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ハリウッドが注目するその男の生活は意外にも質素だ。
髪が伸びれば、メイク道具で頭を整えるという。
<遠藤慎也さん>
「これ『フロービー』って言って、中がバリカンになってるんですよ
<記者>
「理髪店とかいかないんですか?」
<遠藤慎也さん>
「行かないです」
<記者>
「なぜ?」
<遠藤慎也さん>
「(お金が)もったいないじゃないですか」
神戸市に住む遠藤慎也、28歳。

これまで、ハリウッド映画などで「特殊メイク」を数多く手掛けてきた。
(ハリウッド映画:「ザ・リング2」「パラノーマル・アクティピティ2」など4本 邦画:「L チェンジ・ザ・ワールド」「エクステ」「デトロイトメタルシティ」など)
「特殊メイク」とは、映画などに出演する役者の顔に傷を作ったり、全く別人の顔に作り変える特殊な技術だ。
<遠藤慎也さん>
「ちょっと目を開けてもらっていいですか?」
<ダンサー>
「何これ、すげー」
この日、遠藤が挑むのはイベントに出演するダンサーの特殊メイク。
<遠藤慎也さん>
「メイク的には今見るとすごいシンプルなんですけど、もっと陰影をつけて模様も入れて血管も入れて」
小さなシミや、細かい血管の1本1本まで、こだわる。
頼りになるのは、頭の中に用意した設計図だけ。
2時間後、あのダンサーは「狼男」へと姿を変えた…

日本に数百人はいるとされている、「特殊メイクアーティスト」。
だが、世界進出を果たせたのはほんの一握りだけ。
世界が、遠藤に熱い視線を注ぐのにはワケがある。
まるで生きているかのような人形。
<遠藤慎也さん>
「これは一応『ダミーヘッド』という分野の造形物になります」
「ダミーヘッド」。

人間のコピー人形を作る技術だ。
ハリウッド映画ではよく使われているが、日本でここまでリアルに作れるのは、数えるほどしかないという。
<お客さん>
「立派やね。中々ハンサムやし、リアルやね」
こうした特殊な技術は、通常、専門学校で習得するというが、遠藤は全て「独学」で身に着けてきた。
<特殊メークアーティスト 遠藤慎也さん>
「中学校の1年生か2年生ぐらいの時ですかね。本格的に『特殊メイク』がしたくなって、いろんな化粧品店に入って、店員さんに『特殊メイクやりたいんですけど特殊メイクの道具ないですか』って聞いたり、いろいろやってたんですよね」
中学生の頃、遠藤が偶然見つけたのが、「特殊メイク」の専門誌。
掲載された業者に片っ端からFAXを送り、資料をかき集めた。
高校卒業後は単身でハリウッドに渡り、本場の技を盗みながらキャリアを積んでいった。
それから10年後。
憧れていたあの専門誌に、自分の特集記事が組まれるほどになった。
去年6月。
遠藤が拠点を置く神戸のアトリエに、警察から1通の依頼書が届いた。
「未解決事件の捜査に力を貸して欲しい」という。
<遠藤慎也さん>
「自分の技術がエンターテイメントだけじゃなくて、人の役に立てるような状態が今回の仕事なのかなと」
「特殊メイク」の技術が、捜査の舞台で初めて試される。
未解決事件に光を当てることはできるのだろうか?
ハリウッドが注目する 「特殊メイク」のプロ、遠藤慎也。
その技は、一瞬にして役者の姿を変えてしまう。
そんな遠藤のもとに、警察から未解決事件に協力して欲しいという依頼が舞い込んできた。
それは、去年2月、兵庫県三田市で起きた死体遺棄事件。

湖からコンクリート詰めにされた男性の遺体が見つかった。
年齢は40代から50代。
この手がかりを基に警察は、遠藤に被害者の顔を復元してほしいと伝えてきたのだ。
<遠藤慎也さん>
「自分たち『特殊メイクアーティスト』は色々なものを作り出すが、たぶん誰もやったことがない事だと思う」
遠藤はまず、湖で発見されたコンクリートの型にスポンジを流し込み、被害者の顔の輪郭を浮かび上がらせた。
<遠藤慎也さん>
「周りから重たいコンクリートで圧力がかかっているので、若干、頬の凹凸であったり、顎自体がどうしても後ろに引いてしまっているので、それを全部細かく顎を前に出したり、頬の押されてる肉を戻したり」
生前の被害者の顔の形を粘土で作成し、これを人の顔に近づけていくというのだ。
自らが生み出した手法で、スポンジを押し当てるなどして細かいシワや肌の質感を表現していく。
特に重要なのは「目」の部分だという。
<遠藤慎也さん>
「『目』ってすごい複雑なんですね。1本の上まぶたでも下まぶたでも、実際にラインが少しでも変わると、その人の表情が変わるので」
目の周りには100本を超えるシワを刻み、少しずつ人の表情を再現していく。
被害者の男性について、分かっている情報は顔の輪郭と推定年齢だけ。
あとは経験と勘が頼りだ。
<記者>
「何してるんですか?」
<遠藤慎也さん>
「肌の色味を… 白人みたいに白っぽくはならないですけど、肌の微妙な色味感は年相応な色味で表現していこうかなと」
ベースとなる肌色を吹き付けた後、赤い液体を少しずつ飛ばし顔に馴染ませていく。
微妙な肌色を表現していくのが、一番難しいという。
<記者>
「地道すぎる作業じゃないですか?」
<遠藤慎也さん>
「これをずっと重ねていって、肌色にしていくので」
人の肌を再現するためには、色を作っては塗るという地道な作業を繰り返し、一つの場所で80回以上も塗り重ねていくのだ。
「特殊メイク」に正解はない。
立ち止まった時は、いつもスタッフに意見を求めるようにしている。
<遠藤慎也さん>
「青茶やな、青茶」
<男性スタッフ>
「肌色の赤というかピンクというか、白さがまだある」
<女性スタッフ>
「もうちょい、くすんでそうですよね、男の人の肌」
さらに試行錯誤は続く…
今度は被害者の輪郭を参考にして、まゆ毛などを再現していく。
しかし・・
<遠藤慎也さん>
「ダメだ。完全にダメだ」
何故か、いつものようにはいかない。
すぐに剥がれてしまうのだ。
<遠藤慎也さん>
「どうしよう。やっぱりレースかな」
遠藤は突然、レースを取り出してきた。
よりリアルさを追求するために、500本以上もある「まゆ毛」を1本1本、編み込んでいくというのだ。

<遠藤慎也さん>
「ここにこう引っ掛けて、回す時に針を下に向けるねん。下に向けて、さっき作ってた輪っかに通す」
<スタッフ>
「先生はほんと速いですよ。僕らがやったらたぶん、1日かかりそうな気がする」
遠藤はこの技術も独学で覚えた。
わずか1時間で、完璧に作ってみせた。
最後は被害者の髪型を想像しながら、いつものようにカットしていく。
依頼を受けてから製作期間は、およそ1か月。
身元不明男性の「ダミーヘッド」がようやく完成した。

完成から3か月後。
遠藤に製作を依頼した兵庫県警は、さっそく報道機関に発表。
チラシも作り、捜査は今も続けられている。
<遠藤慎也さん>
「実際本当に似てるか似ていないかは分からないですけど、ある程度までは個人的には作れてるとは思うので、(捜査の)一つのツールとして使っていただけるように。それで(被害者の身元が)見つかれば、個人的にはかなりうれしい」
今後は義足など医療の分野にも「特殊メイク」を生かしたいと話す、遠藤。
ハリウッドが生んだその技術が無限の可能性を秘めている。
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