Story−木里子と陽春の物語−
出逢い
 麻生木里子(小田茜)は明るく素直な小学校の先生。内科医の父・周作(篠田三郎)と祖母の菊乃(高田敏江)と東京郊外の高級マンションで暮らしていた。ある日、学校に遅刻しそうになった木里子は、自転車で転び、通りがかった修行僧・陽春(猪野学)に助けられる。それは赤い糸で結ばれた2人の運命の出会いだった。
発病
 その後、何度か偶然の出会いが重なり、木里子は陽春に次第に惹かれてゆく。が、そんな木里子の身体に白血病という病魔が忍び寄っていた。やがて木里子は父・周作が勤める病院に入院する。娘に病名を告げられず、苦悩する周作。一方、陽春が仕える宗達老師(川津祐介)も呼吸器疾患をわずらい入院したことから、陽春は木里子の病室を見舞いに訪れる。お互いに思いを寄せるふたり。この時、陽春からプレゼントされたイルカのモビールは木里子の心の支えとなった。
決心
 しかし、木里子の病状は次第に悪くなってゆき、ついに骨髄移植を考えなければならない状態に。移植手術に大きな不安を抱き、迷う木里子。そんな木里子を見た陽春は木里子と一緒に病気に向かおうと、自らがドナーになることを申し出る。
「もし検査の結果が一致しなくても骨髄バンクに登録しようと思います。木里子さんが骨髄バンクに助けられるなら、私がそれをお返しする。それは木里子さんのドナーになることと同じだと思います」。そんな陽春に支えられ、木里子は「もう逃げない」と骨髄移植を決意する。
奇跡
 万にひとつ可能性に賭けたふたりに奇跡が起こった。陽春の白血球の型(HLA)と木里子のそれが一致したのだ。わずか数万人に1人という確率。木里子の主治医・白井(石倉三郎)と周作は手を取り合って喜ぶ。こうして木里子は陽春の骨髄を移植することで、白血病を克服することができた。

別れ
 しかし、木里子が退院した時、陽春は一言も言わず、修行を続けるために遠い僧堂へと去ってしまっていた。一緒にイルカを見に行くという約束を残して・・・。呆然とする木里子に宗達は言う。
「男と女の愛は時が経てば色褪せる。泥にまみれることさえある。だが春さんは、木里子さんに命という大きな愛を置いていったんじゃ。その愛は色褪せることもない。泥にまみれることもない。木里子さんの宝物じゃ」と。
泣きじゃくる木里子を抱きしめた周作は優しく聞いた。「陽春さんは、お前に何か約束したのか?」「約束って?」「結婚するとか…」「しないよ。ただ、一緒にイルカを、見に行くって約束したんだよ」「そうか…木里子、いい恋愛をしたじゃないか」

恋敵
 それから1ヶ月。木里子は5年2組の担任として、小学校に復帰することになった。陽春への深い想いを募らせる木里子は、陽春を僧堂へ訪ねるが、修行中の陽春に言葉をかけることもできない。傷心の木里子を慰めてくれたのは、「かたつむり」の忍(尾崎磨基)だった。
そんな木里子に聖ヨハネ病院の新任医師・佐竹(林泰文)が一目ぼれする。陽春の存在を知った佐竹は龍雲寺に戻っていた陽春を訪ね、率直に二人の関係を問いかけ、木里子にプロポーズすると宣言する。

再会
 ついに陽春と二人だけで話をする機会を得た木里子。が、修行の決意を固めている陽春は二人でイルカを見に行く約束しかできなかった。
そんな時、木里子の白血病が再発した。しかも急性転化というめったにないケースで。白井と周作は再移植の検討をするが、二度目の移植を木里子は拒絶する。「陽春さんに迷惑をかけてまで生きたいとは思わない」という木里子の意思は固く、ひそかに陽春にドナーになることを頼みに行った周作に怒りをあらわにする。

再移植
 そんな木里子に陽春は「いつも云っていますように、わたしはそんな柔な男ではありません。わたしは自分の骨髄液が続く限り、木里子さんに与え続ける。それがわたしの愛だと思っています」と告げ、ドナーに負担をかけない方法での移植を木里子は受け入れる。陽春からの二度目の骨髄移植で木里子は思った以上に早く回復した。木里子のため、ついに還俗の決意を固めた陽春。しかし、宗達は陽春に龍雲寺の副住職になることを勧める。
そして、ある晩秋の晴れた日、陽春とともにイルカを見る木里子の姿があった。

 が、陽春の雲水仲間の妹で中学生の頃から陽春を慕う桃林寺の娘・みつるが現れたことから、波乱がはじまる・・・。

→PureLoveIII