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山あいの小さな集落で、兄弟のように育つ8人の小学生たち。
この冬、ユニークな臨時の先生から教科書にはない大切なものを学びました。
ここは、大阪府の最北端。
兵庫県篠山市と京都府南丹市に挟まれた能勢町の天王地区です。
特別天然記念物の「オオサンショウウオ」も棲む、自然豊かな集落。

創立138年の天王小学校は最も多いときで全校児童60人を超えましたが、今は府内でただ1校、「へき地1級」に指定され児童は8人です。
<児童たちの自己紹介>
「6年生の小谷真由です」
「3年生の小谷和矢です」
「5年生の岡翔馬です」
「2年生の岡桃羽です」
名字は2つだけ。
皆、兄弟か親戚です。
去年12月9日、学校に珍しい人がやってきました。
<桂雀々さん>
「はい、おはよう!こんんちわ、どうも」
落語家の桂雀々さん。
臨時講師として、3回の特別授業を行うのです。

<桂雀々・落語>
「手水まわして、手水…」
大役を担った雀々さん、落語を聞かせるだけでなく子どもたちに小噺を一席づつ
披露してもらおうと考えました。
児童が8人しかいないからこそ、できる試みです。
低学年3人へのお題は、「ん」のつく言葉を言いあって、いえた分だけたこ焼きを食べられる、「ん廻し」というお話。

もとは江戸の古典落語です。
<雀々さんの弟子 桂優々さん・落語>
「あっ、わかった、わかった『きゅうりん』。なんて?『きゅうりん』。それを言うなら「きゅうり」やろ。あ、そうかそうか、『なすびん』ないっちゅうてんのに、『トマトン』、『レタスン』、『キャベツン』」
<児童たち>
「ハハハ…」
<雀々さん>
「笑ってるねんけど、君たちにやってもらわなアカンのよ(笑)。君たちがやるんだよ」
そして高学年の5人には動物園で虎が死んだため、日給1万円で雇われた男が皮をかぶって虎になりすます話です。

<雀々さん>
「虎の歩き方も経験してもらおうと。あまり虎の経験ないと思いますんで」
<雀々さん・児童の虎のマネを見て>
「おー、愛嬌のええ虎やね」
<児童たち>
「むずかしそうです」
「おうちで覚えてきたら、たぶん覚えられると思う」
<雀々さん>
「ちょっとー、何ともいえんわ、ええわ〜」
「のびのび育ってるお顔ね、もう食らいついてますもん」
雀々さんが落語を覚えたのも小学6年の頃。
人生で最も辛かった時期です。
<雀々さん>
「最初は母親が出て行き、その後父親が出て行き、子ども1人の家庭になった。その子どもの寂しさがどこかにあるので、何か楽しいものがないか、沈むのがいやで、何かアピールするものはないかというのが、ひとつの『落語との出会い』だったんですね」
2学期ももうすぐ終わり。
この日は子どもたちが育てた野菜がたっぷり入った、年に1度の「鍋給食」です。
中には天王地区で採れた珍しいものが入っているとか。
<給食係の児童>
「きょうの献立は“オオサンショウウオ”入りみそ鍋」
<児童たち>
「うおー、いい感じ」
もちろん本物ではなく、こんにゃくでした。
これも子どもたちが、畑で育てたものです。
<児童たち>
「おいしいです!」
「めっちゃ熱い」
大阪では今、「教育基本条例」など、子どもを取り巻く環境をめぐって喧々囂々の議論が続いています。
ここも同じ大阪ですが、都会にはない小規模校ならではの教育が実践されているようです。
<天王小学校 加堂恵二校長)
「『少人数指導』とか『開かれた学校づくり』とか『特色ある学校作り』とか言われてますけれど、そういうのは『へき地小規模校』は全て残っている」
しかし、この学び舎も3年後にはなくなります。
閉鎖が決まった「おおさか府民牧場」の跡地に、能勢町内の8つの小中学校を統合する計画が進んでいるからです。
<2学期最後の作文を読む児童>
「人数が少なくても工夫したら楽しいことはいっぱいできるから、この学校はなんとか残してほしいと思う」
<児童たち>
「これで帰ります、さようなら」
大阪の最北端、能勢町の山あいにある天王小学校。
冬休み中も、児童8人の笑い声が響きます。
5年生の翔馬くんと
3年生のさくらちゃんの兄妹。
自宅では100頭近い乳牛を飼っていて、翔馬くんは毎日、牛の糞を溝に落とす作業を手伝っています。
手つきは大人顔負けです。
今度は、重そうな台車を押してきました。
ところで、雀々先生の特別授業、落語の練習は進んでいるのでしょうか?
<兄妹のお母さん>
「(さくらちゃん)はずっと毎日やってたけれど、(翔馬くん)は慌ててきのう覚えて・・」
<落語を練習する翔馬くん>
「あ、この子美味しそうなパン持ってる・・・・・」
「あー全然ダメだ」
本番まで、あと3日です。
今月13日、特別授業も最後の日を迎えました。
<雀々さん>
「発表会でしょ。楽しみなんですよ、出来不出来はどうでもいい、一生懸命さが伝われば」
「ハッピーニューイヤー、どうも」
「(着物きている子どもを見て)きょうは祭りか?(笑)」
着物に着替え、高座に立つ準備は整いました。
まず、高学年の落語披露。
<高学年の児童の落語>
「『この子おいしそうなパンもってる。ウー、ウー、しゃーないな、パンくれや…」
<高学年児童の落語>
「ピンポンパンポン、なになに、今から虎とライオンの猛獣ショーが始まる?え?きいてないで?わ、ライオン運んできた。逃げるところないやん。誰か助けてー。園長さんー。のそのそとライオンは虎に近づいて・・・・ 口を虎の耳に近づけて『心配しなさんなー』『私も1万円で働きにきましたんや』」

次は低学年の「ん廻し」です。
<低学年児童の落語>
「『きゅうりん』。それって『きゅうりやろ』。それじゃ『なすびん』。それもないって。それじゃ『とまとん』、『キャベツン』、『はくさいん』。『レタスン』、『アスパラガスン』。ムリヤリつけても出てこーへんて」
<低学年児童の落語>
「『フンフン』って追ってみいな。『フンフン』。あんたが言うたらあかんやん・・・・・ (雀々 「ガンバレ」)ふつうに言うてみ、ふつうに(雀々 「そうそう」)・・・・うーん。・・・なんでやねん。わあわあわあわあ言うております。タコ焼き『ん廻し』でございました」
<雀々さん>
「よっしゃー!よっしゃ!(拍手)よかった。むちゃくちゃ感動したわ」
小さな学校だからこそ、受けることができた特別授業。

3年後、廃校になってもちょっぴり芽生えた自信とともに、子どもたちの心に残ることでしょう。
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