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世界遺産を横切る線路、県が移設を検討

更新:01/11 20:11

 世界遺産、奈良の平城宮跡の敷地の真ん中を線路が斜めに横切っています。これは近鉄奈良線の線路なのですが「世界遺産を横切るのは景観上、問題がある」などとして、奈良県が移設を検討していることがわかりました。ただ、奈良は街全体が遺跡だらけで「掘れば何か出てくる」といわれる場所。大規模な移設工事は可能なんでしょうか?

 甲子園30個分の広さを誇る世界遺産の平城宮跡。その真ん中を電車が斜めに横切っていきます。世界遺産を線路が横切る少し不思議な景色は小説の舞台にもなるなど人々の心を捉えてきました。

 「平城宮跡はすっかり闇に包まれている。広大な敷地の真ん中を突っ切って走る、近鉄電車の車窓の明かりが、しんみり夜に浮かんでいる」(『鹿男あをによし』万城目学著 幻冬舎文庫)

 復元された大極殿をバックに走るのは大阪と奈良を結ぶ近鉄奈良線。ここが史跡として整備されるずっと前から線路が先に通っていたため、この不思議な景色が生まれたのですが、奈良県は「世界遺産を横切っているのは景観上、問題がある」などとして線路の移設を検討していることがわかりました。

 奈良県では線路を平城宮跡の南側、大宮通り沿いに迂回させることを検討していて、渋滞を増やさないよう地下か高架を走らせる想定ですが、ここは街の至る所に遺跡があり「掘れば必ず何か出る」とも言われる奈良。そんなに大規模な工事ができるのでしょうか?

 「平城宮跡から近い大和西大寺駅です。南北と東西の路線が平面で交差する全国でも珍しい駅で、何十本もの線路がまるで植物の根っこのように入り組んでいます」(神崎智大記者リポート)

 平城宮跡の西側にある近鉄大和西大寺駅。奈良駅や京都駅、大阪・なんばや橿原神宮前に向かう路線がすべて平面上で交差していて、どの線路がどこへ向かうのか、複雑怪奇な光景に。違う方向からやってきた来た電車がぶつかりそうな近さですれ違っていきます。
 
 奈良県はこの駅を立体交差させることも検討していますが、この状態が長年続いてきた事からも工事が簡単ではないことが予想されます。さらに…

 「奈良市の中心部にあるイトーヨーカドーです。ここは元々百貨店のそごうだったのですが、百貨店に付き物のデパ地下がありませんでした。建設前の調査で大規模な遺跡が発見されたため、地下にフロアを作ることができなかったのです」(神崎智大記者リポート)

 線路の移設先に検討されている大宮通り沿いのスーパー。1980年代、奈良そごうとして建設されましたが、開業前の発掘調査で3万点もの木簡が出土。奈良時代の皇族・長屋王の屋敷跡だったことがわかり、建設計画を縮小せざるを得ませんでした。

 線路の移設となれば再び大規模な発掘調査を行う必要がありますが、困難を押してまで移設を進める必要はあるのでしょうか?

 「大正時代からある線路なのですごく慣れているし、世界遺産の中を電車が通っているのは珍しいので、(移設されたら)ちょっとさみしいやろうな」(奈良県民)
 「奈良の人間としては、奈良に来る人にはこの景色を見て奈良に入ってほしい」(奈良県民)

 この景色を小説の舞台に選んだ万城目学さんはツイッターで…

 「まだまだ先の話でしょうけど、いいときに『鹿男あをによし』を書けました」(万城目学さんのTwitterより)

 奈良県は今年度中にも移設に向けた課題を整理したいとしていますが、長年親しまれてきたこの景色がなくなれば寂しくなるという人も多そうです。

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