あなたへ 作者より


「ピュア・ラブ」のお礼とお別れのご挨拶をさせていただきましたのは、去年の落花盛んな候でした。
あれから1年、今年は梅の花が咲きほこる季節のご挨拶となりました。
「ピュア・ラブ」に続きまして、「ピュア・ラブU」にお寄せくださいました暖かいお言葉の数々、胸を熱くして読ませていただきました。
ありがとうございました。
思えば「ピュア・ラブ」のスタートの前日、大阪入りした私は、その夜、ホテルのラウンジで篠田三郎さんとお喋りし、その折り、
「このドラマは視聴者にうけるか、こけるかそのどちらかだと思う。もしこけたら、21世紀は心の時代だと云われているけれど、人の心に訴えるメッセージドラマは、もうこの国の人々には必要とされなくなってしまったんだと思うしかない」
そう云ったら、ドラマ30で「命燃えて」「命賭けて」を一緒に創ってきた篠田さんは、
「大丈夫ですよ。まだまだ佳いドラマを求めている人は沢山いると思いますよ。世の中、そんなに捨てたものじゃありませんよ」
そう云って励ましてくれました。
そして、その結果は皆様のお声と好視聴率が示して下さった通りでした。
それだけに、21世紀が心の時代であることを敏感に感じとられた皆さまからのお声は、私にどれだけ多くの喜びをもたらせてくださったことか、計り知れないものがありました。
心からお礼申し上げます。
このお礼の心をどう形で示したらよいか、考えました末、二つのことをお教えすることで、皆さまのお役に立たせていただこうと思いました。

去る2月11日は大安、神よし、悪しきもの、すべてのぞくという吉日でしたので、私の家でもお雛さまを飾りました。
私の家のお雛さまは、心優しい友人(忍さんにとてもよく似た人)が贈って下さった、内裏雛が5センチ、三人官女が3センチ、五人囃子が2.5センチの紙粘土で作ったとても味のある手造り雛です。
一つは、これを作るプロセスをドラマの中でご披露し、作り方をお教えしようと思います。
もう一つは、我が家で作るカレー風味の包み揚げの作り方をお教え致します。(この包み揚げは召し上がった皆さんから、美味しいとご好評をいただいております)
二つともお金をかけないで作ることができますので、この不況時代に喜んでいただけるものと思っております。
それから、宗達老師の「お地蔵さん」等の台詞をどうやって作ったのか、と云うご質問がありましたので、お答えします。
禅宗指導をして下さった長門義明和尚を通しまして、盛永宗興老師の後継者の方のご許可を得て、盛永宗興老師のご法話集を参考文献にさせていただき、わかりやすいように台詞に書き直しました。
「お地蔵さんの話」「地獄・極楽の話」「命の話」等です。
その他の宗達老師の台詞は、私が日頃、人に語りたいことを宗達老師を通して語らせて貰いました。

その他、気になる書き込みが一つありましたので、一言添えさせていただきます。
新聞の投書欄に「やさしいお坊さん」と云うタイトルで、『6歳の息子さんが托鉢のお坊さんに10円喜捨したら、逆に「ジュースを買いなさい」とご自分の財布から120円くださって、返しに行っても「いいから」と受け取られないので、息子さんからそのお金を受け取ったおばあちゃんはそれを募金箱へ。・・・お金の大切さと人の縁を学ばせてもらった』と云うような内容のものが掲載されていたと書かれているのを読みましたが、投書された方がちょっと感違いされているように思えました。
「ピュア・ラブU」の4話で書きましたが、周作の声「托鉢(たくはつ)とは手で鉢を捧げる意味で、禅堂の経済を維持するための方法ではあるが、人の恵みによって生かされることを身を持って知り、人々には施すことの喜びを与える。そのために身を持って乞食(こつじき)になる。まさに釈尊伝来の乞食行なのである」
の、ように托鉢修行中の僧侶が、喜捨していただいた10円を、例え相手が小さな坊やであっても、120円にしてジュースを買いなさいと返却することは、絶対にないと思います。
きっとそのお坊さんは托鉢中ではなかったので、坊やの10円に対して、お礼と好意を込めて、ジュースを買うようにと、120円、くださったのでしょう。
ちなみに、臨済宗妙心寺派の僧侶の托鉢修行には、托鉢規定がありまして、托鉢免許証を所持していなければなりません。
そして托鉢修行時間は、午前7時から11時迄と定められております。
また托鉢修行者は3人以上10人以下で、しかも一列になって歩行しなければなりません。
そして、一定の間隔を保ちながら「ホォーッ、ホオーッ」と声をあげながら歩行していきます。
皆様が陽春と同じような僧堂修行者を街の中で見つけたいと思われるなら、彼ら托鉢修行者は必ず「××僧堂」「○○僧堂」と黒地に白字で僧堂名を書いた看板袋を首から下げておりますから、それを目印にされるとよいと思います。

ここで僧堂の話が出ましたので、私が取材させていただき、猪野君と辻内君が修行させていただいた僧堂の知客寮(しかりょう)さんからのメッセージをお伝えしておきたいと思います。
陽春が修行させていただいた僧堂は、臨済宗妙心寺派の僧堂で、全国に20ヶ寺ありますが、
<観光できるお寺ではありませんので、例えば、「天寧寺専門道場」と云うように「××寺専門道場」と書かれていましたら、雲水さんたちの修行の邪魔にならないように、特に「接心中」は寺内に入らないで下さい>
以上が知客寮さんからのお願いのメッセージでした。
「ピュア・ラブ」のおかげで、修行が妨げられた等と云うことになったら困りますので、私からもお願い致します。

饒舌なご挨拶となりましたが、皆さまへの感謝の心を込めまして閉じさせてさせていただきます。
またお会いできますその日迄、皆様おすこやかにお過ごし下さい。