京都 町家 徒然散歩


かつて応仁の乱に山名宗全が陣をかまえたことから発した西陣。織物の町として栄えたこの町も、着物離れ・職人の高齢化などから少しずつ過疎化が進んでいました。そんな中、1995年に"ネットワーク西陣"という組織が発足しました。空き町家や空き工場の有効活用を促進する事が目的のグループでした。その活動をきっかけに、多くのアーティスト達が職住一体の機能(LIVE & WORK)を持った町家に興味を示し入居を始めました。その数は130件以上にも至り、彼らの作品展が開催されました。その活動はやがてニューヨーク州ピークスキル市との交流に発展し、現在は住民レベルでの国際交流にまで至っています。
その活動の火付け役となったのが、佐野充照さんと、その相棒のフリーカメラマン小針剛さんでした。
佐野充照さんに、それらの活動を通して入居したアーティストの活動やエピソード、町の風景などを織り交ぜて、お話を聞いていきたいと思います。

 第13回『初期入居者の入居例』




[陶芸家3人組の場合]

 妙蓮寺で町家に住むにはどうすればいいかという説明会に参加していた陶芸家たちが空き家をみつけて、交渉を開始した。大家さんは空き家の向かいの家に住んでいた。

 同じ町内に接骨院があり、私はよくそこへ治療に通っていた。そこで、先生にも口添えを頼んだりもして、案外すんなり入れたのである。

今でこそ、町家倶楽部ネットワークは、大家さんの自主性を重んじるために、倶楽部から「貸してみてはどうですか?」「貸してもらえませんか?」とは聞かないようにしているが、最初のころは、とにかく、実績というか、実際に町家を活用した例を作り出さなければ、京都市内で、町家の啓蒙にはならないからだ。また、せっかく名付けた実顕地をつくる会(実際に顕すという仏教系の用語)とはならないからだ。

 このようにして、2つ目、3つ目、4つ目と実績を残していったおかげで、世間の注目するところとなった。

 しかし、借り手は、あくまでも彼らであるため、彼らが大家さんに気に入られなければだめだ。借り手、貸し手の双方が気に入ってこそ、こういう運動は、うまく回るというものだ。

 もちろん、現状貸しであるため、かなりの修理を必要としたが、3人で分担するので、1人あたりの分担金は少なくてすんだようだ。

陶芸の窯を据えるのに100万円ほどかかるので、トータルで300万円ぐらいはかかったのではないだろうか?

家賃のことについては、大家さんと借り手の間で契約されるので、広いからといって一概に高いわけでなく、狭いからといって安いとは限らない。

彼等が最初の説明会に来た時、
「8回も歩き続ければ、必ず見つかる。毎週日曜日に来ても約2ヶ月で希望は叶えられるでしょう。」
と言ったのだが、本当にその通り、人間、前向きになれば、夢は叶えられると、その時思ったものだ。

どういうわけか、陶芸を目指している若手のアーティストが多く、最初に入居が決まっていった。

[陶芸 結工房の場合]

同じ時期、前後して、陶芸の結工房が実現した。

ここは妙蓮寺の隣の町内で、昔から空き家であった。そのせいで誰もが先入観で、借りられないものと思い込んでいたのであるが、陶芸家の二人がお向かいの郵便局に大家さんの連絡先を聞いて、わたしに連絡をしてきた。さっそく西陣活性化実顕地をつくる会の掲載された新聞記事を同封して、私からのお願い状を送付したのである。

灯台もと暗しで、あっという間に、ここも入居が実現した。

 入居第1号の小針邸を改修した大工が、ここも出がけてくれた。休日を利用して、仕事をしてくれたので、結構、安くて出来た。

妙蓮寺の前の石材の店主は、屋根に放置されていた古いエアコンの室外機をクレーンでつって下ろしてくれたし、ゴミ処理場に処分してくれた。

妙蓮寺の門番さんは、あまったコンパネを陶芸作品を置く台にしたら言ってくれたりもした。

 近所の人たちが、空き家だったところに人が住むということを、これだけ喜んでくれているのだと実感できて、とても嬉しかった。

このころを思い出すと、本当に楽しい。
彼らや彼女たちは、今、ここを大学の後輩にゆだね、それぞれ、結婚して、お互い、それぞれの道を歩んでいる。

西陣での町家暮らしが、彼らのこれからの生活の上で、プラスになることを祈りつつ。
記:佐野充照

■佐野充照(さの じゅうしょう)
法華宗僧侶。本門法華宗妙蓮寺塔頭円常院住職。
住職の仕事をするかたわら、「町家倶楽部ネットワーク」の代表としても京都の町家
を活用していく取り組みをおこなっている。

人と人、人とモノ、人とまちを結ぶ仲人「町家倶楽部ネットワーク」
http://www.machiya.or.jp


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