『ピュア・ラブIII』監督の解説


第31話
先週あたりから木里子の教え子たちの中で、大紀、おさむ、元の3人組の活躍が目立ってきました。今週も彼らの活躍は見逃せません。
子供座談会を巡って、足がしびれるとか、おかゆがまずいとか言って参加をいやがる元のぐずりっぷり。腕白坊主っぷりに磨きをかけながらも、木里子のために級友たちをあの手、この手で座談会へ行かせようとする大紀。マイペースのおさむ。それぞれがそれぞれの個性を発揮して笑いを誘い、感動を与えてくれます。
この3人組をはじめ、子供たちが出ているシーンをよく見ていただければ、彼らがけっこうきめ細かいお芝居をしているのが発見できると思います。子供たちのそういう演技をうまく指導してくれているのが、ADさんたちです。ディレクターが基本的な動きを決めるとADさんたちが子供たち全員(6年2組の場合は22名)ひとりひとりに動きの意味を説明し、具体的な動作を指示し、そのための小道具を揃えます。
教室の中で座って授業を受けているシーンはそれほどでもないのですが、休憩時間や始業前、放課後のシーンだと22名全員に別々の動きを作り、なおかつ、お芝居のタイミングにぴったり合わせなければいけないので、大変です。長いシーンの場合だと、昼食休憩の間に子供たちを集めて練習したりすることも珍しくありません。子役たちの名演技の陰にADありです。

第32話
この回のメインは卒業式前日の予行練習シーンです。卒業式当日は来賓が大勢来たりスケジュールの制約があるので、木里子が子供たちの一口コメントの練習の後、子供たちに別れの言葉を贈るという設定です。予行練習だったのに、それぞれの一口コメントが心を打たれるものであるために、どんどん盛り上がっていき、木里子も・・・という段取りなのですが、感動的なよいシーンに仕上がっていると思います。
このシーンの裏話をひとつ。木里子役の小田茜さんはいつもセリフをしっかりと覚えてきて、演技プランもちゃんと出来上がっているのでテストから全力投球です。重要なシーンには特にこの傾向があります。ということは、あまりテストを繰り返しすぎると疲れてしまうことになるのです。ところが子役達は何回かテストを積み上げて行かなければ、演技が決まっていきません。技術スタッフもテストを積み重ねて俳優さんの動きをつかみ、タイミングを合わせていきます。それによってNGを出さないより良い収録体制を作り上げていくのです。重要なシーンであればあるほど、万全の準備を整えて本番に臨みたいと思っています。俳優さんの生理と演技の完成度、そして技術スタッフの準備度。この3つの折り合い点をどこにするのかということが、難しいところなのです。
このシーンの収録の時は、技術スタッフにひんしゅくものの暴挙に出てしまいました。通常はカメラを通さずに俳優さんの動きを決めるドライ・リハーサル、カメラを通して行うカメラリハーサル、本番態勢で行うテストのランスルー、そして本番という段取りで収録は進みます。難しいシーンだと本番前にもう一度テストを重ねる場合もあります。ところがこのシーンの場合、カメラリハーサルの段階で、しかも、リハーサルの途中からVTRを回してしまいました。というのは、カメラリハーサルの途中から自然に感情が高まってきたのでしょうか、小田さんの目がうるみ始め、すごく良い表情になってきたのです。そこで即座にVTRをまわし始め、スタジオ内のスタッフに無線マイクでその旨を告げました。全員ビックリしたことと思います。普段ならカメラリハーサル中は各パートともタイミングやポジションを探るためにサイズを動かしてみたり、マイクを画面に出してみたり、光量を変えてみたりしながら進めるものなのです。それがいきなり途中から「VTR回った!本番!」なのですから。
しかし、わがスタッフは機敏にその事態に対応してくれましhた。スクランブル発進にもかかわらず、それぞれのパートが的確に自分の仕事をやり遂げてくれました。そのおかげで木里子の素晴らしい演技をVTRに収めることが出来たのです。もちろん、子役たちの演技はもう1回、2回と本番を繰り返して収録し、編集の時はいわゆる「良いところ使い」をして出来上がったのが、このシーンです。

第33話
この回から6年2組の子供たちは中学生になります。裕太の学生服、制帽姿がりりしく登場します。また中学生になった裕太に対してみせる宗達老師の厳しさと優しさも見どころです。
木里子にとって気になる存在のみつるが陽春への思いを爆発させます。みつるの行動が周囲にさまざまの影響を与えていき、ドラマの後半へ向かって一つずつ布石が打たれていきます。

第34話
陽春への思いを抑えることが出来ないみつるが木里子と直接話をするために麻生家に乗り込んできます。このみつるの行動が木里子と麻生家の人々の心に波紋を投げかけ、ついに木里子と菊乃との喧嘩にまで発展していくのです。みつるの捨て身の行動とそれをどう受け止めるか、思い悩む木里子の心の揺れ動きがこの回のテーマです。
それから吉住家ですが、真がちずるに隠し続けてきた秘密がとうとうバレてしまいます。このシーンの二人の演技も見ものです。

第35話
この回の見どころは何といっても、木里子とみつるの対決です。木里子はみつると逢う時まで、みつるにどんな態度をとるべきか心を決めることが出来ません。白血病の治療によって子供を産めない自分の身体のことを思うと、陽春との将来を自信を持って主張することにためらってしまいます。そしてとうとうその時を向かえるのです。二人の対決は緊迫感あふれるものになりました。その二人の演技と対決の結末は見てのお楽しみです。
ところがこの回の見どころは木里子とみつるの対決では終わらないのです。その後に用意されている木里子と陽春の厳しく悲しい対面。そして二人を巡る事態の急転と、息もつかせぬ展開を見せます。