あらすじ

テレビなどで辛口のコメンテーターとして人気だった弁護士の中森伸也(宮川一朗太)が何者かに殺された。家の中には物色の跡があり、強盗と怨恨の両面から捜査が進められていた。
1か月後。遺品整理会社・青い鳥社では、都会の片隅のアパートで孤独死した男性の部屋を担当することになった。遺品整理のプロ・谷崎藍子(高畑淳子)と新人の西条裕太(藤山扇治郎)は、心臓発作で死亡し、死後2週間経っていた男性の部屋へ向かった。
部屋を整理しながら、藍子は疑問を抱く。残されていた入館証から男が丸岡純一(モト冬樹)といい、ビルの機械室で働いていたことがわかるが、ジャケットやワイシャツのイニシャルはすべて「TK」。几帳面に整頓された棚からはなぜか、心臓の発作時の薬だけが見当たらない。押入れから女性の派手な衣装やアクセサリーが見つかるが、藍子には男が女性と暮らしていたとは思えなかった。ただ、床に転がっていた片方だけの淡水パールのイヤリングが気にかかる。
遺品の中からある会員証を見つけた藍子は、丸岡の手がかりを求め、「倶楽部ウォーリー」を訪ねる。そこは、女装倶楽部だった。支配人の三好(尾崎麿基)から聞いた、「ここにいると自分が消せる」という丸岡の言葉が、心に引っかかる藍子。そして、遺品の中から殺された中森が載った雑誌ばかりを見つけた藍子は、かねてからの知り合いの刑事・三田村(矢崎滋)に連絡する。
数日後、三田村が青い鳥社を訪ねてきた。孤独死していた丸岡の指紋が中森弁護士殺害現場の指紋と一致したのだという。丸岡は本名を小久保隆といい、証券ディーラーをしていた時に株の大暴落で破産し、失踪。他人の保険証を手に入れて別人になりすましていたのだ。
藍子は遺品を引き渡すために、小久保の妻・敏江(岸本加世子)のアパートを訪ねる。5年前に失踪して以来、小久保とは会っていないという敏江は、遺品の受け取りを拒み、処分して欲しいという。質素なアパートと不釣合いなみごとな百合の生け花に目を留めた藍子は、敏江が風月流の生け花の教授だったと知る。
会社に戻った藍子は、インターネットで淡水パールのイヤリングをつけた敏江の写真を見つける。敏江は最近、小久保のアパートを訪ねたのではないか? そして、小久保がこだわっていたのは、中森ではなく、中森が所持していた花瓶ではないかと思い始める。それは信楽焼の陶芸家・江藤竜山(篠田三郎)の若き日の作品で、テレビ番組のお宝鑑定で200万円もの値がついたのだ。しかし、中森の家から花瓶は消えていた。
そんなある日、突然、敏江が青い鳥社を訪ねてくる。あれほど拒んでいた遺品を受け取りたいというのだ。遺品の中にあった淡水パールのイヤリングを、何年も前に失くしたと言う敏江。社長のスミ子(加賀まりこ)は、それが琵琶湖でしか取れない珍しいビワパールだという。行方不明の花瓶を探すうちに、藍子は中森と小久保の意外な接点を発見し、さらに小久保の縁(ゆかり)の寺が滋賀県の近江八幡にあることを知る。
ビワパール、信楽焼の花瓶、近江八幡の寺。藍子は遺品に導かれるように滋賀県の近江八幡に向かう…。