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■「唯一の『へき地指定』 児童8人 大阪の山の学校」 2012/01/27 放送

 大阪府北部の能勢町で府が唯一「へき地指定」している山の小学校があります。

 3年後、統廃合されることが決まっているんですが、子供たちにとってこの冬は、思い出に残る貴重な体験ができました。




山あいの小さな集落で、兄弟のように育つ8人の小学生たち。

 この冬、ユニークな臨時の先生から教科書にはない大切なものを学びました。

 ここは、大阪府の最北端。

 兵庫県篠山市と京都府南丹市に挟まれた能勢町の天王地区です。

 特別天然記念物の「オオサンショウウオ」も棲む、自然豊かな集落。

 創立138年の天王小学校は最も多いときで全校児童60人を超えましたが、今は府内でただ1校、「へき地1級」に指定され児童は8人です。

 <児童たちの自己紹介>
 「6年生の小谷真由です」
 「3年生の小谷和矢です」
 「5年生の岡翔馬です」
 「2年生の岡桃羽です」

 名字は2つだけ。
 
 皆、兄弟か親戚です。

 去年12月9日、学校に珍しい人がやってきました。

 <桂雀々さん>
 「はい、おはよう!こんんちわ、どうも」

 落語家の桂雀々さん。

 臨時講師として、3回の特別授業を行うのです。

 <桂雀々・落語>
 「手水まわして、手水…」

 大役を担った雀々さん、落語を聞かせるだけでなく子どもたちに小噺を一席づつ
披露してもらおうと考えました。

 児童が8人しかいないからこそ、できる試みです。

 低学年3人へのお題は、「ん」のつく言葉を言いあって、いえた分だけたこ焼きを食べられる、「ん廻し」というお話。

 もとは江戸の古典落語です。

 <雀々さんの弟子 桂優々さん・落語>
 「あっ、わかった、わかった『きゅうりん』。なんて?『きゅうりん』。それを言うなら「きゅうり」やろ。あ、そうかそうか、『なすびん』ないっちゅうてんのに、『トマトン』、『レタスン』、『キャベツン』」

 <児童たち>
 「ハハハ…」

 <雀々さん>
 「笑ってるねんけど、君たちにやってもらわなアカンのよ(笑)。君たちがやるんだよ」

 そして高学年の5人には動物園で虎が死んだため、日給1万円で雇われた男が皮をかぶって虎になりすます話です。

 <雀々さん>
 「虎の歩き方も経験してもらおうと。あまり虎の経験ないと思いますんで」

 <雀々さん・児童の虎のマネを見て>
 「おー、愛嬌のええ虎やね」

 <児童たち>
 「むずかしそうです」
 「おうちで覚えてきたら、たぶん覚えられると思う」

 <雀々さん>
 「ちょっとー、何ともいえんわ、ええわ〜」
 「のびのび育ってるお顔ね、もう食らいついてますもん」

 雀々さんが落語を覚えたのも小学6年の頃。

 人生で最も辛かった時期です。

 <雀々さん>
 「最初は母親が出て行き、その後父親が出て行き、子ども1人の家庭になった。その子どもの寂しさがどこかにあるので、何か楽しいものがないか、沈むのがいやで、何かアピールするものはないかというのが、ひとつの『落語との出会い』だったんですね」


 2学期ももうすぐ終わり。

 この日は子どもたちが育てた野菜がたっぷり入った、年に1度の「鍋給食」です。

 中には天王地区で採れた珍しいものが入っているとか。

 <給食係の児童>
 「きょうの献立は“オオサンショウウオ”入りみそ鍋」
 <児童たち>
 「うおー、いい感じ」

 もちろん本物ではなく、こんにゃくでした。

 これも子どもたちが、畑で育てたものです。

 <児童たち>
 「おいしいです!」
 「めっちゃ熱い」

 大阪では今、「教育基本条例」など、子どもを取り巻く環境をめぐって喧々囂々の議論が続いています。

 ここも同じ大阪ですが、都会にはない小規模校ならではの教育が実践されているようです。

 <天王小学校 加堂恵二校長)
 「『少人数指導』とか『開かれた学校づくり』とか『特色ある学校作り』とか言われてますけれど、そういうのは『へき地小規模校』は全て残っている」

 しかし、この学び舎も3年後にはなくなります。

 閉鎖が決まった「おおさか府民牧場」の跡地に、能勢町内の8つの小中学校を統合する計画が進んでいるからです。

 <2学期最後の作文を読む児童>
 「人数が少なくても工夫したら楽しいことはいっぱいできるから、この学校はなんとか残してほしいと思う」

 <児童たち>
 「これで帰ります、さようなら」


大阪の最北端、能勢町の山あいにある天王小学校。

冬休み中も、児童8人の笑い声が響きます。

 5年生の翔馬くんと

 3年生のさくらちゃんの兄妹。

 自宅では100頭近い乳牛を飼っていて、翔馬くんは毎日、牛の糞を溝に落とす作業を手伝っています。

 手つきは大人顔負けです。

 今度は、重そうな台車を押してきました。

 ところで、雀々先生の特別授業、落語の練習は進んでいるのでしょうか?

 <兄妹のお母さん>
 「(さくらちゃん)はずっと毎日やってたけれど、(翔馬くん)は慌ててきのう覚えて・・」

 <落語を練習する翔馬くん>
 「あ、この子美味しそうなパン持ってる・・・・・」
 「あー全然ダメだ」

 本番まで、あと3日です。 

 今月13日、特別授業も最後の日を迎えました。

 <雀々さん>
 「発表会でしょ。楽しみなんですよ、出来不出来はどうでもいい、一生懸命さが伝われば」
 「ハッピーニューイヤー、どうも」
 「(着物きている子どもを見て)きょうは祭りか?(笑)」

 着物に着替え、高座に立つ準備は整いました。

 まず、高学年の落語披露。

 <高学年の児童の落語>
 「『この子おいしそうなパンもってる。ウー、ウー、しゃーないな、パンくれや…」
 <高学年児童の落語>
 「ピンポンパンポン、なになに、今から虎とライオンの猛獣ショーが始まる?え?きいてないで?わ、ライオン運んできた。逃げるところないやん。誰か助けてー。園長さんー。のそのそとライオンは虎に近づいて・・・・ 口を虎の耳に近づけて『心配しなさんなー』『私も1万円で働きにきましたんや』」

 次は低学年の「ん廻し」です。

 <低学年児童の落語>
 「『きゅうりん』。それって『きゅうりやろ』。それじゃ『なすびん』。それもないって。それじゃ『とまとん』、『キャベツン』、『はくさいん』。『レタスン』、『アスパラガスン』。ムリヤリつけても出てこーへんて」
 <低学年児童の落語>
 「『フンフン』って追ってみいな。『フンフン』。あんたが言うたらあかんやん・・・・・ (雀々 「ガンバレ」)ふつうに言うてみ、ふつうに(雀々 「そうそう」)・・・・うーん。・・・なんでやねん。わあわあわあわあ言うております。タコ焼き『ん廻し』でございました」
 <雀々さん>
 「よっしゃー!よっしゃ!(拍手)よかった。むちゃくちゃ感動したわ」 

 小さな学校だからこそ、受けることができた特別授業。

 3年後、廃校になってもちょっぴり芽生えた自信とともに、子どもたちの心に残ることでしょう。




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