京都 町家 徒然散歩


かつて応仁の乱に山名宗全が陣をかまえたことから発した西陣。織物の町として栄えたこの町も、着物離れ・職人の高齢化などから少しずつ過疎化が進んでいました。そんな中、1995年に"ネットワーク西陣"という組織が発足しました。空き町家や空き工場の有効活用を促進する事が目的のグループでした。その活動をきっかけに、多くのアーティスト達が職住一体の機能(LIVE & WORK)を持った町家に興味を示し入居を始めました。その数は130件以上にも至り、彼らの作品展が開催されました。その活動はやがてニューヨーク州ピークスキル市との交流に発展し、現在は住民レベルでの国際交流にまで至っています。
その活動の火付け役となったのが、佐野充照さんと、その相棒のフリーカメラマン小針剛さんでした。
佐野充照さんに、それらの活動を通して入居したアーティストの活動やエピソード、町の風景などを織り交ぜて、お話を聞いていきたいと思います。

 第16回『金曜夜会/大黒町まちづくり協議会』




【金曜夜会】
96年の5月、私たちの活動拠点である千切屋工場跡(現在は、取り壊されてない)で金曜夜会が始まった。

千切屋工場跡は、向かいの織物業(株)渡文が千切屋から借りている土地建物で、そこのガレージの入り口のような部分で金曜夜会が始まったのである。

それは、だれでも参加自由で1000円で飲み食い放題というオープン居酒屋みたいなものだ。商売ではないので、営業許可とかは必要なく、みんなが渡文さんに集まってくるという感じだった。

主催者は、(株)渡文の博司君である。

思想信条も理念もなにも持たないゆえに、(彼が持っていないのではなく、会の趣旨のこと)いろんな人が出入りし、出会いの場となり、情報交換の場となっていったのである。特に、西陣地区に移り住んだアーティストや地元織物関係者が中心となっていたので、イベントの企画や、新しいアイデアなどがそこでつくられていった。

雨の日も雪の日も暑い日も寒い日も開店し、休みは、正月と盆の2回だけ、これは驚異的な継続記録である。

もちろん、博司君が出張などで不在になるときには、(株)渡文の若手社員が代わって仕切るのだが、いつの間にか、その若手社員や来客たちが、中心的スタッフとなり、西陣活性化実顕地をつくる会のメンバーでもある石川奈津子さんなどもスタッフ参加をするようになる。

この会は、今は、終了しているが、何年も続いたことは、素晴らしい出会いを演出した。

【大黒町まちづくり協議会】

大黒町とは、京都市上京区浄福寺通上立売上るにあり、(株)渡文や西陣活性化実顕地をつくる会の活動拠点のある町内のことである。

ここから妙蓮寺までの途中に、私に唆されたと公言する小針剛が住んでいる。

(株)渡文は、北隣りに(財)手織り振興財団を経営しており、ここの館長であった日下部栄介さんが大黒町まちづくり委員会の事務局長を兼任し、景観問題にも取り組んでいたのである。

私は、鍾馗さんの調査をしていたころから、空家や西陣の町の風景に興味を持っていたので、大黒町の景観を守る運動が新聞に載った時、なんとなく気にとめていたのである。

そして、彼を訪ねたのがきっかけで、
「これはちょっと面白いことになるかな?お寺も地域に開かれた存在にしなければ」
と感じたのだ。

その感性をそのまま小針剛に伝えたところ、彼も協議会の集まりに参加してみたいということになり、もしかしたら、本当の意味で、これが私たちの活動のきっかけであったのかもしれない。

モノとしての「きっかけ」は、布袋さんであり、人としての「きっかけ」は、日下部栄介と小針剛であったにちがいない。

何度も言うように、私は、まちづくりをした覚えはないが、大黒町まちづくり協議会の活動が私の何かにひっかかったのだ。

最初に「縁」が大切だと言うことを述べたが、振り返ってみると、本当に偶然のような「縁」の積み重ねでここまで来たというのが感想である。

大黒町は、現在、大きなプロジェクトを動かそうとしている。タウンマネジメントに近いものだが、このプロジェクトが成る成らないを別にして、すでに面白い人材とネットワークが組めそうな出会いができた。これからの展開が楽しみだ。(現在、大黒町は、石畳になり、町並みは、景観を生かした造りになっており、情緒ある西陣の一角となっている)
記:佐野充照

■佐野充照(さの じゅうしょう)
法華宗僧侶。本門法華宗妙蓮寺塔頭円常院住職。
住職の仕事をするかたわら、「町家倶楽部ネットワーク」の代表としても京都の町家
を活用していく取り組みをおこなっている。

人と人、人とモノ、人とまちを結ぶ仲人「町家倶楽部ネットワーク」
http://www.machiya.or.jp


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