知っとこ!
今週コレ知っとこ!

装いの秋を彩る匠たちのこと知っとこ! 2009/11/07

知っとこ!恒例、匠シリーズ。今回お届けするのは、秋にふさわしい匠たち。
秋といってもこの季節にまつわるキーワードはいろいろ。そんな中、選んだテーマは「装いの秋」。
おしゃれに関心が高まるこの季節に紹介したい匠の技。
女性のヘアスタイルを自由自在に作る魔法のハサミ。
世界のVIPが絶賛する究極のランドリー、その訳とは?
日本一と噂される職人が作る一足は、オンリーワンの履き心地。
装いの秋を彩る匠たちのこと知っとこ!

装いの秋を彩る匠たちのこと知っとこ!(1)理美容鋏製造 シザーズ内山

原宿駅の目の前にあるヘアサロン、「GIRL LOVES BOY」は北海道から沖縄まで、全国からお客さんが集まります。人気の源が、大久保美幸さん。
女性のかわいいヘアを作らせたら右に出るものがいない、との定評がある、カリスマスタイリストなんです。
手放せない大事な道具があります、このはさみ。スイーティーという商品名。
出会ってから使うのはこの1本のみ。すべてのヘアスタイルを作るそう。
これを知ってから他の鋏は使えないと言います。
作ったのは、福井県の東、大野市にあるメーカーです。シザーズ内山。
100種類以上ある鋏、全てが美容師と理容師専用のものです。細かいところはすべて、使い手一人一人に合わせたオーダーメイド。
そんなハサミを作る職人は、会社に4人しかいません。まとめ役は、社長でもある内山さん。
鋏の材料、上等なものはステライトと言う耐久性に優れた合金から作られます。
刃の部分とハンドルとを溶接、ほとんどのハサミメーカーが機械に頼る中、手作業にこだわります。
千差万別の要求に応えないといけないため、機械では出来ないそう。
使う目的、用途に応じて注文は様々です。作る上で、特に大事な工程があるそう。
鋏のノウハウが詰まった、裏すき。鋏の刃、裏側の部分を少しずつ丸くえぐっていきます。
そして更に、丸く削りながら微妙に「ひねり」も加えていきます。例えて言うなら、飛行機のプロペラのような形状。
直線の刃を重ねた一般のハサミ、2枚の刃は平行に開閉します。ところが理美容の鋏は、刃がひねられているため、
開くと、刃先がお互いの刃の向こう側にいきます。
いわば刃がクロスすることになるのです。これを閉じると、刃と刃がぶつかりながら合わさることになり、それが刃先まで伝わる強い力を生みだすのです。
一見しただけではわからない、ミクロのこだわりです。何十年と使い込んだ作業台。微妙なひねりの角度などを叩いて微調整します。
一つ一つ注文が違う、ひねりや曲がりに対応するためです。出来上がった刃はかみそりのような鋭さです。
機械では真似できない職人の仕事。経験で覚えた感覚だけが頼りだと言います。
会社の創業者は父。その卓越した技術で、現代の名工にも選ばれました。
父の代からの確かな技術。理容の世界大会で日本代表が使うハサミも内山製です。
そんな技の結晶が、産毛を1本だけ切り取るための極細ハサミ。シャープペンシルの芯よりも細い仕上がり。
その鋏を売る販売員は、全て内山の工場で鋏作りを体験した人に限られます。
だからこそ例えば、朝と夜で太さが変わる美容師の指を一日何度も計測に行く、という心配りができるのです。
一日に作れる量は10丁。最先端のヘアスタイルを生む魔法の鋏は福井から全国に届けられています。

VTRでご紹介した 理美容鋏製造 シザーズ内山 のお問い合わせ

『理美容鋏製造 シザーズ内山』

住所 福井県大野市中保5−1−5
電話 0779−65−3847
※シザーズ内山の鋏を使っていた原宿のヘアサロン

『GIRL LOVES BOY』

住所 東京都渋谷区神宮前1−19−11
電話 03−3405−0503

装いの秋を彩る匠たちのこと知っとこ!(2)ランドリー 帝国ホテル東京

続いての匠を訪ねて帝国ホテルへ。開業120周年で盛り上がる、言わずと知れた世界中のVIPが集まる老舗です。
ここから始まったサービスも多く、ホテルウエディングやレストランのバイキングも、帝国ホテルが発祥。
そんな帝国ホテルがはじめたものの一つが、ホテルのランドリー。
他の多くのホテルと違うところは、外注をせず全てを自社の社員でまかなっている、ということ。34人いるランドリースタッフの大黒柱が、栗林さん。
この道一筋35年のベテランです。ホテルの利用客だけが受けられるランドリーサービス。
町のクリーニング店と大きく違うところがお客の細かい要求にも応える、ということ、いわばクリーニングのオーダーメイドです。
預かった洗濯物はまず、一つ一つ状態を確認。すべてのポケットに手を入れ、チェックします。
これを細かく仕分け、例えばこれは30度の温度で中性洗剤を使うもの、こちらは40度、アルカリ洗剤で、と実に細かく分類。
そして、ホテルのランドリーならではなのが、その種類の豊富さ。
種類もさることながら、世界中の衣類がやってくるのも帝国ホテルならでは。各国の民族衣装の知識も必要になります。
これまで扱ってきた世界中の衣類が記されたノート。ランドリーができてから100年もの間蓄積してきたノウハウが受け継がれています。
衣類のタグも当然日本語だけではありません。様々な言葉で書かれた文字を読み取るのも仕事のうちです。
細かい仕事を要求される帝国ホテルのランドリー。急ぐ時には3時間で仕上げてもらうことも出来ます。
それとは別に多いのが、パーティーなどでできた染みを抜く仕事。
シミ抜きしたシャツをそのまま着て帰りたいという要望にこたえるため、急ぎながらも染みは完璧に落とさないといけません。
ホテル内でついた染みは必ず落とす、のがスローガンです。
ちなみにこの日スタッフが持ち込んだシミは、ものの1分できれいに落ちました。
ボタンが取れていたら、新しく取り付けて返すのも帝国ホテル流。
とはいえ、同じ種類のボタンがどうしてあるのか?その答えがこちら、常に200種類近く揃えられているボタン。
大概は合うものがあるんだそう。お客さんへの細やかな心遣いの表れです。
そんな帝国のランドリーサービスを受けるために泊まるお客もいるんだとか。
もちろん外国のファンも、例えばキアヌ・リーブスもその一人。
アイロンの重さは5キロ、重労働ですがしっかりとプレスできることから使い続けています。
注文によっては、機械ではなく手で畳みます。こうしてお客さんの注文どおりに、間違いなく仕上げられていきます。
届けられる品に、職人達の思いが添えられます。
こちらの都合にお客をあわせることをしない。100年の間守り続けてきた、帝国ホテルのこだわりです。

VTRでご紹介した ランドリー 帝国ホテル東京 のお問い合わせ

『ランドリー 帝国ホテル東京』

住所 東京都千代田区内幸町1−1−1
電話 03―3504−1111

装いの秋を彩る匠たちのこと知っとこ!(3)手縫い靴 大塚製靴(OTSUKA M−5)

秋の装い、最後は足元を彩る匠。東京、新橋にある大塚製靴は日本で始めて西洋靴を作ったメーカー。
130年以上かけて受け継がれてきた靴作りのノウハウを凝縮した大塚の工房が、M−5です。
既製品やセミオーダーも扱いますが、その中心はビスポークと呼ばれる、フルオーダーです。
自分だけの一足、いつかは欲しい憧れの靴ですがそのお値段は、31万5千円から。
それだけの価値があると言うハンドメイド、はじめはもちろん採寸から。
この道40年の野村さん、時間をかけて10箇所以上計っていきます。
細かく写し取られたオーダーシート、これを元にひとつひとつ型を作成、手作業でアッパーと呼ばれる靴の上になるところも注文通りに作ります。
その靴を形にしていくのが坂井さん、御年75歳、大塚製靴のエースです。
坂井さんが担うのは「底付け」と呼ばれる、靴作りで一番大事なパート。
ビスポークの手縫い靴の底には、これだけのパーツが入ります。これを取りつけながら、目指す靴の形を作っていきます。
吊り込み、と呼ばれる工程。型に、足の裏が直接当たるパーツ、中底、をつけ更にアッパーをかぶせます。
これを釘で革を貼りつけるようにして、型に馴染ませていくのです。
100本の釘で隙間なく吊り込まれた革。こうすることで、型通りのシルエットになるのです。
この状態で1週間以上寝かせます。革が馴染んだら行うのが、すくい縫い。アッパーと中底を縫い付けていく工程です。
錐で革に穴を開け、その穴に両側から針を通していきます。頑丈で長持ちする靴を作るには欠かせない作業です。
75歳の今もその握力は衰えません。中底を補強するコルクを入れます。
このコルクに刻み目を入れ、曲がりやすいようにします。
靴底の皮を何度もしごいて柔らかくするのも履きやすさの追求。木型で底を叩くのも同じ理由からです。
55年試行錯誤してたどり着いたやり方です。最後のパーツ、表底、を取り付ける「出し縫い」の作業。
ステッチが見えるところに来るため、美しさも要求される難しい工程です。
表底を張り付けて余分な部分を切り落とします。
イノシシのたてがみを針の代わりに使います。ちいさな穴に通さないといけない出し縫い、硬くて細いイノシシのたてがみが最適なんだそう。
麻糸にたてがみを結びつけ、ごく小さく開けた穴に通します。
精密さが要求される手仕事、2ミリにひと針、の間隔。機械ではここまでの細かさで縫うことができないんだとか。
熟練の手仕事、日本一の底付け職人、との呼び名を持つ所以です。仕上げに使うのはこて、これでさっき縫った縫い目に一つ一つ刻みを入れていきます。
こうすることで靴の輪郭をはっきりと際立ちます。こうしてできる大塚M−5、ビスポークの手縫い靴。
1足作るのに3日を要します。注文したその人だけのオンリーワンです。
こだわりの出し縫いも美しい仕上がり。機械で縫ったものと比べると、その細かさは一目瞭然です。
すべての工程にこだわったこの靴なら、底の取替えもできるので、ちゃんと使えば一生持つといいます。
日本の靴のパイオニアが先人から受け継ぎ、大事に守ってきた伝統の靴作り。明治5年から続く誇りの技です。
底付け一筋55年の坂井さん、もはや工芸品と呼ぶ人もいる、技の結晶です。
秋の装いを陰で支える匠の品、そこに込めたそれぞれの思いがあります。

VTRでご紹介した 手縫い靴 大塚製靴(OTSUKA M−5) のお問い合わせ

『手縫い靴 大塚製靴(OTSUKA M−5)』

住所 東京都港区新橋4-23-4
電話 03―3459−8521