京都 町家 徒然散歩


かつて応仁の乱に山名宗全が陣をかまえたことから発した西陣。織物の町として栄えたこの町も、着物離れ・職人の高齢化などから少しずつ過疎化が進んでいました。そんな中、1995年に"ネットワーク西陣"という組織が発足しました。空き町家や空き工場の有効活用を促進する事が目的のグループでした。その活動をきっかけに、多くのアーティスト達が職住一体の機能(LIVE & WORK)を持った町家に興味を示し入居を始めました。その数は130件以上にも至り、彼らの作品展が開催されました。その活動はやがてニューヨーク州ピークスキル市との交流に発展し、現在は住民レベルでの国際交流にまで至っています。
その活動の火付け役となったのが、佐野充照さんと、その相棒のフリーカメラマン小針剛さんでした。
佐野充照さんに、それらの活動を通して入居したアーティストの活動やエピソード、町の風景などを織り交ぜて、お話を聞いていきたいと思います。

 第11回『高齢者との同居・福祉政策もびっくり』




府民憩いの場 植物園

岡崎の疎水の桜

藤森神社あじさい
[高齢者との同居・福祉政策もびっくり]
 もうひとつ、このアイデアはいけていると思っているものがある。97年ぐらいから公的な場でも言っているのだが、高齢者との同居である。
 空家ばかり探していてもなかなか貸してくれない。それなら独居老人やお年寄り世帯はどうなんだろう。
 お年寄りは、広い不便な町家の中で結局、居間と台所しか使っていない。他の部分は物置きと化している。ワンルームマンションに引っ越したほうが得策だと前回も述べたのだが、そういう現状なので使わない間をショップや展示室に「貸してくださいませんか作戦」である。
 通いのお店の場合、毎朝9時には店子が来る。
「おばあちゃん元気?」
と声をかける。毎日、お年寄りの安否を確認できるという寸法だ。
「おばあちゃん、ちょっと郵便局行ってくるし、お店の留守番頼むわ」
 今まで独り、だれの世話にもならなかったが、だれからも頼りにもされていなかったお年寄りがものを頼まれる、頼りにされる。これはお年寄りの自信に繋がる。そしていずれは、
「ちょっとこれ取ってほしいねん。年寄りやし、すまんなあ」
おばあちゃんからそんなお願いも遠慮なく話せるようになるだろう。
「一緒にお昼ごはん食べようか」
ということになって、おばあちゃんが
「おじいさん亡くなってから他人のごはんなんか作ったことなんてなかったわ。」
と、しみじみ言うかもしれない。
 家の中に他人がいることで、おばあちゃんも下着ではいられない。お化粧し出すかもしれない。掃除もするかもしれない。
このキーポイントは、おじいちゃんには、若い女の子、おばあちゃんには、若い男の子、これがミソなのだが。(笑)
 こんな簡単なぼけ防止は他にない。
 ディケアの病院からの電話にも耳の遠いお年寄りに代わって店子が対応する。
「今日はおばあちゃん、元気ですよ。2時ごろですか、待ってます。」
このようにナースステーションの役目もできる。
 本当は夜が不安なお年寄り。いくら非常ベルがあってもトイレで倒れたら、病院に連絡しようがない。
 縁起でもない話だが、そのまま天国に逝ってしまって、何日も放置されてたなんてこともありうる。
 どうせ2階空いてるし、住んでほしいということになったら、不安な夜も安心だし、遠く離れて住んでいる長男長女孫達にとっても毎日安否を確認しなくてもいいし、「何日も放置して」と近所親類に責められることもない。
 国家予算を食いつぶすほど福祉政策に資金を導入しているのに、赤字続きの国や地方行政にとって、これは一銭もかからない救世主みたいなものだ。
 借り手としては、お店が実現できて嬉しいだけでなく、お年寄りはぼけ防止になるし、他人のためにもなるということで自信を取り戻せるし、話し相手もできるし、病院との連係もできて、病院も喜ぶし、遠く離れた長男長女親戚も喜ぶし、近所の人も火災や安否のことで神経ぴりぴりしないでもすむし、大家さん(お年寄り)には家賃が入るというおまけまでついている。最大の効果は、行政が乗り越えることのできなかった独居対策の壁を簡単にクリアできることだ。
「簡単便利金のかからぬ福祉実現」とでも言おうか。
これが未だに実現していないのは、啓蒙活動が足りないという理由のみだ。何故さっさとしないのか?
それは
「なにもかも私たちが実現してしまっていいのだろうか?」
という遠慮でしかない。ボランティア活動を事業にするつもりはないということだ。
 そういうNPOが出現して、やってくれればいいと思っている。不動産屋さんが乗りだしてもいい。すでにそういうケースも出現しているかもしれない。
このアイデア、実は空き家がなくなった時の苦肉の作である。私たちの原動力は、いつも立ちはだかる壁を乗り越えようとするところから始まっている。
私たちの活動の根本的な特徴は、壁やハードルを困難なストレスとは考えないで、むしろ、第2ステージに行くための通過点だと考えている点である。
だから、通過点に設定された問題は難題であればあるほどワクワクしてくるのである。
ポジィティブな思考こそが道を開く。みなさんもそういう気持ちで歩んでほしい。


記:佐野充照

■佐野充照(さの じゅうしょう)
法華宗僧侶。本門法華宗妙蓮寺塔頭円常院住職。
住職の仕事をするかたわら、「町家倶楽部ネットワーク」の代表としても京都の町家
を活用していく取り組みをおこなっている。

人と人、人とモノ、人とまちを結ぶ仲人「町家倶楽部ネットワーク」
http://www.machiya.or.jp


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