ルーツ:
その音楽性などから、あたかも突然出てきたムーヴメ
ントのように思われがちだが、そのルーツは60年代、
しかもアメリカにあると言われている。
当時アメリカ各地に無数に存在していたサイケデリッ
ク系のロック・バンドのことを“ガレージ・パンク”と
呼んでいたそうな。彼らは粗末な機材、おせじでも上手
いとはいえないテクニックしか持っていなかったが、だ
からこそナマナマしいメッセージとして、ひとつの世界
を作っていたのだ。
そしてもう1つのルーツ、それは、ルー・リードとイ
ギー・ポップの活動であります。ルー・リードは現存す
るロックに対して、もっとこうするべきだ、実はこうな
んだということを赤裸々に描き、イギー・ポップもまた、
同じようなことをよりバイオレンス的なパフォーマンス
で見せていた。この2人の活動は後のパンク・ロックに
対して多大な影響をあたえることになった。
誕生:
パンク=ロンドンと思われがちだが、実はその前にニ
ューヨーク(NY)で誕生していたのだ。NYのクラブ
・シーンは当時ルー・リードやイギー・ポップのように
ストレートな音楽を求める全米各地の若者の聖地となっ
ていたのだ。その中からパティ・スミス、ジョニー・サ
ンダース、トーキング・ヘッズ、ブロンディ等が次々と
デビュー。このNYのクラブシーンの動きにストレート
に敏感に反応したのが、イギリスの若者だったのだ。
ただ、この時点では音楽的には統一感はなく、いわゆ
るパンクサウンドというものはまだ完成されていない。
背景:
では、なぜNYで起こったものがイギリスに渡り、つ
いにはムーヴメントとして成立したのか。そこにはイギ
リスの音楽的、社会的な背景がある。
まず、音楽的には60年代ロックシーンをつくってき
たブリティッシュ・ロックはもはや輸出産業と化し、大
物ミュージシャンたちはマネージャーや弁護士に守られ
ながら、スケジュールをこなし、レコーディング、コン
サートを消化するだけになっていた。もはやイギリスの
若者たちに何だかの影響を与えるようなエネルギーを失
っていたのだ。
おまけにベイ・シティ・ローラーズのようなアイドル
・グループの人気がますますイラ立たせていたのだ。一
方、社会的にもあいかわらず慢性的な不況からくる失業
問題、未来が見えないというフラストレーションはたま
るだけたまっていた。
75年頃のイギリスの現実は、爆発寸前の状態であっ
たのだ。そしてその起爆剤となったのが、この人たち。
◆セックス・ピストルズ
NYから飛び火したパンク・ロック。ロンドンのクラ
ブ・シーンで一番注目を集めていたのが、このセックス
・ピストルズです。
最初にレコード契約したのはEMI。76年11月シ
ングルデビュー。曲は「アナーキー・イン・ザ・UK」。
当然放送禁止になる。
彼らの姿勢は、次々と若者の心をつかみ、世界的にも
悪名はとどろくことになる。コンサートでの喧嘩、破壊、
インタビューでの発言、全てにおいてそのアナーキーさ
がうけたのだ。また、そのファッションも若者達に影響
を与えた。やぶれた服に安全ピン、カミソリをアクセサ
リーにし、とにかく強烈だった。
彼らのパフォーマンスはまさに“怒り”そのままであ
ったのだ。まさに存在が社会問題になったあげく、EM
Iは彼らとの契約を破棄、次に契約したA&Mも他のア
ーティストの反対にあい、不成立となっている。その後、
ヴァージン・レコードと契約、「ゴッド・セイブ・ザ・
クイーン」を発表。その社会問題をますます大きくする。
そして77年10月、デビューアルバムにしてラスト
アルバムになってしまう「勝手にしやがれ」をリリース。
イギリスではもちろん大ベスト・セラー。そしてアメリ
カ進出目前にして突然解散。
この1977年前後のイギリスはまさにパンク一色、
ビートルズ以来の一大ムーヴメントになっていた。ピス
トルズ以外にも次々とやんちゃなバンドがデビューして
いった。中でもストラングラーズ、ダムド、ジャム、ク
ラッシュ、そしてピストルズ!この5つが5大パンク・
バンドと言われていた。
◆クラッシュ
セックス・ピストルズ亡き後のパンク・リーダー格の
グループ。77年、CBSより「白い暴動」でデビュー。
その中の1曲、「1977」では、77年にはエルヴィ
スも、ビートルズも、ストーンズもいらない !! と歌わ
れ、それまでの音楽そのものまでも否定している。
◆ストラングラーズ
彼らもがんばってパンク・ムーヴメントをもりあげて
いた。ヒット曲は「ノー・モア・ヒーローズ」。確固た
る地位は築いていたが、他のパンクバンドとは少しちが
うサウンドを持っていた(オルガン)。
この他にもパンクの流れをくんでデビューしたグルー
プは数知れず存在。中でもトム・ロビンソン・バンドは、
パンクの持つ“怒り”の部分ではなく、社会的な弱者(
労働者、ホモ、人種問題)を大切にするアプローチで人
気を得る。本人もホモセクシャルであることを公言して
活動していた。
パンクからの少しずつの変化、これが次のニュー・ウ
ェイヴへと流れていく。
パンク=怒りなのだ。
(次回は「ニュー・ウェイヴ」)
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