映像'17 毎月最終日曜日 24時50分~25時50分放送

映像'17

取材ディレクターより

戦争で負けるということは、こういうことなのだと、改めて気づかされた。南太平洋の島サイパンの遺骨収集の現場で、第二次大戦の戦没者の遺骨が、ごろごろと出てくる現実を目の当たりにしての、率直な感想である。
1920年から日本の委任統治領となったサイパンは、太平洋の権益をめぐって日米両国の軍事衝突の現場となった。1944年6月に米軍16万人あまりが島に上陸。圧倒的な兵力と武器で日本軍守備隊を攻撃した。これにより日本軍4万人あまりは全滅・玉砕し、戦没者は軍民あわせて5万5千人に上った。米軍はその後、島に作った空港から戦略爆撃機B-29を飛ばして日本本土を空襲し、一年後の日本の敗戦へとつながっていく。
戦後は、海外からの復員・引き揚げなど「生者」の帰還が最優先され、海外の遺体・遺骨など「死者」の帰還は後回しにされた。また、サイパンはじめ米国領となった南方地域の島々では、「死者」の中でも戦勝国である米国将兵の遺体・遺骨の回収が先で、敗戦国・日本の将兵のものは、さらにその後になった。番組では、そのあたりの経緯を日米の外交文書のやりとりから、生々しく描いて見せている。
日本政府は終戦7年目の1952年から、かつての戦地に政府派遣団を送って遺骨収集を始めたが、収容できた遺骨には限りがあった。2016年現在で、日本人海外戦没者240万人のうち、その半数に近い113万人の遺骨が、いまだに日本に帰っていない。
番組で、サイパン戦で奇跡的に生き残った元日本兵が、無念の戦死を遂げた戦友たちを偲んで言う。「戦前はお国のため、お国のためと言って駆り出されたのに、もうちょっと責任を取ってもらわないと」。誰が遺骨を帰すのか・・・。その答えは、こんな酷い戦争を引き起こした責任は誰にあるのか、ということと深く結びついている。

次回予告

≫次回放送は9月24日(日) 深夜0時50分~

がんとネット~患者を惑わす情報の渦~

がんとネット~患者を惑わす情報の渦~

「映像'17」は、1980年4月に「映像’80」のタイトルでスタートした関西初のローカル・ドキュメンタリー番組です。月1回、それも日曜日深夜の放送という地味な番組ながら、ドキュメンタリーファンからの根強い支持を頂いており、放送開始から30年余が過ぎました。
この間、番組は国内外のコンクールで高い評価を受け、芸術祭賞を始め、日本民間放送連盟賞、日本ジャーナリスト会議賞、更にはテレビ界のアカデミー賞といわれる国際エミー賞の最優秀賞を受賞するなど、輝かしい成果を上げてきました。また、こうした長年にわたる地道な活動と実績に対して、2003年には放送批評懇談会から「ギャラクシー特別賞」を受賞しています。
これからも「地域に密着したドキュメンタリー」という原点にたえず立ちかえりながら、より高い水準の作品をめざして“時代を映す”さまざまなメッセージを発信し続けてまいります。