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匠が届ける!冬の食卓を彩る逸品のこと、知っとこ! 2009/12/05

12月になり、めっきり冷え込んできたこの頃、お家で頂く、あったか〜いものが恋しくなる季節です。
そんな冬の食卓にふさわしい、匠の品があります。最高の手仕事が生む鰹節削り器、その究極の薄さとは?
土が違う、と評判の七輪。焼くものすべてを美味しくする訳を教えます。
真心でこしらえる土鍋はこれで何を食べようか、と考えるのが楽しくなること請け合い。
匠が届ける!冬の食卓を彩る逸品のこと、知っとこ!

冬の食卓を彩る逸品のこと、知っとこ!(1)切り出し七輪 「丸和工業」

熱々の魚、を焼くのに最適と言われるのが、懐かしの七輪。
遠赤外線の効果で中までしっかり火が通る七輪の魅力が最近見直されてきているんです。
能登半島の北端、石川県の珠洲市(すずし)にある丸和工業は特に良い七輪を作ると評判の会社。
手がけるのは、一つの土の塊から出来る「切り出し七輪」。何が他の七輪と違うのか、材料の採掘現場へ、社長の脇田さんに案内してもらいました。
長いトンネル。深さは30メートルに及びます。ここで掘り出されるこの土、が七輪の材料。
実に1200万年前の土だと言います。その特徴を顕微鏡で見てみると…プランクトンの無数の穴が。
この穴が断熱の効果を生み、保温に優れ中を熱しても外側が熱くならない七輪になるのです。
そんな珪藻土のブロックは一つ一つ、のみを使っての手作業で行われます。
機械だと土の削りかすが部品に詰まってしまうため、手に頼らざるを得ないんだそう。
周囲を削ったら楔を打って、切り出していきます。「切り出し七輪」の名前の所以です。
切り出すのは一日にひと壁、30年の年月をかけて築いてきた歴史が400メートルのトンネルになったのです。
冬でもTシャツ一枚、それでも湯気が出るほどの重労働。苦労の末切り出された土を、七輪の形にしていきます。
これも手作業、割れないよう慎重に削りだします。こうして形作られた七輪、窯に入れ、焼いていきます。
燃料は、廃材を利用。時間をかけて800度まで窯の温度を上げていきます。
1時間おきに薪を入れなければならないため、窯を炊いている2日間は寝ることができません。
こうして土から焼きあがった七輪、金具を取り付けます。
担当は地元のお母さん。ごく小さな釘を使うこの工程には、女性の手が向いているんだそう。
繊細な手作業と、根気のいる力仕事とで作り出される切り出し七輪。注文を受けるのは社長自ら、デザインも一人で手がけてきました。
1点モノの特別な注文も引き受けます。常に時代の要請に応えようと、新しいデザインも考えます。
例えばこの「ひまわり」は、食卓で使ってもらうため、普通のものより高さを押さえた商品。
ラインナップは30種類以上にのぼります。と、様々な展開で成長を続ける丸和工業ですが、過去には苦しい時代もありました。
生活の変化に伴い、七輪がまったく売れなくなった20年前、膨らむ借金で廃業寸前に。
しかしその頃からメディアがポツポツと取り上げ、その良さが広まりだしました。
お客への感謝の気持ちで切り出される七輪。軒先やアウトドアはもちろん、ぜひ食卓で楽しんで欲しいと脇田さんは言います。
昔七輪を使っていた世代から、はじめて知る若者まで、ひとつの家族で囲んでほしい道具です。

VTRでご紹介した 丸和工業 のお問い合わせ先

切り出し七輪 『丸和工業』

住所 石川県珠洲市正院町平床立野部26
電話 0768-82-5313

冬の食卓を彩る逸品のこと、知っとこ!(2)鰹節削り器 「SHAYO(しゃよう)」

そんな七輪で、この時期はきのこや野菜を焼くのもまた良し。
欠かせないのが、鰹節。家で削る人は少なくなりましたが、味にしても香りにしても削りたてのものが一番。
美味しく削れる、究極の削り器があります。そのお値段、ひとつ3万8千円。
作ったのは新潟県燕市にある会社「SHAYO」。社長の坂西さんが5年前に発売しました。
薄ければ薄いほど風味豊かで舌触りが滑らかになり、おいしさを増すという鰹節。
向こうが透けて見えるほどの薄さ、1ミリの100分の一の厚みしかありません。一般のものと比べるとその大きさ、薄さの違いは明らかです。
かねてから優秀な削り器が少ないことに不満を抱いていた坂西さん。
削り器の本体は大工がさん使うカンナと同じ。最高のカンナ作りの技を使えば出来るはずだと…
薄く削るためのカンナ、その命はもちろん、刃。その刃を作る職人が、この道45年の水野さん。
水野さんの仕事場、与板町(よいたまち)は昔からカンナ作りが盛んな地域。伝統工芸にも指定されています。カンナの刃、鋼(はがね)と呼ばれる刃になる部分と、それを支える地金、からなります。まずは地金だけを炉に入れます。
燃料はコークス、この中で熱していきます。200年以上前の鉄橋を解体した鉄。今の鉄では硬すぎて手で加工するのには向かないそう。
十分熱した地金を取り出してハンマーで叩きます。こうして形を作りながら鍛えてゆくのです。そこに鋼を乗せます。
これを接合するため、再び炉の中へ入れます。950度から1000度位にまで熱して、鋼と地金を付ける工程。
刃のサイズに切断して、更に鍛えていきます。槌を水につけ叩きます。水蒸気を爆発させて、鉄に含まれる不純物を飛ばすためです。
これを焼きいれ、鋼を硬くして刃にするための、一番大事な工程。肝心なのは取り出すタイミング、最適な温度があります。
わずか5度の誤差が命取りになると言います。温度によって変わる鋼の色を見ながら、引き上げる時を見計らいます。
温度が低すぎても高すぎても刃がだめになってしまう焼きいれ、長年の経験だけが頼りです。これを水の中へ。
急激に冷やすことで刃が硬くなります。様々な知恵と経験で作り出される鉋の刃。熟練の技が支える切れ味です。
この刃を台に取り付けるのは別の職人。台打ちは、刃が活かされるかどうかを担う大事な仕事です。
西村さんも40年のキャリアを持つベテラン。作業場には出番を待つ1万5千個の台。最低3年は寝かせます。
穴を開けた台に刃を当てます。最初はまったく出てこない刃。台を徐々に削って刃が出るようにする、仕込みの工程。
活躍するのが、インク。インクがついた刃を台に差し込めば、直接触れる部分にだけインクの色が表れます。
一見真っ直ぐに見えても微妙な凹凸がある刃。手仕事ゆえの歪みがどうしても残ります。
この刃の形に、台の方を合わせて削っていくのです。一つ一つ違うため、機械では出来ない台の仕込み。
使う道具はノミと、足。台をしっかり支えないといけないため、冬でも裸足です。
こうしてインクを付けては削り、を何度も繰り返し、ようやく刃が出るまでになります。続いて行うのが、台ならし。
刃が出る穴の部分と台尻だけを残し、その間をごく薄く削りとります。
見た目にはほとんど分かりませんが、刃が出るところから台尻の間まで、ほんのわずかな隙間があきます。
使い勝手を考えたミクロの手仕事。最後に刃を砥ぎ、台に打ち付ければ出来上がり。
鰹節だけでなく、もちろん普通に木も削れます。その削り華の薄さが完成度を物語ります。機械では真似ができない精度。
薄く削るためにギリギリに調整された刃は一見しただけでは出ていることが分かりません。
一流の鉋作りに欠かせない職人、西村さん。
刃と台、2人の職人が丹精込めた削り器。銘とともに、その誇りが刻まれています。
そんな最高の鰹節で取っただしは、もちろん絶品。そのだしを使った鍋、も楽しみな季節。

VTRでご紹介した SHAYO(しゃよう) のお問い合わせ先

鰹節削り器 『SHAYO(しゃよう)』

住所 新潟県燕市吉田下中野1185
電話 0256-92-7378

冬の食卓を彩る逸品のこと、知っとこ!(3)黒鍋 「土楽」

最後に紹介するのは、黒鍋独特の厚みを持つ、すっぽん鍋として考えられた底の浅い土鍋です。
その黒鍋の生みの親を訪ねて、忍者の里として知られる三重県の伊賀へ。
福森雅武(まさたけ)さん。自宅兼工房の「土楽」(どらく)が創作の拠点。
100年以上前の茅葺の民家が仕事場です。保温性に優れ一旦沸けばわずかの火力でも沸き続ける黒鍋。
気泡が多いため空気を含むので冷めにくく、更に軽く仕上がるという伊賀の土。この粘土が黒鍋を生み出します。
菊練り、粘土を良く練って余分な空気を抜いて、均一にならしていきます。これをろくろで鍋の形にしていきます。
今では型に入れて作るところが多い中、ろくろによる手挽きにこだわる訳があります。型だと圧縮されてしまう粘土。
手で伸ばしながら成型することで、粒子が密にならず軽い鍋に仕上がるのだそう。
伊賀の土を最大限に活かすための考え。一人前に挽けるようになるまでには10年かかると言います。
こうして挽き終えた鍋を干します。天日と室内で都合4日間乾燥させます。その後、細部を削り一度窯に入れ素焼きします。
水分の吸収を防ぐための釉薬をつけていよいよ本焼きへ。1200度近い温度で16時間焼いていき、土を締めます。
こうして出来る黒鍋、独特の深い光沢には、手をかけた職人の思いが込められています。
そんな土楽の職人の一人が福森道歩さん。雅武さんの娘です。父と同じ世界に飛び込んで丸5年、未だ試行錯誤の連続だそう。
唯一にして無二、40年の間伊賀の土と向き合ってきた福森さん、器を作るのは足を使う「けろくろ」です。
足で回した余韻で作っていくのだと言います。大事なのは、土がどうなりたいかと言う声を聞くこと。
粘土が持つ力を引き出して、自然と出来上がる福森さんの器。
その出来栄えゆえに作品、と呼ばれることもありますが、自分の作るものはあくまで品物だと言います。
自由な作風の源は、伊賀の里の自然。散歩がてら目に付いた植物を活けるのも日課です。
目にするものに心を動かされる感性、が大切だと言います。日々の発見から、自ずとものづくりの意欲が生まれます。
この日は、道すがら見つけたドウダンツツジと椿の花を合わせました。この器、東大寺のお水取りの松明から作ったものです。
自由で奔放、器だけにとどまらず、作りたい、と思うものを作ります。
そんな福森家で特に大事にしているのが、食べること。米は毎日必ず、自家製の羽釜で炊き上げます。
豪華な食材を使うわけではありませんが、そのものが本来持つ旨みを大事に調理します。
旨いものを食べないといいものが出来ない、と言います。食事は決まって全員で、親方と職人とが揃って同じものを食べることも大切。
鍋も米も作る、という思いは同じ。田んぼの作業は、時に鍋作りよりも優先されます。
野菜も自家製、家の敷地で常に10種類以上作っています。その成果を頂くのに重宝するのはもちろん、黒鍋。
福森家では、たいがいの料理はこの鍋でまかなえるそう。
調理に使うのは、囲炉裏です。
黒鍋の良さの最大のポイントが、焼くことも出来ること。肉厚で熱に強い黒鍋だからこその利点です。
様々な調理を楽しめる黒鍋、どう使うかは買った人次第。
そして使ううちに鍋は、その家だけの顔になってくると言います。
笑顔が絶えない家族の団欒はきっとおいしい鍋、から生まれるのかもしれません。

VTRでご紹介した 土楽 のお問い合わせ先

黒鍋 「土楽」

住所 三重県伊賀市丸柱1043
電話 0595-44-1012
※見学等は必ず問合せの上ご予約ください。
※福森雅武展が開催されます
12月13日(日)〜23日(水・祝)<12月16日休館>
12時〜18時(最終日17時まで)
於:ギャルリー石塀小路 和田
住所:京都市東山区八坂鳥居前下ル河原町463
電話:075-531-4511