を明らかにする裁判で、男の子の母親の交際相手の男は殺意を否認した。その一方、裁判の中で専門家が明らかにしたのは、男自身の生い立ちが事件の背景にあるということだった。

 松原拓海被告(25)。起訴状によると、松原被告は2021年、大阪府摂津市のマンションで、同居していた交際相手の長男・新村桜利斗ちゃん(当時3)の頭部をクッションで殴るなどの暴行を加えたほか、別の日には浴室で高温のシャワーを浴びせ続けるなどして殺害した、暴行と殺人の罪に問われている。

 事件から約2年、大阪地裁で始まった裁判員裁判。松原被告は、起訴内容について、暴行の事実は認めつつも、次のように話した。

(松原被告)「桜利斗に対して熱湯を浴びせ続けたという事実はありません。殺意もありません」

松原被告側は、殺人罪は成立せず、傷害致死罪が成立すると主張した。

「トイレトレーニング失敗し懲らしめようと…」

 一方、検察側は冒頭陳述で、「お湯の温度は60度か75度に設定されていた。松原被告は桜利斗ちゃんを浴室に閉じ込めていて、やけどの程度は、顔から両手両足まで全身の約90%と重かった。3歳であれば、高温のお湯を浴びればお湯から逃げる行動をとることは可能だったはずだ」と、松原被告が意図的にシャワーを浴びせたと主張した。

 仮に殺意が無かったとしても、なぜ松原被告は桜利斗ちゃんを浴室に閉じ込めるような行為に及んだのか。事件に至った動機を、松原被告が法廷で証言した。

(松原被告)「桜利斗ちゃんを懲らしめてやりたいという気持ちがあった。トイレトレーニングをしているのに2回も立て続けに失敗し、詫びる様子もなくYouTubeを見ていたから懲らしめたいと思った」

 (被告の弁護人)「懲らしめたいとは?」

 (松原被告)「浴室の中を熱くして桜利斗ちゃんをしんどくさせる。シャワーを壁に向けてシャワーの温度を高くして鍵をかけて閉じ込めた」

 (被告の弁護人)「いつそう思いついた?」

 (松原被告)「お尻を洗い流しているときに」

 松原被告によると、浴室に桜利斗ちゃんを閉じ込めた後は、15分から20分ほどスマホを見たりタバコを吸ったりして過ごしていたという。桜利斗ちゃんの様子を見にいこうと浴室に行くと、全身が真っ赤になった桜利斗ちゃんが倒れていて、呼びかけたが反応は無かったという。

幼い異父兄弟を世話…証人の大学教授「ヤングケアラーだった」

 一方、公判で弁護側は、子どもを虐待した親たちからの相談や支援を行う大学教授を証人として呼んだ。大学教授は、松原被告の生い立ちを次のように説明した。

(立命館大学中村正教授)「松原被告は、5歳の頃に両親が離婚し実母に引き取られた。母親は再婚し、再婚相手との間に弟たちが生まれた。中学生の頃に不登校となり、保育系の高校に進学するも中退。幼い異父兄弟の世話をしていて、”ヤングケアラー”だったといえる」

(被告の弁護人)「『トイレトレーニングに失敗しているのに平然としていた』という趣旨の発言についてはどう考える?」


(立命館大学中村正教授)「自分がこんなにもしてやっているということを分からせる気持ちがあった。力の弱い者に指導することで”コントロールしている”という感情が生まれ、うまくいかない時にこのコントロール感をぶつけるために、力の弱いものに暴力をする状況にあった。松原被告は、借金もあり仕事も探し、桜利斗ちゃんの母親から結婚も求められていた状況で、怒りのコントロールができなかった。これまでの友人との比較や高校の中退など、過去で思うようになってこなかったことが起因して自分に自信がないんだと思われる」

事件の背景に、松原被告が心理的に安定していなかったことや松原被告の生い立ちが影響していると分析した。

「桜利斗ちゃんに嫉妬するように」

7月4日、論告求刑の日。検察側は、「常習的に虐待をしたうえに、裸の幼児に高温のシャワーを浴びせるという危険極まりない行動を選択し、泣き叫んだであろう被害者に高温のシャワーを浴びせ続けるという、類を見ない悪質さ」として、松原被告に懲役18年を求刑した。

一方、弁護側は「わざとお湯をかけ続けたかどうかの決め手はなく、『こらしめようと思ってやった』ことであり、暴力と殺すことでは大きな開きがある。桜利斗ちゃんが『死んでも構わない』と思っていた動機はない」などとして、殺人罪ではなく傷害致死にとどまるとして、懲役6年が相当だと主張した。

裁判長から「最後に何かありますか」と問われた松原被告は、「遺族に伝えたい」と切りだし、次のように述べた。

 (松原被告)
 「あなた(桜利斗ちゃんの母親)が事件から今日まで2年間、どれほど苦しい思いを過ごしてきたかを裁判で知りました。桜利斗ちゃんより自分を見てほしいという気持ちになり、桜利斗ちゃんに嫉妬するようになりました。桜利斗ちゃんに愛情を持って接することができなかった。最低です。桜利斗ちゃんを奪ってしまい本当に、本当に申し訳ない。事件を忘れないし罪と向き合い形のある償いをします」


虐待の末に3歳児が死亡するという痛ましい事件。ただ、裁判を通して明らかになったのは、虐待に至るまでに被告人本人の生い立ちや生活環境が大きく影響しているのではないかということだった。虐待というと、幼い子どもを保護することが、優先されがちだが、実は虐待している大人の側にも支援の手を差し伸べる必要があったのではないかと考えさせられる。

果たして、司法は松原被告に対し、どのような判断を下すのか。判決はあす、7月14日午後に言い渡される。

MBS報道情報局 清水貴太

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