京都 町家 徒然散歩


かつて応仁の乱に山名宗全が陣をかまえたことから発した西陣。織物の町として栄えたこの町も、着物離れ・職人の高齢化などから少しずつ過疎化が進んでいました。そんな中、1995年に"ネットワーク西陣"という組織が発足しました。空き町家や空き工場の有効活用を促進する事が目的のグループでした。その活動をきっかけに、多くのアーティスト達が職住一体の機能(LIVE & WORK)を持った町家に興味を示し入居を始めました。その数は130件以上にも至り、彼らの作品展が開催されました。その活動はやがてニューヨーク州ピークスキル市との交流に発展し、現在は住民レベルでの国際交流にまで至っています。
その活動の火付け役となったのが、佐野充照さんと、その相棒のフリーカメラマン小針剛さんでした。
佐野充照さんに、それらの活動を通して入居したアーティストの活動やエピソード、町の風景などを織り交ぜて、お話を聞いていきたいと思います。

 第19回『千切屋工場跡地利用』



[建築家集団 建築少年]


西陣北座にはロフトがある。夏は40度を超える、冬は机の前に1台ずつストーブがなければ滞在できない。そんなロフトに引っ越して来た変わり者たちがいた。会社の名前を「建築少年」という、ユニークな名前だ。

京都大学の院生で建築家の卵である彼等の仕事については、よくわからない。それは、どこの建築を担当したのか聞いたことがないからだ。

河合、馬場、中村、植並の4人である。

現在、彼等は独立して事務所を構えたり、大学の講師をしたりしているが、その当時、彼等は、建築というアーティスティックな空間構成を協同作業するという実験に取り組んでいたのである。

画家の例を示せばわかりやすいと思うが、一つの作品を仕上げるのに、他人が加筆すれば、それはもう、その人の作品ではなくなってしまう。建築には多分にその要素があり、本来、建築家の作品と捉えられる傾向がある。その枠をあえて超えてみようという実験だったのである。

中でも河合は、私たちの世話で町家を事務所として借りている。千切屋工場跡地の向い側に建つ、永原医院のディケアセンターは彼の作品だ。

馬場は、西陣活性化実顕地をつくる会の中心メンバーとして、一緒にアメリカへ視察にも行ったし、トヨタ財団などの助成金を申請する際にもその能力を発揮してくれた。町家倶楽部の理事でもある。中村も町家倶楽部の理事に就任してくれている。

[オドリBAR]


 これが始まる前に警察から、

「風俗営業じゃないですよね?」

と尋ねられたというエピソードを持つ、飲みながらダンスユニットを見るという催し。

96年秋、千切屋工場跡地の木造工場に事務所を構えた鏡敏彦がはじめたイベントである。冬木ダンスユニットの練習を兼ねて、ここでBARをやってみようという試みは、実に奇想天外なものであった。

それも毎月第1土曜日に行うというハードスケジュール。もちろん、ハードゆえ、長続きしなかったが、こういう試みができるのも空き工場ゆえ。若者たちがここに集まり出した。

 臨時に併設されたBARは、「建築少年」による天井から釣り下げたカウンターだけ。西陣活性化実顕地をつくる会のメンバーでもある結工房の大井沙織、藤田尚美の両名がスタッフとして、小針剛とともにBARを担当してくれた。

土間でできた一部分を厨房として活用し、ホットワッフルやタコスなどの食べ物とリカー類を提供した。

厨房の囲いは、アンティックの板戸を蝶番でとめたものを利用したり、明治初期の燭台を効果に使ったり、私個人の趣味で集めたものをディスプレーした。

私は、布袋さんにとりつかれ、古物商に出入りし出してから、アンティック趣味が復活して、その当時は、どんどん集めていた時期だったのだ。

鏡敏彦。彼との出会いは大きい意味をもつ。小針剛につぐ、第2のキーパーソンであり、それぞれの特技が違う分野だったこともあって、お互いが足りないところを補完するというよりも、長所をより伸ばすための役割を担った。

 ここ千切屋工場跡地は、彼らによって、さまざまなイベントが企画された。そして、耐久年数を過ぎて、その「役割」を終え、売却、取り壊しという運命に翻弄されたが、今は、町家風の建築物が連なる大きな広場を持ったオアシスとなっている。

記:佐野充照

■佐野充照(さの じゅうしょう)
法華宗僧侶。本門法華宗妙蓮寺塔頭円常院住職。
住職の仕事をするかたわら、「町家倶楽部ネットワーク」の代表としても京都の町家
を活用していく取り組みをおこなっている。

人と人、人とモノ、人とまちを結ぶ仲人「町家倶楽部ネットワーク」
http://www.machiya.or.jp


当ホームページのすべての著作権は毎日放送に帰属します。記事・写真の一切の転用を禁じます。 Copyright©1995-2012, Mainichi Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.