猪野学さんインタビュー
パート1で地獄の1週間禅寺修行を乗り越えた猪野さん。2でも修行にいかれたそうです。陽春役の役作りなどについてお伺いしました。

―パート2のお話を聞いてどう思われましたか?
「前作を撮り終わって髪がやっと5aくらい伸びて、整髪剤が使えるかなという時、続編が決まったといわれ、“また頭を剃るのか…今回も辛い禅寺修行に行くのか…”と複雑な心境になりました」

―その修行に今回も行かれたんですよね?
「はい。今年は夜坐(夜の坐禅)がなかっただけ、以前よりましでした。でも、修行の内容がわかっていて次に何が起こるかわかっている分、きつくて・・・。早く終わらないかなーと。前の時は次にどうなるかまったくわかりませんでしたから」

―それにしても修行をやり終えられたのはすごい。
「僕がもし弱音を吐いたら、次に(修行に)来るかもしれない役者さんに迷惑かけると。ここで役者根性を見せないと、と思って必死についていきました」

―空手初段の根性ですね。
「中学3年から高校3年までやってました。足蹴りの千本稽古とか。キツかったですね。僕は悔しい思いをしたり、これは!と思うことがあると、スイッチが入るというか、不思議に根性が出るんですよ。普段はそんなことないんですが」

―そういう努力があって、本物≠ニいわれる陽春が出来あがっているのですね。
「所作、目線など本物からいただくことはいくらでもあります。みなさんの中に入っていると自信も出てきて、袖のさばきなど無意識のうちにできるようになりました。仏教との出会いは大きく、人道的なことを考えたり、自分の人生を見つめたりするようになりました。また若い雲水の方とメル友になったんですが、役者にはない考え方を持っていて、新鮮です」

―陽春の役づくりははどのようにされますか?
「体や精神の無駄なところ、自分の業(ごう)といったものをそぎ落として役作りをします。前作の打ち上げの後は、反動から俗っぽくなっていたので大変でした(笑)」

―気になる純愛の行方ですが・・・
「過酷な恋愛は純粋になりがち。思いがかなわないといっそう純粋を貫こうとしますね。正直、Uでは早く(本心を告げて)楽になりたいです(笑)。陽春は苦悩を抜けて、すぐに態度を決めちゃえと思ったりもして。共演の小田さんは純粋、正直な方で、芝居は柔軟。安心して共演しています」

―陽春を演じることで、演技についての考え方も変わったそうですね。
「いままで動きの激しい役が多かったので、これだけゆっくり話をして、静かな役は始めてでした。何もしないでいるとこれまでいかに自分が余計な芝居をしていたか≠ニいうことに気づかされました。やらないことで見ている人の想像かきたてる演技もあるのだな、と」

―今後、挑戦してみたいことや挑戦したい役は?
「役では多重人格者の役がやってみたいです。三谷幸喜さんの『出口なし』という舞台みたいな。あとは自主映画を役者同士で集まって作っているので、そっちの方も。役者をやったり、カメラマンをやったり。カメラを回してみて初めてカメラの方の気持ちがわかって、立ち位置に気をつけるようになりました(笑)」

―尊敬するのは同じ劇団青年座の西田敏行さんだそうですが、同世代で気になる役者の方は?
「『GO』の窪塚洋介さんですね。アンニュイな感じで、芝居も柔軟で存在感があって・・・」

―最後に、陽春は修行と木里子との間で思い悩みますが、猪野さんが役者を取るか、彼女を取るかと言われたら?
「(きっぱり)役者を取ります」