伝統だって最先端!  〜京都今昔物語〜



京都は、「伝統工芸」「伝統産業」の宝庫です。京都府から指定されているもの以外にも、多種多様な伝統が存在しております。
その全ては、日本の歴史を現在に伝える貴重な財産といっても過言ではないです。
そして何より、21世紀の現代文明をしっかりと活用しながら、その伝統はますます進化していっております。
その背景には、20代〜30代といった若い世代の人々に、40代の先輩世代がチャンスを与え、50代〜60代のベテラン世代がその活動に対して理解を示しているという姿勢にあります。
ここではそんな、時代を越えて変わることのない「文化」と時代と共に進化し続ける「文明」が見事に調和した「伝統」をご紹介していきたいと思います。

京都の着物文化 その1〜着物の図案について〜


第2回目は、着物文化の話を致します。着物が作られる工程にはどのような匠の技術があるのか?目に見えない細部のコダワリがあるからこそ、今なお世界に誇る文化として根強く定着している着物文化を、素材メーカーの視点から紐解いてみたいと思います。

☆キモノは着る物?飾る物?


着物という漢字からもお分かりのように、「着る物」という「衣類」です。つまり、そもそもは現代で言うところのファッションアイテムなのです。そこから、さらに装飾のニーズに対応して、様々なデザインが求められてきたわけです。
そんなデザインに関して、欠かせない着物用語に、「柄(がら)」と「紋(もん)」という言葉があります。

・「(がら)」
   いわゆる絵の事。手描きから描きおろしされます。

・「(もん)」
   型(パターン)の事。繰り返されるパターンの事です。


柄は、自由な発想で描く事ができる反面、そこに何か意味する強いストーリーが無いと成立しないという難しさもあります。
対して、紋はパターンですので、ある程度自由度は制限されますが、着物の雰囲気を出しやすいという利点があります。

一般的には、紋が施された生地に、柄を描き着物が出来るのです。
(もちろん、紋が何も無い無地生地に柄を描く着物もあります)どの紋を使うか?や、どんな柄を描くか?といった組み合わせにより、価値や価格が定められていくわけです。

このような着物デザインの発展は、日本人の器用な匠の技術と相まって加速度が増し、いつの日か、美の作品のレベルにまでいきつき、「袖を通すのに勇気がいる」という神々しい美術品を産んだのです。

こういう歴史を経て、着物は「気軽に着る」という感覚から進化して行き、「一枚の絵」という価値で考えるアートの世界にも通じるものとなりました。

実際、絵の部分を合わせた反物を「暖簾」のように利用されているケースもたくさん見られます。


☆着物柄は大きく分けて「手描き」と「織り技術」の2種


着物デザインの中でも「柄」の種類は大きく分けて「手描き」と「織り技術」に分けられます。
その他にも近代の「プリント柄」や、刺繍であしらった柄等もありますが、伝統的な技法とは異なる種類なので、ここでは割愛いたします。

出来上がった生地に手描きで絵(柄)を描くタイプが「手描き柄」です。

生地を作る前に、絵(柄)の図案を作り、その図案に基づいて生地を作るというタイプが「織り技術柄」です。


これだけの情報ですと、後者の方が生地の大量生産ができない分、高価なイメージがあるかも知れませんが、やはり「手描き」という、この世の中で一枚しかない希少価値という点ではかなり価格も上がります。

前回ご紹介した「金銀糸」は、後者の「織り技術」の際に、絵(柄)の色の一部として使われるわけです。
つまり、絵のイメージを頭に浮かべながら、絵の具を選ぶような感覚で糸を選ぶのです。これは、かなりの熟練された職人の技が無いとできません。しかも、絵(柄)の図案段階では制約無しで描かれた色も、織る工程になると、機械の構造上、数種類しか糸が使えないのです。糸の種類に限りがあるとなれば、職人は「機械の性能をアップさせて糸をたくさん使えるようにする」という発想では無く、糸を2本重ねたりという、織り方の技術で色のグラデーション等を表現するのです。


文・写真 : 福永 順



■福永 順(ふくなが じゅん)

1974年 京都府生まれ。大学卒業後、就職先の先輩3名とITベンチャー会社を起業。
2004年に泉工業初代社長である父が他界し、2005年1月より、「泉工業株式会社」に入社。
2代目社長である長男をサポートする専務取締役として金銀糸創りをしながら、繊維業界以外の異業種コラボレーションを積極的に進め、金銀糸の可能性を更に拡げようという広報活動を行っている。


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