篠田三郎さんインタビュー


麻生周作役の篠田三郎さん。理想の医者であり優しい父親という一方、パート3では戸ノ山さんの空想に巻き込まれたり、コミカルなシーンも。ナレーションも担当されている篠田さんにお伺いしました。

―さりげなく眼鏡を変えられましたね?
「気づいた?持ち道具さんしか気づいてないと思ったのに…でもちゃんとつながりは考えてます」
(眼鏡は篠田さんの自前です。どこで変わっているかはお楽しみに)

―パート3まで麻生周作を演じて来られて、いかがでしたか?
「パート1、2と木里子の病気のこともあり、かなり緊迫感がありました。でも、3シリーズも続くと、役者もスタッフもファミリーになって来て、楽しい仕事になってきましたね。そういう雰囲気は画面からも出ていると思います。最近、『周作先生』と呼ばれることがあって。役名で呼ばれるのはうれしいですね」

―木里子を演じる小田さんと娘さんが似ていらっしゃるそうですね。
「そう、それは小田さんにもお話しましたが、ちょっと雰囲気が似ているんですよ。娘の方が背は高いけど年齢も同じくらいですし」

―周作先生、今回は戸ノ山(楠見薫)さんの空想の世界にまで巻き込まれますよね。
「ああいうシーンは楽しいですよ。本当は一緒になってもっと楽しい芝居にしたいと思うんですが、やりすぎると、ね。残念だけどずいぶん押えてやってます(笑)」

―日常のシーンも結構気に入っていらっしゃるとか。
「母親(高田敏江さん)との将棋のシーンなんか特に好きでね。それに母親から『あたしがいなくなったら…』(第14話)というふとした言葉に改めて老いを感じるシーンとか。日常生活のよさや人生の機微がそれとなく織り込まれているんです」。

―若い出演者たちの中には篠田さんとこれまでに共演された方も多いですよね。
久しぶりに共演されていかがでした?

「『命賭けて〜あなたはわが子を守れるか!?』(薬物中毒の娘を更正させる父親役)で共演したみつる役の楊原京子ちゃんも21歳になって。女優根性が出てきましたね。彼女が演じるみつるはすごく魅力的な女性だと思いますよ」。

―修行僧・伸隆役の辻内将人さんとは『命燃えて』(実話をもとに脳腫瘍で亡くなった18歳少年と家族を描く)で親子役でした。
「修行にも行って、立ち居振る舞いがお坊さんらしくなってきてますよ。陽春役の猪野君とはまた違うけど、ああいうがっちりした感じのお坊さんっていかにもいそうでしょ」

―シリーズを通じてナレーションも担当されていますね。心の声や禅寺のしきたりの解説など、篠田さんならではの低音の魅力があります。
「正直、勉強させていただきました。自分の中では少しは出来ているかな、と思っていても放送を見てみると早口で、もっとゆっくり読めばよかったな、と思うことも。でも、パート1で亡くなった翔君の賽の河原のナレーションは自分でも思い入れがあってのめり込めた気がします」

―ご自身にとって思い入れのある役とは?
「自分が愛せる役に出会えた時は幸せだと思います。この年齢になって経験を積んできたからこそ、今、演じられるという気がする。激しい役もやってみたいし。自分なりにいいシーンをひとつでも多く積み重ねていきたい。麻生周作もその中で思い入れのある役ですね」。

―これまで演じて来られて、大切だと思われることは?
「人とのつながりが大事だという思いは年齢とともに強く感じますね。自分を生かしてくれるのは他人だから。いつも感謝を忘れずにいたい。でも、まず自分が幸せな状態でないと、人にも優しくできない。人が喜んでいる時に一緒に心から喜べる人間になりたいですよね。本当にそうなれたらいいんですが…」

―最後にご自分が「ピュア」だと感じる瞬間をお聞かせください。
「うーん、犬と散歩してる時…新幹線でCDを聞いている時とか…?お芝居、特に舞台をやっている時でしょうか。これまでにお世話になった恩師の方々をひとりひとり思い浮かべて、舞台を見守ってもらうんです。そんな時かな」


「思いがあると画面に必ず出る。思いが深ければ深いほど正直に画面に出ますから…」という篠田さん。楽屋でもモニターをチェックして小田さん、猪野さんら若い出演者に「今のシーン良かったよ」と声をかけたり、ドラマを離れてもみんなを見守るお父さん役≠ニお見受けしました。