京都 町家 徒然散歩


かつて応仁の乱に山名宗全が陣をかまえたことから発した西陣。織物の町として栄えたこの町も、着物離れ・職人の高齢化などから少しずつ過疎化が進んでいました。そんな中、1995年に"ネットワーク西陣"という組織が発足しました。空き町家や空き工場の有効活用を促進する事が目的のグループでした。その活動をきっかけに、多くのアーティスト達が職住一体の機能(LIVE & WORK)を持った町家に興味を示し入居を始めました。その数は130件以上にも至り、彼らの作品展が開催されました。その活動はやがてニューヨーク州ピークスキル市との交流に発展し、現在は住民レベルでの国際交流にまで至っています。
その活動の火付け役となったのが、佐野充照さんと、その相棒のフリーカメラマン小針剛さんでした。
佐野充照さんに、それらの活動を通して入居したアーティストの活動やエピソード、町の風景などを織り交ぜて、お話を聞いていきたいと思います。

 第1回『このご時世に新築町家を建てる?』







「暑い、暑い、熱射病かも。おばちゃん、お茶ちょうだい」
「あんた何やってんねん?」
「何ってかあ?町家建設の講習やんか」
「あんた、おかしな人やなあ。本業どうしたん?もう、ぼんさん辞めたらどうや?新聞や雑誌は来るし、賑やかなこっちゃなあ。」
「ははは、ぼんさんやってるし、こういうことが出来るんやで。イベントばっかりでは飯食われへんやんか」

これは、3年前の2003年5月3日の会話である。

ちょうど、このころ、大家さんの意向で、一度は壊した跡地に、もう一度、町家風の借家を建てたいとの申し出があり、路地裏に町家を建設するプロジェクトをしていたのだ。

その現場を利用して、土日に、実際に町家や木造家屋を建てるための一般向け講習会を行っていたのである。

受講生は、町家倶楽部のホームページを見たという人や、ラジオや新聞といったマスメディアの報道で知ったという人や、私が発信しているメールマガジンで知ったという人など様々で、年齢も女子高生からリタイヤしたおじ様まで、様々な年齢層の男女が参加してくれた。

最初のころは「教えなければ」というプレッシャーがあったが、やってみると、初めてのことばかりで、新鮮な経験ができるとあって、受講生一同満足してくれ、不安は払拭されたのであった。

講習内容は、木造建築の基礎や柱の構造など、興味深いことだけでなく、消防法や建築基準法などの施行に対する認識をも深めてもらえるようになっていた。

現在、建設された平成の長屋町家には、すでに借家人が住んでいる。

地鎮祭を仏式でやったときにも、近所のおばちゃんには、
「ほんまに効くんかいな?頼りないこっちゃ」
と軽口を言われたりもしたが、ちゃっかり見物に来ておられたらしい。仏式の地鎮祭や上棟式は珍しいとあって、見物人も訪れたり、写真に収めたりしていた。

さて、もうお判りのとおり、我が輩は坊主である。

住職や僧侶というと、お寺の中に座っていて、座禅して、時々「カ〜ッ!」と喝破する世間離れしたような人物を思い浮かべる人や、逆にお葬式をする専門の職業と思っている人も少なくない。そういうイメージからすると、私は、かなり変わっているほうだと思う。
加えて若い頃は、変な格好をしていたので、どれもこれも信用のおける評判ではなかったようだ。

それにもかかわらず、町家倶楽部ネットワークの活動が順調にいったのは、仏の加護か?信心の賜か?(笑

この活動を始めるまで、私は、普通の住職であったのかと聞かれれば、普通ではなかったと答えるのが正解なのかもしれない。僧侶としてすべきことだと思って、当たり前のことをしてきたつもりなのだが、本業に力を入れていないと思われていたらしい。(笑

私の理念から言えば、なにか世の中のためになれれば、形はなんでもいいんじゃないかと思う。

現在の法規制の上では、『このような建材を使い、この程度のものしかできない』というのをアピールし、伝統的建造物が保存される方向になっているのにもかかわらず、伝統的な町家は、新しく建設できないという矛盾を世間に知ってもらいたかった。

結局、現行の法律では、町家は減っても、増えることはない。


記:佐野充照


■佐野充照(さの じゅうしょう)
法華宗僧侶。本門法華宗妙蓮寺塔頭円常院住職。
住職の仕事をするかたわら、「町家倶楽部ネットワーク」の代表としても京都の町家
を活用していく取り組みをおこなっている。

人と人、人とモノ、人とまちを結ぶ仲人「町家倶楽部ネットワーク」
http://www.machiya.or.jp


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