京都の行列


みなさん、今年の葵祭は行かれましたか?
御所から下鴨神社、そして上賀茂神社へと、広範囲を移動する葵祭の行列。場所さえ問わなければ、気軽に見物できるお祭です。
葵祭もそうですが、撮っているうちに、テンションが上ってくるのが行列系のお祭。
貪欲な私は、行列の先頭から最後尾まで全部カメラに収めたいし、色んな背景でも撮っておきたい。だから、行ったり来たりと参列者の倍くらい動き回ります。
京都のお祭では様々な行列が登場します。
平安時代からの桜の名所、平野神社の桜花祭では織姫隊や曲水の遊列の時代行列を見ることができますし、神仏混交の行事として有名な新日吉祭では、顔に髭を描いた子供武者が粽を配ります。他にも頭に薪を担いだ大原女行列、花を担いだ子供白川女が歩く北白川天神宮の秋祭、花街のきれいどころも参加する祇園祭の花笠巡行、嵐山界隈で十二単衣の斎宮が輿に乗る嵐山斎宮夢行列、大石内蔵助と赤穂浪士が行進する義士祭、宝恵かごや七福神を乗せたえびす船が巡行する十日夷・・・数えあげればキリがありません。
そういえば、もうすぐやってくる祇園祭の山鉾巡行も、ずば抜けて大規模な行列ですね。
行列の中でも私が楽しみにしているのが、時代祭、安井金比羅宮の櫛祭、そして葵祭です。
時代祭(10月22日)は名の如く、平安時代から明治維新にかけての時代行列です。出発点が葵祭と同じ御所なので混同しそうな気もしますが、祭の歴史は案外浅く、明治28年に平安神宮が創建されたのを記念して始まったそうです。まだまだ進化中のこの祭、2007年には室町時代が新たに加わり、計8つの時代を再現した行列は総勢2000人にもなるのだとか。
行列の一番先頭は、馬に乗った現代のお巡りさんです。これは警備のためでしょう(笑)笛と太鼓を奏でる維新勤王隊で始まる時代行列には、明治維新で活躍した坂本龍馬や西郷隆盛の姿も。坂本龍馬は懐からピストルを出して構えるパフォーマンスをしてくれることもあるんですよ。西郷隆盛といえば、愛犬と一緒のイメージですが、時代祭では残念ながら犬は連れていませんでした。今後に期待(?)です。

行列は時代を遡り、ギーギーと軋む音をさせて牛車が登場すると、いよいよ「時代」祭っぽくなってきます。織田信長や千成瓢箪に続く(羽柴)秀吉をはじめ、派手な鎧甲で馬に乗る武将が続く様子は映画のようです。
女性群も活躍しています。花街の芸妓さん達が扮する源義経の恋人の白拍子「静御前」や白馬に乗って武装した「巴御前」には特に魅力を感じますね。女性の目から見ても、かっこいいんです。他にも紫式部や清少納言、皇女和宮など、教科書やドラマでもお馴染みの有名人が勢ぞろいです。

規模はぐっと小さくなりますが、安井金比羅宮の櫛祭(9月の第4月曜日)もお薦めです。
こちらは、境内の久志塚で櫛供養を行った後、古代から現代までの髪型と衣装を再現した時代行列が、花街界隈を練り歩きます。ちなみに現代の髪型は、舞妓さんの髪型です。
ボブとかショートカットとかじゃありません(笑)
これ、元々は京都の美容師さんが、昔の髪型を結いあげる技術を引き継いでいくために始めた知る人ぞ知る行列でしたが、今は大人気で、沢山の見物人が押し寄せます。
古墳時代の髪型・美豆良(みずら)なんて、普段見ることないですから、感動ものですよ。
しかも、カツラは使わず、全部、地毛を結っています。中には、遊女風のものや大正モダン風のもの、けっこう奇抜なものあって楽しめます。
祭行列の中でも、ひときわ雅やかなのが、京都三大祭の一つ、葵祭(5月15日)。
葵祭のシンボル・葵の葉と桂の小枝が、人や牛馬はもちろん、神社のあちこちに飾られます。葵祭だから、葵だけかと思ったら、桂の葉っぱも飾るんですね。
祭の後、行列の方が背中に挿していた桂の葉を頂いたことがあるんですが、甘い香りがして、うっとりしました。
葵桂は、実のついたものが下鴨神社・流鏑馬の日に限定販売(500円)されていましたし、葵祭当日、上賀茂神社の社務所でも分けて頂けました。(300円)
双葉葵は水がないとすぐに萎れてしまいますが、水を入れた器に挿すと少し長持ちします。
さて、葵祭は歴史も古く、平安時代は「祭」といえば、ただそれだけで「賀茂祭」つまり葵祭を示したそうです。千年紀を迎える「源氏物語」の中にも、葵祭のエピソードが書かれていますよね。そう、光源氏の正妻・葵の上と六条御息所との車争いの有名な場面です。
葵祭に備えて、5月の前半には半月にわたり、様々な前儀式が行われます。
流鏑馬、競馬(くらべうま)、足汰式など馬に関わる儀式も多いのですが、行列に注目するなら、4日の斎王代御禊神事、12日の御蔭祭でしょうか。
斎王代御禊神事は、上賀茂神社と下鴨神社にて一年交代で行われます。
葵祭のヒロインともいえる斎王代は、1956年から葵祭の行列に加わったそうで、今年で53代目。この日は、その年の斎王代が登場する最初の行事でもあり、「新聞で見た今年の斎王代が、実際はどんな感じなのか?」と見物客も興味津々。参道を進む斎王代と女人列を「葵祭のリハーサル」と語る方もおられましたが、確かにその華やかさはミニ葵祭のようです。
この日、斎王代は「禊ぎ」を行います。禊ぎといっても、神社の川に指先をつけるだけで、これがまた、一瞬なんです。カメラマン達はその一瞬のために何時間も前から場所取りをします。やっと斎王代が到着し、沢山集まった報道陣やアマチュアカメラマンが息を殺して見守る中、斎王代が指先を水につけた瞬間、無数のシャッター音が響き渡る・・・光源氏も真っ青の現代ならではの光景かもしれません。
御蔭神社から神霊をお迎えする日本最古の神幸列といわれる御蔭祭は100人ほどの行列です。朝、下鴨神社を出発して、八瀬近くの御蔭神社、赤の宮神社、下鴨中通の公園、そして夕方、再び下鴨神社へと、ほぼ一日がかりの行程です。移動距離が長いため、この日ばかりは車での移動が主になります。私は自転車で追いかけるので、夕方、下鴨神社・糺の森に着く頃にはフラフラになりますが、新緑の下で優雅に行われる切芝の神事・東遊の舞は見逃せません。
他にも御蔭神社では神事の後、神饌が公開されたり、赤の宮神社では舞楽「還城楽(けんじょうらく)」が奉納されます。とぐろを巻いた蛇(木製)を手にして踊るんです。びっくりしました。そうそう、公園から参列する白い神馬は、角のついた冠飾を付けるので、ユニコーンみたいですよ。
そしていよいよ、15日の葵祭。
当日、約500人の行列は御所を出発し、お昼前に下鴨神社に到着、神事や儀式のあと、賀茂街道を北上して上賀茂神社へ向います。
神社での儀式(社頭の儀)は有料ですが、沿道を進む行列を見るだけでも充分楽しめます。
行列には鮮やかなピンク色や黄色い虎模様の衣装の方もおられ、かなりカラフル。
なんといっても花で飾られた牛車や赤い花傘と女人列、そして童女と歩く十二単衣の斎王代の華やかさは葵祭ならではの贅沢。延々と続く雅やかな行列は、王朝絵巻そのもので、これを見ずして京都は語れません。
ついでといってはなんですが、約半月後の「梅の日」(6月6日)、同じく下鴨神社と上賀茂神社で行われる南高梅の献上道中の行列もご紹介しましょう。
南高梅の産地の方々(紀州梅の会)が3年前から始めた新しい行事で、故事にちなんで各神社へ青梅20キロ、梅干30キロを献上するそうです。梅が入っている樽には、巨大な梅干の模型が・・・皺々具合もリアルです。
この「梅干し君」は後ろに控えていて、前を歩く平安時代の旅装姿・市女笠に虫垂衣のうら若き女性達の行列はとても絵になります。華やかな葵祭と祇園祭に挟まれて、ちょっと控えめな感じの6月には嬉しい行事です。
行列の後方には、おかめやひょっとこの面を被った元娘さん達が、参拝客に紀州梅の蜂蜜漬けを配っています。
これが美味しい!よく見ると、ふたつの製造元があって、片方は梅干らしい酸っぱくてしょっぱい味ですが、もう片方は甘みがしっかり。梅干の苦手な私も、これなら美味しく食べられます。
夏バテ予防に梅干。祇園祭に備えて、いかがでしょう?

文・写真:星野 佑佳

■星野 佑佳(ほしの ゆか)
京都市生まれ、在住の女性カメラマン。エッセイニスト。
2000年、海外放浪の撮影旅に出、帰国後自然風景や旅風景を求め、日本全国を旅しながら撮影。桜を追いかけて全国を旅する女性カメラマンとして、TBS系のTV番組に出演。2005年頃から再び、地元である京都の風景や行事を中心に撮影、現在に至る。

 2007年度クラレ社の企業カレンダー(B3サイズ14枚)
 JR北海道 2007年春の海峡物語キャンペーンポスター(2007年4月著)      ほか

夢は「今までの旅で撮影した写真をフォトエッセイ集としてシリーズで出版すること」


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