日本での意味はアダルト・オリエンティッド・ロック、
つまり、大人向けの品のよいロック、ということになり
ますが、アメリカでA.O.R.と言うと、アルバム・
オリエンティッド・ロックの略で、ツェッペリンやエア
ロスミスなど、アルバムで勝負しているロックのことに
なってしまうのです。
つまり、日本のA.O.R.は日本でつくられた言い
方なので、アメリカでは通用しません。正式にはアダル
トコンテンポラリー、A.C.と呼ばれているのです。
でも、どうして日本で特別な呼び方がされるようになっ
たのか?答えはカンタン、それだけはやっていたからで
す。
いろいろと説はありますが、A.O.R.は70年代
中期、だいたい76年頃に誕生したというのが有力です。
60年代〜70年代のロック・カルチャーの中で育った
世代が大人になるにつれ、そんな人たちが楽しめる音楽
としてうまれてきたのです。そのサウンドは、都会的で
洗練されたポップ感を持つ、いわゆる大人向けの音で、
ロックと名は付いていますが、実はソフトで洒落たもの
だったのです。だから、A.O.R.と呼ばれるまでは、
シティーミュージックとか、ソフト&メロウ、などと言
われていたのです。
それではA.O.R.の名曲をいくつか聴いてみまし
ょう。
♪ボズ・スキャッグス/ロウダウン('76年)
AOR=ボズと言われるほど、代名詞的な存在。この
76年リリース“シルクディグリーズ”、そしてマイケ
ルフランクスの“アート・オブ・ティー”、ネッド・ド
ヒニーの“ハード・キャンディー”という3タイトルは、
AOR必須アイテムとも言われてます。
♪ボビー・コールドウェル
/What You Won't Do For Love('78年)
特に日本で、ボズと人気を2分していたMr.AOR。
この曲をはじめとして、数々の名曲を数多くのアーチスト
に提供しており、アメリカではソングライターとして有名
だった。アルバムは日本の方がだいぶ先にリリースされた
ということで、いかに日本でうけていたかというのがわか
りますな。
このように何ともおしゃれな音楽をAORと呼ぶんです
な。そして、このAORは大ブレイク、次々とこのジャン
ルからヒットが出るのでした。で、このAORのブームが
もたらしたもの、というのがいくつかあります。
(1)1976年以降、アルバムの売れ行きが飛躍的に増
大!!
これは、大人の音楽と言われるだけあって、買い手の中
心が小銭に不自由しない大人であったため。そしてこの年
からプラチナディスク(100万枚以上のセールス)が登
場したのだ。(ちなみに第一号はイーグルスの“グレイテ
スト・ヒッツ”)
(2)スタジオ系ミュージシャン大忙し、笑いがとまりま
せん!!
AORというのは、基本的にロック、ジャズ、R&Bな
ど、さまざまなテイストをうまくブレンドした洗練された
音楽です。ゆえに、レコーディングにかかわる、ミュージ
シャンにも高度なテクニックが要求されます。だから、ジ
ャズやフュージョン系のハイレベルな職人的ミュージシャ
ンはひっぱりだこだったのです。
そんな中から、表舞台に出てくる有名アーチストも数々
いました。(TOTO、プレイヤーなどバンドも出た。)
あげくのはてには、参加ミュージシャンのクレジットを見
て、レコードを買う、という不思議な現象まで起こること
になる。
♪マイケル・フランクス
/ANTONIO’S SONG('77年)
ソフト&メロウの代表格。ジャズとボサノバをうまくブ
レンドしたおしゃれを極めた名作“スリーピング・ジプシ
ー”より。この曲には、ジョー・サンプル、ラリー・カー
ルトンなどクルセイダーズ一派が参加、超一級の演奏も聴
きどころです。
そしてAORは80年にピークを迎えます。日本でもフ
ァッション的に大ブーム。デートのBGM、ドライブには
必須アイテム。大学生やOLを中心に大ヒット。“なんと
なくクリスタル”という映画では大々的にAORの曲がフ
ィーチャーされ、クリスタル族などと言う言葉まで出現す
る、社会現象にまで発展したのです。人それぞれがお気に
入りの曲を集めてオリジナル・カセットをつくる、なんて
のもこの頃のはやりでしたな。
とまぁ、こんな具合にアメリカ、そして日本でみんなが
熱中したAORの大ブーム。でも、82年ごろから一気に
衰退していくのでした。その理由として、80年代に入っ
てMTVが出現、音楽の聴き方、楽しみ方が根本的に変化
してきたことがある。でも、それより、あまりにもファッ
ション化したあげく、AORのクオリティーが下がったた
め、というのが最大の理由でしょう。
「AOR=洗練された高い演奏力=おしゃれなアイテム」
という方程式だけにとらわれ、音楽の持つ、大切な部分が
だんだん欠けていき、単なる商品になり下がってしまった
駄作が増え続けた結果です。これは残念ですね。
来週からはいよいよ80年代に突入です。まずはブリテ
ィッシュ・インベイジョンのお話から。
(次回は「ブリティッシュ・インベイジョン」)
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