大阪府内の閑静な住宅街にあるアパートで起きている「騒音トラブル」。昼夜問わず聞こえてくる男性の叫び声に、同じアパートに住む住民らは悩まされています。今回、取材班は男性の叫び声を確認すべく張り込み取材を行いました。そこではっきり聞こえてきた「騒音の実態」とは…。
『耐え難い苦痛である』隣人の騒音に悩まされていた女性の訴え
大阪府高槻市内の“あるアパート”に住んでいた女性が2021年5月、管理会社に宛てた文章を入手しました。その内容は、隣の部屋に住む男性の騒音に悩まされていた女性の訴えでした。
【アパートに住んでいた女性の文章より】
「深夜1時15分~1時30分頃、笑い声で目が覚める。『やってやるぅー!やってやるぅー!』など、ほぼ毎日さまざまな時間帯に聞かされている。睡眠薬を服用して何とか眠れた。朝6時58分~7時15分頃、笑い声で目が覚める。大声で一言一句丸聞こえというのは耐え難い苦痛である」
管理会社は訴えを受けて男性に注意や警告を行ったといいますが、状況は一向に改善されず、女性は入居からわずか4か月で退去していったといいます。
(アパートを管理する「SAKURA管理」 佐藤太一さん)
「隣の男の人が昼夜問わず大声で叫んでいると。当社としても最初は本人に電話をするなりして注意を促していたんですけれども、本人は『そんなことはしていない、大声を出していない』と言われていまして」
住民の男性は「大声を出すなどの騒音は発していない」と話したといいます。佐藤さんによりますと、注意されると一旦は静かになり、また数日後には騒音の苦情が入るようになるといいます。
(アパートを管理する「SAKURA管理」 佐藤太一さん)
「本来退去すべき人ではない女の子が退去してしまった。ハウスクリーニング代であったり、本来請求できるものも今回はこういう特殊な事情で請求できなかったというのもありますし。次の方もやはり同じような被害に遭われていると聞いています。もう許せないという気持ちでしかないです」
アパートの住民たち「声で叩き起こされた」「警察を呼んだ」
一体、アパートの中で何が起きているのか。今年6月、取材班がアパートの同じフロアに住む住民らに話を聞いてみました。
(同じ階の住民)
「(Q騒音で困ったことはありましたか?)きょうもなんですけど、(朝の)4時くらいにゲラゲラ笑いながら帰ってきて、それで叩き起こされた。(Q起こされてしまうとどう思う?)最悪ですね、しんどいですね。毎日聞いていますね、あの人の笑い声と叫び声は」
下の階の住民は次のように話しました。
(下の階の住民)
「『勝ちは勝ち。負けは負け』とか、なんかゲームをしているような、そんな感じの言い方ですね。1回警察は呼んだんですけどね、夜中2時くらいに。警察を呼んで『ちょっとうるさいから聞いておいて』と。仕事に影響が…運転業務をしているので眠気に襲われるとか。毎回管理会社に電話をして何とかしてくれとは頼んだんですけどね」
多くの住民らが被害を訴えている住民男性による騒音は、一体どんな音なのか。取材班は今年始めごろにアパート内で撮影された動画を入手しました。
【動画に記録されている住民男性の叫び声】
「俺の方が早い!俺の方が早い!ナオコの告げ口三昧…。あの人!あの人!ウヒヒヒヒッ」
平日の昼間に発せられる男性の叫び声。撮影者が男性の部屋に近づいてみると、男性の不気味な声がアパート中に響き渡っていました。
朝も夜中も休日も…張り込み取材で確認された“騒音の実態”
こうした叫び声が昼夜問わず発せられているのか。取材班はその実態を確認するため、管理会社に協力を依頼。男性の部屋から3部屋隣の部屋で張り込むことにしました。
今年3月の張り込み初日、取材班は朝5時から様子をうかがっていました。すると…。
(住民男性の叫び声)
「いやぁーーー!」
(記者リポート)
「いま朝7時過ぎです。何度か男性の大きな叫び声のような声が聞こえてきました」
朝7時過ぎ、静寂を切り裂くような叫び声が聞こえてきました。この日は昼過ぎまで張り込みましたが、声が聞こえてきたのは朝方だけでした。
張り込み2日目となった今年4月、今度は夜の9時~深夜0時に張り込んでみました。すると…。
(住民男性の叫び声)
「ほえー!」
(記者リポート)
「いま夜10時なんですが、男性の大きな声が聞こえました」
3部屋隣にいてもはっきりと男性の叫び声が聞こえてきました。
さらに…。
(住民男性の叫び声)
「いこーい、いこーい!」
(記者リポ)
「またですね、先ほどから3分ほど時間が経っただけなのですが、男性の大きな声が聞こえました」
早朝と夜遅くに響き渡る住民男性の叫び声。
張り込み3日目の今年5月、取材班が日曜日にも張り込んでみると…。
(住民男性の叫び声)
「〇×▲※~、おいこのハゲー!」
(記者リポート)
「いまも聞こえますね、かなり大きな声で男性が怒鳴っているような声が聞こえます。いま2回ほど、3軒隣のこちらの部屋でも男性の大きな声が聞こえました」
怒鳴り声のほかにも、笑い声などが何度も響き渡っていました。
『法律や条例で規制されている対象には当てはまらない』
こうした実態に対して、管理会社側は住民男性に対して部屋の立ち退きを求めて裁判を起こしています。
(アパートを管理する「SAKURA管理」 佐藤太一さん)
「本人は家賃を全く払わなくなりまして、もうすでに半年以上滞納していますので、当社の弁護士で滞納と騒音を含めた訴訟というのをいま提起しております」
男性は50代で、これまでの裁判では「声は出しているが迷惑な声ではない。退去するつもりもない」などと話していて、管理会社によりますと、男性が病気を患っているなどの情報もないといいます。
複数の周辺住民らが被害を訴えている騒音トラブル。住民男性側に違法性などはないのでしょうか。「なにわ総合法律事務所」の吉岡康博弁護士に今回の実態を確認してもらうと、次のように話しました。
(なにわ総合法律事務所 吉岡康博弁護士)
「民間のマンションで隣近所で起こっていることですので、法律とか条例で規制されている対象には当てはまらない。ですので、民法ですね。隣の人が大きい声が聞こえるというのは間違いないと思うんですけれども、そこは程度の問題になってくるかと思います」
騒音トラブルは継続的な騒音により健康被害が出ている場合などで「傷害罪」が適用されたケースがあるものの、非常にまれだといいます。
住民男性『迷惑をかけるような騒音は出していない』と主張
なぜ住民男性は深夜や早朝に叫び声をあげるのか。取材班は直接男性に話を聞こうと取材を依頼。男性はカメラ取材を拒否した上で次のように話しました。
(住民の男性)
「周りに迷惑をかけるような騒音は出していません」
直接、何度も叫び声を聞いたと指摘すると、次のように述べました。
(住民の男性)
「ちょっと独り言はあるかもしれないけど、僕はそんなに頻繁には出していない。僕の単なる性格です。(ほかに理由は)何もないですよ」
男性は取材に対して「周辺に迷惑行為はしていない」と主張しました。
静かな住宅街で昼夜問わず響き渡る男性の叫び声。多くの自治体では生活騒音を規制する条例などはなく、その対応としては民事訴訟で相手を訴えるか、耐えるしかないということなのでしょうか。