―キヌは、珠子に次々といやがらせをする役ですよね。
「最初、どうしようかなと思って。かなり悪い役じゃないですか。役に入るのに結構長く迷いがありました。それで、とりあえず、出てきただけでイヤーな感じにしようと思って、形から入ったんです。それがまた大変で、つけまつ毛を選ぶのにも買ってはつけを繰り返して。お化粧もわざわざシミをかくさない水化粧を使って、白塗りだけど、なんか汚いという感じに見せたり、口紅は不気味な色に調合したり。髪も全部あげるとキマっちゃうんで、前髪を短く切ってね。どうやったらヘンに気持ち悪くなるか、イヤな雰囲気になるかって試行錯誤しながら作っていったわけです。外堀から入るのは自分としては抵抗があったんですけど、とにかくそこから埋めようと」
―その役作りの上で、キヌという女についてはどんなふうに。
「こんな人間いないんじゃないかと思ったんですけど、世の中には結構いるんですよね。全部ねじれていっちゃって、悪い方悪い方に転がって考えていくという。それで、人に恨みを持っていってしまう。ぶっつけどころを見つけて。でも、基本的にはネガティブだから、結局さびしい人なんだろうなって思います。もしかして、私が役を作りこんだのは、自分とオーバーラップさせたくなかったからでしょうね」
―演じていて、いかがですか。
「これだけ、悪いというのをストレートに出す役って、今までにないですよね。だから逆に、やってるうちに妙に気持ちよくなってるんです。恨みなり憎しみなりをダイレクトにまっすぐに吐き出せばいいんですから、スカーッとして帰れるというか。言い切った!みたいなね。自分で後でモニターを見て、ウェーッ、こわーッ!て思うんですけど(笑)。20代前半の頃の不良少女役で、私じゃないよ!って言ってたのを彷彿とさせる、そんな気持ちよさがあります」
―そんなこわーいキヌも物語がすすむ中で変わっていく。
「そうなんです。いい人になっていっちゃう。困ったぞ、これはなんて思いながら、メークも変えて。息子が自立して子離れすることで、自分の生き方を考え直していくんですよね。今度はまわりとのバランスも考えながら、やっていくというふうに。息子と離れても自分はひとりじゃないって気付くから。そういうドラマなんですよね」
―じゃ、キヌを追って見ていくのも面白いですね。
「本当にそう。ただ、前半のキヌって鮮烈な印象が残ると思うんですよね。私も、世間から石を投げられる覚悟で演じてるし、石が飛んでくるぐらいイヤな奴でいいと思うし、それぐらいまでやんないと自分でも面白くないんですけど。もう、二枚目女優はちょっと無理かなって(笑)」
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【根岸季衣*ねぎしとしえ】
75年から、つかこうへい演出の舞台劇で脚光を浴び、その後数多くの映画やテレビに出演。際立った個性と存在感で知られる実力派女優。ねじれた性格の役柄が多いが、今回のキヌ役はかなり欲どおしい意地悪。難役を見事な役作りで演じきっているのがさすが!
京都で好きな食べ物:ハモや甘鯛。京都らしいデリケートな味が楽しめて好きです。
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