京都 町家 徒然散歩


かつて応仁の乱に山名宗全が陣をかまえたことから発した西陣。織物の町として栄えたこの町も、着物離れ・職人の高齢化などから少しずつ過疎化が進んでいました。そんな中、1995年に"ネットワーク西陣"という組織が発足しました。空き町家や空き工場の有効活用を促進する事が目的のグループでした。その活動をきっかけに、多くのアーティスト達が職住一体の機能(LIVE & WORK)を持った町家に興味を示し入居を始めました。その数は130件以上にも至り、彼らの作品展が開催されました。その活動はやがてニューヨーク州ピークスキル市との交流に発展し、現在は住民レベルでの国際交流にまで至っています。
その活動の火付け役となったのが、佐野充照さんと、その相棒のフリーカメラマン小針剛さんでした。
佐野充照さんに、それらの活動を通して入居したアーティストの活動やエピソード、町の風景などを織り交ぜて、お話を聞いていきたいと思います。

 第7回『西陣活性化実顕地をつくる会発足』





前回の文章に出てくる小針剛、彼が8月いっぱいかかって、改築したこの町家に引っ越したのは、1995年9月1日であった。
「近所に、ぼろぼろの町家を借りて、自分で直している兄ちゃんがいる」と、取材に来た新聞記者に通報した人がいる。
西陣織工業組合理事長のW氏である。
改修中に何度も覗きにきていたようだ。

偶然は、どんどん重なるもので、その新聞記者が龍華堂を訪れた時、私は、小針に私が写した鍾馗さんの写真を見せていたのであった。
忘れもしない9月27日、地元京都新聞の朝刊に二人の記事が同時に掲載された。
その日を境に、人生が狂ってしまったのである。

朝から晩まで鳴り続ける電話。約60本。
そのほとんどが、「町家に住みたいが、どうやったら住めるのか」という問い合わせであった。
これではたまらないと、説明会を開くことになったのである。
妙蓮寺を会場にして、10月から11月にかけて入居希望者への説明会を行ったのだが、3回行って3回とも30名ほどの参加者が集まった。
面白い動きだと判断したマスコミが取材を申し込んできて、ここでようやく「説明会の名前とかないんでしょうか?」と問われ、考え付いたのが、『西陣活性化実顕地をつくる会』であった。活性化という名称を使用しているため、地域の活性化を目的とする集団であると思われがちだが、当人たちは、そんな深い意味もなく、名付けたもので、もちろん、よく似た呼称の某農業団体とも無関係である。

だが、当人たちの思惑とは関係なく、社会からは、活性化を目的とした集団で、西陣織りに代表される和装産業の活性化も視野に入れたものであるかのように考えられていたふしがある。
西陣活性化実顕地をつくる会というのは、あまりにも長いので、のちには、「ネットワーク西陣」と通称で呼ばれるようになった。
設立当初には、簡単に貸してくれる大家さんがまだまだおられたので、すぐにK.Eの「版画の工房」とI.Kの「陶芸の工房」が決まった。
ここでも運命のいたずらか、西陣でもっとも西陣的といわれる紋屋町三上家路地に借りることができたのである。

それがますますマスコミの興味を引くことになり、ラジオやテレビへの出演が決まり、それが放送されることによって、また入居希望者が殺到するという悪循環?が始まったのである。
入居希望者たちは、最初の内は、自分の足で歩いて、電気メーターの止まっている家を探しては、大家さんの聞き込みをするということを繰り返し、探しあてた大家さんに連絡して、説得するということを行っていた。
また、説明会でも、そういうノウハウを指導して、探してもらった結果、1996年の3月ぐらいには、7軒ぐらいが入居することになり、益々、活動に弾みがついていった。
西陣に入居希望者が殺到したのはマスコミ報道の結果であり、その報道を受けて、需要過多の状態になり、私たちが動かざるを得なくなったのが現状だ。その結果、個人的な単なる趣味だったものが、多くの人を巻き込んで動きだしたのである。

その後もマスコミが絶えることなく取材に訪れることによって、一躍全国的に有名になっていったのである。
そうこうするうちに、西陣のイメージが一人歩きし出し、全国のアーティストや京都に住みたいと憧れている人から「理想郷」のように思われ出したのである。
なにも、まちづくりを考えてなかったので、アーティストに的を絞ることはしなかったのだが、結果的には、芸術系大学の卒業生たちが活動の中心となって、職住一体の住居が実現しだしたのである。


記:佐野充照

■佐野充照(さの じゅうしょう)
法華宗僧侶。本門法華宗妙蓮寺塔頭円常院住職。
住職の仕事をするかたわら、「町家倶楽部ネットワーク」の代表としても京都の町家
を活用していく取り組みをおこなっている。

人と人、人とモノ、人とまちを結ぶ仲人「町家倶楽部ネットワーク」
http://www.machiya.or.jp


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