映像'16 毎月最終日曜日 24時50分~25時50分放送

映像'16

取材ディレクターより

「里親を知ってほしい。子ども達が前を向けるように社会へ理解を呼びかけたい。そのためにできるかぎりの準備をしました」。
2013年の秋、私は80歳になったばかりの利夫さんから電話を頂きました。そして昨年の春から1年間、取材をさせてもらいました。

初めて会ったのは東日本大震災の直後でした。私は当時、情報番組を担当していましたが、大阪市里親会として震災遺児を引き受けたいと呼びかける利夫さん・さよこさん夫婦の気持ちに触れ、その温かな人柄に魅了されました。

その翌年、ドキュメンタリー番組を担当できることになり真っ先に「伝えさせてほしい」と挨拶に向かいました。ただ、より里親制度を広めるため、できるだけありのままを取材させて頂きたい、できればモザイクは使いたくないと話しました。子ども達の表情はどんなコメントやテロップ、BGMなどより“里親”の意義と意味を物語るとの思いからです。そして2年後、永井さん夫婦の尽力を得て、撮影を許されました。

80歳と70歳の夫婦にとって子育ては肉体的に大きな負担です。睡眠時間は4時間程、里親になってから熟睡した日はないそうです。週末は共に外出し、休みなどありません。
しかし二人は一切つらそうな表情を見せず、どれほど子どもが荒れ、反抗しても「預からせてもらっている」と感謝の気持ちを失わず、笑顔を絶やしません。

今、少子化が進む中、産みの親と暮らせない子どもは増え続けています。虐待や育児放棄、そして親の病や経済的困窮…永井さんが育てる子ども達は自分ではどうしようもない事情で大好きな親と離れ離れです。そんな子ども達に永井さん夫婦は家族のぬくもりを知って欲しいと文字通り命を削りながら寄り添っていました。

子ども達は「家族とは何か」を知りません。笑顔の陰に言葉にできない苦しみを背負っていました。時に前を向けなくなり、取材は何度も中断しました。
それでもひたむきに家族になろうと悩み、もがき続ける姿に、そして身体を張って子ども達を受け止める永井さん夫婦の姿に私は何度涙し、どれ程、励まされたかわかりません。

取材は終わりましたが、生涯を里親に捧げる永井さん夫婦の決意を見届けたいと感じています。

次回予告

≫次回放送は5月29日(日) 深夜0時50分~

追いつめられた“真実”~息子の焼身自殺と両親の9年

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「映像'16」は、1980年4月に「映像80」のタイトルでスタートした関西初のローカル・ドキュメンタリー番組です。月1回、それも日曜日深夜の放送という地味な番組ながら、ドキュメンタリーファンからの根強い支持を頂いており、放送開始から30年余が過ぎました。
この間、番組は国内外のコンクールで高い評価を受け、芸術祭賞を始め、日本民間放送連盟賞、日本ジャーナリスト会議賞、更にはテレビ界のアカデミー賞といわれる国際エミー賞の最優秀賞を受賞するなど、輝かしい成果を上げてきました。また、こうした長年にわたる地道な活動と実績に対して、2003年には放送批評懇談会から「ギャラクシー特別賞」を受賞しています。
これからも「地域に密着したドキュメンタリー」という原点にたえず立ちかえりながら、より高い水準の作品をめざして“時代を映す”さまざまなメッセージを発信し続けてまいります。