「葉っぱで町おこし」
11月23日放送分


















農村はいま、危機に瀕している。歯止めのかからない人口の流出。
高齢化と過疎で共同体は崩壊寸前だ。

日本全国の市町村(3229市町村)のうち、65歳以上の高齢者が30%以上いるのは632市町村。そのうち40以上になると77市町村、45%以上となると15市町村に及ぶ。
(2000年国勢調査より)

そんな中、目立った産業もない山間の小さな町がお年寄りでもできる画期的なビジネスで潤っていた!
高齢化する農村が『木の葉ビジネス』で甦る!

大阪・北新地の老舗料亭。
ふぐにアマダイなど旬の食材を使った料理が丁寧に盛り付けられていく。
そこで料理の演出にどうして欠かせないものがあるという。
「なかったら困るもんです。自分でそろえようと思ったら
なかなか大変ですよ」

そう、今回の主役は料理ではなく、『つまもの』といわれる葉っぱ。日本料理に華を添える名脇役だ。
見た目にきれいで、季節感が演出されるため料理がとてもおいしく見えると、客からも評判がいい。
「心が癒される、そういった部分もあると思います」

実はこの『つまもの』で、ある山深い町が儲かっているという。

阿波踊りと鳴門の渦潮で有名な四国・徳島。
中心部から車で走ること1時間。その町はあった。

上勝町。人口わずか2300人。町というより村だ。
65歳以上の高齢者の割合は43%。
コレといった産業もなく、まさに『山と老人の町』。
ところが、このご時世に何やら景気がいいらしい。
「ぼけ防止にもなる、お金もおちる。こんなんがお金になるんかな思って。
おもしろいです」

みんなが儲かっている理由はこの葉っぱ。商品名は『いろどり』。
町内のもみじやなんてん、柿の葉など葉っぱをパック詰めして
全国の料亭やホテルに出荷する。
今や年商2億円!
中にはこの仕事で月に100万円以上も手にしているお年寄りもいるという。

町役場の食堂の奥、その仕掛け人は地味な所にいた。
作業服でパソコンに向かっているのが、
株式会社いろどりの取締役、横石知二さんだ。

横石さんがこの事業を思いついたのは、
15年前、出張先の大阪で食事をしていた時のこと。
「ちょうど隣の席に女の子がいた。
料理にでてくるもみじを見てきれいだとかグラスに浮かべようとか・・・
ピッと直感めいたひらめきがありましたねえ」

しかし、どこにでもある葉っぱが売れるわけがないと
農家の反応は冷ややかだった。

それでもパンフレットを作り、全国1万軒の料亭やホテルへ売り込んだところ、
たくさんの店が欲しいといってきた。
つまり都会では葉っぱに価値があったのだ。

その横石さんのもとで収穫に励むのが、マキコばあちゃん77歳。
およそ200件あるいろどり農家のひとりだ。
「つぎつぎ紅葉して、いそがしいそがし」
日課は家の側にある山からもみじなどを収穫すること。
「自然の恵みというか何もかも美しく感じる。
私達のためにあるような気がします」

そして、マキコばあちゃんの家の庭には樹齢100年を超える、
大きな柿の木がある。
「宝の木です。ご先祖さんの置き土産で宝です」

この木の葉も商品だ。シーズンになると、この木1本で20万円!
抱きつきたくなるのも納得だ。

とった葉っぱは、使いやすいように小さくして、その日の内にパック詰めをする。
「こうやって入れたら飛行機で東京や北海道までいくんですよ。
どんな人がいろどりを使った料理を食べてくれるんかな?」
と、マキコばあちゃんは目を細める。

『葉っぱをパック詰めしただけで金になる』この事業、実は他の多くの農村も手がけてきたが、ほとんどが失敗に終わっている。
そんな中上勝町が成功したのには訳があるのだ。それは、徹底した情報化。
次の日にどの葉っぱをどれだけ取ればいいのか、横石さんは毎日欠かさずパソコンで指示を出している。各いろどり農家にもパソコンが設置されている。
マキコばあちゃんの家のパソコンにもその指示は送られてきた。
葉っぱの値段はすぐに変わる。売り時を逃してはならない。

葉っぱだから軽い。お年寄りでも出荷は簡単だ。こうして収穫された『いろどり』はどんな店で使われているのだろうか?

東京・虎ノ門、超高級料亭の『青柳』。
おばあちゃん達が収穫した『いろどり』は、
翌日にはこの店にも届いていた。
主人の小山裕久さん。
トロに鯛、あおりいか・・・最高の素材を使ったお刺身に、
丁寧な仕事で『いろどり』を添えていく。
まな板に葉っぱをちょっとのせるだけで、突然、「秋」が来る。
この八寸では料理が見えなくなるほどの大胆な使い方。

実は『いろどり』の商品化に際し、
料理人の立場からアドバイスをしていたのがこの小山さんだった。
「季節をのせているが、それは料理人のお客さんへの愛情の表れ。
ありがたいし、わかりやすいメッセージだからいいのではと
横石さんに話しました。
都会化していくから、ますます増えるでしょう。」

おばあちゃんたちの『いろどり』は、都会の真ん中で秋を演出していた。

再び上勝町のマキコばあちゃん。
パソコンでは東京など、どこの市場でいくらで売れたかが次の日にはわかる。
町内での順位も知ることができ、競争心がくすぐられる。

町おこしに成功した上勝町には、ヒントを得ようと連日視察団がやってくる。
この日はなぜかメキシコからもやってきた。

横石さんは語る。
「おばあちゃんの笑顔が自分にとっては最高の生き甲斐。
田舎だからマイナスではない。
田舎だからこそプラスなんですね。
条件不利地域ではなく超条件有利地域。
発想、着眼力、アイデアをどう活かしていくかを考えれば
面白いと思いますよ。」

『サタモニ!』11月23日OA分 「葉っぱがお金に?」  編集後記

今回伺った上勝町、車で山道をクネクネ走り、それはそれは山深いところにある小さな町でした。
 そしてその山深い町で取材させていただいたのが『いろどり』ビジネス。
"木の葉"というもともとあるものを活用し、お年寄りにでもできる軽作業で、なおかつ十分な程の現金収入がある。
うますぎる話だなと思いつつ取材を始めましたが、これが本当にうますぎるぐらいに良くできたビジネスでした。
そう一番感じたのは話を聞いたおばあちゃん達の表情からでした。
なんとも皆さんいい表情をしているのです。
VTRにも出て来た菖蒲増喜子さん77歳(マキコばあちゃん)は「あと1日が1時間長かったら何をしますか」という私の問いに対して微笑んで「もっと働きたい」と答えました。何とも前向きな言葉でした。
農村ならではのものを活用する。逆転の発想でビジネスを成功させた上勝町のおばあちゃん達は本当にいきいきとしていました。
そのいきいきと生活されている様子が、見ていただいた方に少しでも伝わっていれば…と思っております。
担当ディレクター 松井宏文


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