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第5章 70年代のアメリカン・ロック

(その1)シンガー・ソングライター
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 今ではだれでも知っている、この呼び名。要するに、
自分で創った曲を自分で演奏もする人のことです。その
まんまです。もちろん、このスタイルで音楽を創ってい
た人はこれ以前にも多く存在します。でも、こういうス
タイルをシンガー・ソングライターと呼ぶようになった
のは、70年代以降だったのです。

 そして、70年代初頭には、すばらしいシンガー・ソ
ングライターがいっぱい出てきて、いわゆるブームにま
でなっていったのでした。それでは、なぜ、シンガーソ
ングライターが出現し、人気を得たのか、そこらへんの
時代背景を調べてみましょう。

 まずは社会的な背景。70年代に入ってもなお、ヴェ
トナム戦争は泥沼状態。人権問題に失業の問題。これら
に反発するかのようにうまれたヒッピー達による社会改
革や自然保護の運動。もちろんテーマは“ラブ&ピース”
でも、ここから新たに加わってきたドラッグの問題。ま
さに、70年代はそんな中でスタートしたのです。そし
て唯一、メッセージとして送り続けられた音楽すらも、
現実味が無くなっていくのです。結局、みんなでワーワ
ー言うものの、何ひとつクリアーになっていない。大き
なフェスティバルも、人々が1つのテーマに集結する、
という充実感はあるが、単に“お祭り”となって終わっ
てしまったり。そんな状況をなげく声が高まり、ついに
は、一種のあきらめ的なものが、社会の空気の中に流れ
出していたのです。

 その空気においうちをかけるように、ジミ・ヘンドリ
クス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリスンなど、ロ
ック界のスーパースター達が次々と死亡。ビートルズも
解散。音楽、そして人々は必然的に変化しなければなら
ない状況におちいりました。そしてそこからうまれた新
しい音楽こそが、シンガーソングライターのスタイルだ
ったのです。そしてその歴史に名を残した最初のアーチ
ストが

♪ジェイムス・テイラー/ファイアー&レイン('70年)

 ボストン生まれのフォーク・シンガー。グリニッジ・
ヴィレッジで活動した後、イギリスへ渡り、アップルレ
コードからプロデビューするも、不発に終わり、帰国後
の‘70年に“スウィート・ベイビー・ジェイムス”と
いうシンガーソングライターの時代を代表する名作を発
表。

 彼自身の体験談をもとに思慮深く歌われた曲は全米で
大ヒットする。そして、彼のピアニストを務めていたこ
とで有名なこの人も名作をひっさげて登場しました。

♪キャロル・キング/It's Too Late('71年)

 プロの作曲家として活動した後、’71年に“つづれ
おり”でデビュー。この作品はシンガーソングライター
というものを頂点までおし上げた名作中の名作。もちろ
ん全米でNO.1に。

 それだけではなく、ビルボードのアルバムチャートに
302週間(およそ3年間)チャートインという大記録
をうちたてた。このキャロル・キングの大ヒットにより、
シンガーソングライターはブームとなり、地道に活動し
ていたアーチスト達も脚光をあびるようになる。ニール
・ヤング、ジョニ・ミッチェル、カーリー・サイモン、
ニルソン、ランディー・ニューマン・・・(イギリス勢
では、エルトン ジョン、ポール マッカートニー、ジョ
ン レノンなど・・・)

    +    +    +

 それでは、シンガーソングライターの特長などをまと
めましょう。

 まず何といってもポイントは歌詞であります。スタン
スはあくまでも自分中心。身辺で起こった事や、個人的
な気持ちなどをまるで日記のように歌にする。つまり、
自己申告的立場の詞が中心になっておりました。言葉づ
かいも流行のものを多用するのではなく、あくまでも自
分流の言いまわしでせつせつと歌うのが特長であります。

 あれっ?自己の内面を自作自演で表現する、というの
は、先にボブ・ディランが作ったもんじゃあないのんけ
?と思う人もいるでしょう。その通りです。このスタイ
ルはすでにボブ・ディランがフォーク・ロックをやりだ
した頃に確立させているのです。

 では何がちがうのか。それはスタンスです。いわゆる
フォークロックの自己的な歌詞は“うったえるもの”が
ふくまれていましたが、シンガーソングライター達がつ
くる歌詞は自己の体験が源にあり、それを個人的な視点
で勝手に申告する、というものであります。

 また、シンガーソングライター達のサウンドは、カン
トリー・フレイバーが入っていることが多く、そのニュ
アンスはどちらかというとソフトな感じになっているの
もフォークロックとは少々ちがう点です。ここらへんも
“訴える”のではなく、“申告する”というスタンスの
ちがいから来てるような気がします。このソフトで繊細
なサウンドは、時代の空虚なすき間を静かに埋め、人々
の疲れた心を癒すという大きな役割を果たしたのです。

 もう1つ、自作自演ですから、本人以外のメンバーは
ゆーてみたら、だれでもOKなわけです。ゆえに、バッ
ク・ミュージシャン、スタジオミュージシャンというた
ぐいの人たちがいっぱい出て来たのもちょうどこの頃で
す。

 来週はカントリーがベースになっている、カントリー
・ロックのお話だ。

(次回は「カントリー・ロック」)



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