作者から−あなたへ−


「ピュア・ラブ」を愛してくださったあなたへ。
作者から

長い時間をかけて「ピュア・ラブ」を見ていただきましたことを心から感謝申し上げます。
またホームページにたくさんのお声をお寄せいただきまして、ありがとうございました。
そのお一人お一人のお声を読ませていただいておりましたため、ご挨拶が遅くなりましたことをお詫びいたします。
私はパソコンを持っておりませんので、局から送られてくるプリントアウトされた文字を読ませていただくため、多少の時間のずれがあって、まだ目を通すことの出来ない部分が残されていますが、本当にたくさんのお声でした。
そのお声の暖かさに胸熱くなる思い、その厳しいご批評に衿正す想い、その励ましのお声に心奮い立つ想い、その心冷たさに胸凍る想い、そして人を思いやるその心優しさに、涙あふれる想いが致しました。
私はその声の一つ一つを忘れません。
本当にありがとうございました。

遡りますが、最終回放送の前日、20日付けの皆さまのお声を読ませていただきました時、私は声を呑みました。
「ピュア・ラブ」を見てくださっていた沢山の方々が、明日の陽春と木里子の結婚式に参列なさるおつもりで、何がしかのご祝儀をご用意の上、お召しになるお洋服、お着物に至るまでもうお決めになって、明日をお待ちになっていらっしゃるではありませんか。
それなのに私は、皆さまのお席をご用意するどころか、式場にカメラさえ入れていないのです。さぞ皆さまはがっかりなさり、いえ、それどころが、激しいご叱責、ご抗議のお声が上がるのは必至と、身の縮む思いでおりました。
案の定、翌日、放送を終えた直後から、抗議、叱責、残念、無念と云うお声がホームページに殺到致しました。
応援してきた二人がやっと結婚することになって心から喜んだのに、その結婚式に招かれなかった寂しさ、と書かれた方がいらっしゃいましたが、そのお心が痛いほど解りました。本当に申し訳ありませんでした。心からお詫び申し上げます。

お詫び申し上げた上で、「ピュア・ラブIII」の脚本・構成についてお話させていただきたいと思います。
「ピュア・ラブIII」の制作が決まった時点で、私はドラマの当然の流れとして、「木里子の死。陽春の慟哭」そして陽春は生涯をかけて木里子の菩提を弔っていくことで「ピュア・ラブ」を永遠のものとする。そう考えました。
けれども視聴者の多くは、再発は勿論、木里子が死ぬことなく、二人が結婚することを強く望まれている。さて、どうするか・・・
考えた末、<そうか、今、時代があまりに暗いので、皆が光を求めているのだ。
だとしたら、光が差し込むラストにならなければ>と云うことに気がつき、IIIのラストは二人の結婚に決めていたのです。
ところが「ピュア・ラブ」はI、II、IIIのすべてを放送終了を持ってドラマのエンディングとしてきたのです。
つまり、未来時間は一切書かないことにしていたのです。
ですからIIIはイルカを見に行った帰り(2002年秋)の陽春と木里子から書き出して、2003年11月21日の放送終了日までに結婚させなければなりません。
副住職になるために天寧僧堂から龍雲寺に帰山した陽春には、和尚に昇進するための本山での垂示式と龍雲寺での入寺式が控えています。
その上、副住職としての職務と軌道に乗せてからでないと、結婚などは考えることができません。そうなりますと、IIIで結婚まで書き込むのは無理ということになります。
そこで私は裕太たちの卒業と入学(33回)までを区切りとして、そこまでは登場人物すべての動きをきめ細かく追い、36回からの最終週は結婚に向かってアクセルを踏み込み、思い切り加速することに致しました。
そして細部を描かない替わりに、心揺さぶるドラマを紡いでいこうと考えました。
その結果が賛否両論の最終週でした。

ラストシーンにつきましては、パートI、II、III全編通して400字詰め原稿用紙で3720枚書いてまいりますと、私にとって木里子・陽春は我が子同然ですから、娘を嫁がせ、息子が嫁を迎える心境です。
従って、結婚というゴールに向かって、一歩、一歩を踏みしめていく花嫁姿の木里子。
そして寺内に入った木里子を迎えに立つ陽春。
長いようで短かった道のり。
今、二人の胸に去来するものは・・・母親としましては、もうここで胸が詰まってしまって、ゴールに向かう木里子を、ただ眼で追うだけで充分な気持ちになってしまったのです。
勿論、結婚式に皆さまをご招待しなかったうかつさをお詫びした上でのことですが、私自身と致しましては、決して嫌いな最終週ではありませんでした。
本当に、皆さまを二人の婚礼のお席にご招待しておりましたら、めでたし、めでたしでありましたのに、悔やまれてなりません。
以上のような経過がありましたが、「ピュア・ラブ」はIIIを持ちまして最終章とし、ここに幕を閉じさせていただきます。

尚、この後、「ピュア・ライフ」として、木里子がどう云う風にして寺庭婦人になっていくのか、やがて住職になる陽春をどう支えていくのか、寺内に於ける老師と陽春夫妻の暮らしぶりは・・・その後のりゅっさんは・・・
そして木里子のいない麻生家は・・・周作をめぐる戸ノ山さんと婦長のバトルの結末は・・・
裕太はどんな中学生になって、忍さんと暮らしていくのか・・・
姿を消してしまったルナのその後は・・・
典美と佐竹は・・・
問題多きちいちゃん・まこちゃんは・・・
と、皆のその後を追ってみたい気持ちが私の中にはあります。
けれども、今は小説書きに専念しなければなりません。
来年の春に刊行予定でしたが、皆さまの書き込みに集中し過ぎて、執筆開始が遅くなりました。来年の5月以降の刊行となりますので、ご諒承いただきたいと思います。

今日、12月8日はお釈迦さまが菩提樹の下でお悟りを開かれた「釈尊成道」の日です。
そしてその日にちなんで行われる雲水の命取りとも云われる一年中で一番厳しい―天寧僧堂で陽春も不眠不休で参禅していたのをご記憶の方もいらっしゃると思いますが―臘八大接心(ろうはつおおぜっしん)の終わりの日です。
そのような日に、こうして皆さまにご挨拶をさせていただけるのも「ピュア・ラブ」を通してのご縁かもしれません。
長い間、本当にありがとうございました。
最後に<創る側も、視る側も>すべて、

花の世の 花のようなる 人ばかり  ―中川宗淵禅師―

の句で締めさせていただきます。
またお会いする日を楽しみに。

2003.12.8