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2歳女児が熱中症で死亡「市が虐待リスクを引き下げたのは問題?」そもそも「虐待リスク判断の方法は?」児童相談所の元所長が解説

2022年07月06日(水)放送

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 今年6月、大阪府富田林市の集合住宅で2歳の小野優陽ちゃんが死亡しているのが見つかり、優陽ちゃんを約11時間放置したとして祖母の小野真由美容疑者(46)と同居人の桃田貴徳容疑者(50)が保護責任者遺棄容疑で逮捕されました。 事件をめぐっては、富田林市が大阪府の児童相談所から優陽ちゃんを引き継いだ2020年10月以降、一度も家庭訪問をしないまま、2021年12月に「要保護児童」から「要支援児童」にリスク判断を引き下げていました。行政の対応に問題はなかったのか…児童相談所の元所長で児童虐待防止協会の津崎哲郎理事長に行政側が『どのように児童虐待のリスクを判断しているのか?』などについて話を聞きました。

虐待リスクの「最重度」は『死亡・生命の危険が迫っている状況』

2020年6月に優陽ちゃんは、小野容疑者と入浴中に溺れて心肺停止の状態に陥ったということです。当時は安全配慮不足による『ネグレクト(育児放棄)』と児童相談所は判断しました。虐待のリスクを「最重度」に認定していました。虐待リスクの最重度とはどういうものなのでしょうか。最重度の虐待というのは『死亡生命の危険が迫っているという状況』を示していると言われています。虐待の程度によって児童相談所か市町村課で担当の役割分担がされているということです。富田林市のケースでは「最重度」という認定されていました。

ーー最重度の認定についてどのように思われますか?
「下手したら死んでいたということですから、最重度の認定は妥当だと思います」

虐待対応の『二元化』虐待件数増加で現場が限界状態に

心肺停止の状態に陥った優陽ちゃんは2020年6月には回復しました。そして保育園に通い始め、児童相談所が家庭訪問や面談を複数回実施していました。その後、児童相談所から富田林市に「事案送致」されます。つまりここで管轄が移っています。虐待リスクは引き続き『最重度』という扱いでした。

「事案送致」とは虐待事案の取り扱いを別の機関に移すことです。今回は児童相談所から市町村という形で富田林市に移されました。市町村から児童相談所への事案送致については以前から規定があり、児童相談所から市町村へは2016年に正式に規定ができました。2004年の児童福祉法の改正で二元対応がスタートしましたが、2016年に規定ができるまでにも、実務的には市町村への事案送致が行われることがあったということです。

ーーこの二元化はどのような背景からできたものなのでしょうか?
「2000年に児童虐待防止法ができて、急激に児童相談所の業務が増えました。当初は児童相談所だけで対応していましたが対応しきれなくなり、児童相談所と市町村、二元対応の仕組みが2004年の法改正でできて、連携を取り合って虐待事案に対応しますよという仕組みになっています。児童相談所は『重度』『保護を要する』ケースを対応しまして、市町村は『在宅支援のケース』を受け持つという役割分担。だから機能・役割によってどちらの機関が事案を担当するのがいいのかを話し合われて、どちらかが主担で持つという形になります」

ーー児童相談所か市町村かのどちらが担当するかはどのように判断するのですか?
「保護を要するケースや権限発動を要するケースでは、市町村はその機能を持っていませんので、児童相談所が担当しないといけないです。普段は「要保護児童対策地域協議会」というネットワークを作ってチーム支援をすると。そういう場に頻繁に児童相談所も来ていますので、市町村に担当をお願いするケースや『重度』だから児童相談所が変わって担当を持ちますという話が常になされるという状態です」

「きちんと目で見て確認して改善策を考えないといけなかった」

事案送致があったのが2020年10月、その後2020年12月に虐待リスクを中度に市は引き下げています。そして翌年の2021年6月に優陽ちゃんは保育園を退園しました。小野容疑者の仕事の都合で『送迎が大変』『在宅で仕事をしている』という理由でした。2021年の年末には『要保護児童』から『要支援児童』に引き下げられ、リスクが比較的少なくなったと判断がなされました。富田林市はこの間に家庭訪問を実施していませんでした。

ーー保育園退園後の一連の対応についてどのように思われますか?
「今回のケースでは、市町村で事案を受け持つとの決定になった一つの要因に『保育所に通っているから』というのがあったみたいなんです。ところが保育所に通わなくなって、通わなくなる理由が『送迎が忙しくてできない』ということが言われています。送迎ができないほど忙しいのであれば、家に行ったとしても子どもの面倒を見れない状態ですよね。条件が変わったのであれば、もう一度児童相談所と市で協議し直して、条件が崩れていますので、『どんな子どものケアの仕方があるのか』ということをもっと真剣に考えて、今の家庭の状況でどういう状態に子どもが置かれているのかを、目で見て確認して、その改善策を考えないと本当はいけないと思います。その辺のプロセスが十分なされていなかったという問題点をちょっと感じました」

「日々のネグレクトの状態をどう改善できるかを見る視点が欠けていた」

ーー今回のケースでは市は異様な対応をした、他の市町村はちゃんと対応しているのか、あるいはそもそも児童相談所じゃないところが、いわゆる基礎自治体がこういうことをやるのは無理なのか?どう思われますか?
「様々な論点があり難しい判断ですが、どこもマンパワーが十分ではない、だから本来こうしないといけないということが、児童相談所も十分できないし、市町村も十分できていない状態。その問題は基本にありつつ、今回のケースは『ネグレクト』という身体への虐待で見守っているケースではないんですね。ネグレクトの場合、見てもわかりづらいんですね。怪我をしているわけではないですので。そうすると、日々のネグレクト状態がどのような状態になっていて、そこをどう改善ができるかという視点を持って見ないといけないのに、そういう視点がちょっと欠けてたのではないかなとちょっと思います」

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