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田丸 一男アナウンサーのブログ

田丸一男のことばエッセイ

ヒスパニック

更新:2016年2月29日
アメリカ大統領選挙の候補者指名争いで大きなヤマ場となる3月1日の「スーパーチューズデー」に向けて動向が注目されているのがヒスパニック有権者です。その数が増えているというのです。

★スペイン語を話すメキシコやカリブ海諸国、南アメリカの国々からやってくる人々

アメリカは、多民族、多文化社会です。2010年、アメリカは、人口3億を突破しました。この10年間だけで、3000万人増加していて、その半数を占めているのが、ヒスパニックと呼ばれる人々です。

ヒスパニックは、「スペイン (系) 人」の意味ですが、スペイン語を話すメキシコやカリブ海諸国、南アメリカの国々からやってくる人々で、多くは仕事を求めて移り住んでいます。メキシコとの国境沿いにあるカリフォルニア州には、ヒスパニックがたくさん暮らしています。かつて、綿花の栽培が盛んだったミシシッピ州でも、アフリカ系の人々に代わってヒスパニックが増加し、アメリカの産業に変化を及ぼしています。

自動車の形態

更新:2016年2月26日
大阪市北区の阪急梅田駅近くの繁華街で車が暴走し、交差点を横断中の歩行者らをはね、歩道に乗り上げました。事故を起こした車について、各社のリポートで「ハッチバック」とか「セダン」とか形態の名前がまちまちでした。改めて自動車の分類についてまとめます。

★車の分類は厳密には定義されていない!

今回事故を起こした車は、ハイブリットカーの代名詞ともいえる車ですが、形状は「ハッチバック」とも言えるし「セダン」とも言える微妙な形です。トランクルームは独立していないのですが、ぱっと見はセダンっぽいのでセダンという社もありました。

●セダン

よくあるタクシーの形状のことです。基本的にはドアが4枚で、エンジンルーム、キャビン、トランクルームの3つの空間が独立しているもので、3ボックスとも呼ばれます。

●クーペ

セダンが4枚ドアであるのに対し、クーペは2枚ドアのことを指します。

●ハッチバック

セダンのトランクルームを無くしてしまったような形のものです。その中でも特に、全長が短いものをハッチバックと呼びます。

●ステーションワゴン

セダンのトランクルームを広げてキャビンとつなげてしまったような形のものを指します。

●ミニバン

3列シートを備えたワゴンタイプの自動車です。ワゴンというのは後ろの座席とトランクの仕切りがなく、屋根が最後部まで伸びている形状。車高が高く、乗車定員も7〜8人が一般的で、ファミリー向けの車種として人気があります。スライドドアが付いているタイプが多いです。

●ワンボックス

「ミニバン」の一種。その名の通り、見た目が「箱状」タイプです。ボンネットの出っぱりがなく、座席のスペースと荷物室が一体になっています。

●SUV

「SPORTS UTILITY VEHICLE」のことで「スポーツ多目的車」と訳されます。車高が高いワゴンタイプです。ボンネットが確保されていて、いわゆる「ジープ」タイプの自動車のことです。

官房機密費とは

更新:2016年2月25日
大阪の市民グループが、いわゆる官房機密費の使い道を明らかにするよう求めた裁判。高等裁判所レベルでも「支払先や使途が書かれていない文書は開示すべきだ」との判断を示しました。官房機密費について調べました。

★政策を円滑に進めるため、官房長官の判断で機動的に使われる資金

正式名称は「内閣官房報償費」といいます。国の事業を円滑に行うため機動的に使う経費で、官房長官の判断で支出され、国内、海外の極秘の情報の収集が主な目的とされます。1947年度から予算計上されており、最近は予算に年14億6000万円が計上されています。

会計処理は内閣総務官が管理します。支出には領収書が不要、会計検査院による監査も免除されています。原則、使い道が公開されることはありません。

支出目的ごとに、
[1]官房長官が高度な政策的判断により使用する政策推進費。
[2]必要な情報を得るための調査情報対策費。
[3]円滑な活動を支援するための活動関係費に分類されます。

大阪の市民グループ「政治資金オンブズマン」のメンバーは「機密費が野党対策や政治家の資金集めパーティーの費用、飲食費、背広代などに充てられている疑いがある」としています。一方で国は「(開示は)時期や金額から支出先や使い道が推測でき、相手の協力が得られなくなる」と反論しています。

民主党政権で使い道の一部公開が検討されましたが、実現しませんでした。

「晩ごはん」「夜ご飯」

更新:2016年2月24日
テレビ番組「ちちんぷいぷい」の「晩ごはん何?」のコーナーご存知ですか? 高校生でもサラリーマンでも、携帯電話でお母さんに電話してもらって「今日の晩ごはん何?」と尋ねるコーナーです。最近、若い世代に「晩ごはん」といわずに「夜ごはん」という人が多いのが気になります。

★「夜ごはん」は俗語感が強い!

わが家の子どもたちも、幼いころから「夜ごはん」を使っていますし、同僚の若手アナウンサーに聞いても、「夜ごはん」にまったく違和感がないといいます。ただ、どの国語辞典にもまだ「夜ごはん」の言い方は掲載されていません。

「朝ごはん」「昼ごはん」「晩ごはん」は、ちょっと堅めに表現すると「朝食」「昼食」「夕食」。夕食に関しては「夕餉(ゆうげ)」とか「晩餐(ばんさん)」「夕飯(ゆうはん)」という言い方もあります。

国語辞典を調べると「夜の早い時間が晩」です。

●ばん【晩】ゆうべ。ひぐれ。宵(よい)。日没後、人がまだ寝ずにいるような夜の初めの方。

●よる【夜】日没から日の出までの時間。太陽が没して暗い間。

なぜ「晩ごはん」よりも「夜ごはん」を使う人が増えているのでしょうか?。確かに夕方にごはんを食べることは減って、文字どおり「夜」にごはんを食べる人が多いのは事実です。さらに言葉として、「朝」「昼」と来ると、次に来る言葉は「夕」よりも「夜」のほうが自然です。

ちなみに「夜食(やしょく)」となるとイメージが違います。辞書には「夕食後、夜遅くなってから食べる簡単な食事」とあり、夜遅くの補助食との認識で、定期的な食事ではないような気がします。

全国の新聞・通信・放送でつくる日本新聞協会の新聞用語懇談会で「夜ごはん」について議論されたことがあります。「夜ごはん」という言葉に対しては、そのまま使う社が6社、他の表現にする社が14社。認める6社のうち5社は新聞だったそうです。放送局はほぼ認めていません。

「アナウンサーが使うと『幼く』聞こえる」との意見もあったそうです。確かに「夜ごはん」は、字で見るより口に出すほうが『俗語』のイメージが強いかもしれません。

ご応募できます

更新:2016年2月23日
ラジオコマーシャルで「ホームページからご応募できます」というコメントが放送されていました。リスナーへの呼びかけでしたが違和感あります。敬語の使い方、問題がありそうです。

★謙譲表現との混同 あっさりと「応募できます」でいい!

一見、敬語表現に思える「ご応募できます」。しかし、「応募できます」に「ご」をつけただけの不自然な日本語で、謙譲表現との混同です。これを大目に見てしまうと、もう尊敬語と謙譲語の区別がなくなってしまいます。

言葉が恐ろしいのは、あまりにも繰り返し聞かせれているうちに、「ご応募できます」がリスナーへの尊敬表現として納得してしまうところです。アナウンサーの同僚に何人かに聞くと、さすがにみんなおかしいと感じていました。

「ご応募できます」は尊敬語のよくある間違いで、謙譲語との混同です。

●自分が主語のときは自分が一段下がる、それが謙譲語。

●相手が主語のときは相手を一段上にやる、それが尊敬語。

「お(ご)〜する」という言い方は自分側の謙譲語であるのに、それをリスナーの行為に対して使うと間違った使い方です。これを尊敬語にするには「○○いただけます」「○○なれます」のような尊敬語の形にします。「ホームページからご応募になれます」「ホームページからご応募いただけます」とするのが正しい敬語表現です。

どうも「お」や「ご」をつければ敬語らしくなるという考えがあるのではないでしょうか。「応募できます」という表現では相手に失礼、と思って「ご応募」と「ご」をつけてしまったのが間違いのもとかもしれません。「お」や「ご」は何にでも付ければよいというものではありません。個人的にはあっさりと「応募できます」といっても失礼に当たるわけではないと思うのですが、いかがでしょうか?

アダムズ方式

更新:2016年2月22日
衆議院小選挙区の定数配分を「アダムズ方式」と呼ばれる新しいやり方で行うことが検討されています。「アダムス方式」とはどういうものでしょうか?

★都道府県人口を一定の数で割り、計算結果をベースに議席数決定

選挙区の人口が異なるために、1票の重みに差が生じる「一票の格差」について、最高裁判所は最大格差が2倍を超えていた2009年と2012年の衆議院選挙を、いずれも「違憲状態」と判断しました。そこで衆議院議長の諮問機関「衆院選挙制度に関する調査会」は有識者が集まって去年9月から議論を続けています。

現在、衆議院小選挙区では「1人別枠方式」がとられています。衆院の小選挙区300議席のうち、まず47都道府県に1議席ずつを「別枠」として割り当て、残り253議席を人口に比例して配分する方式。最高裁判決で「1票の格差」の原因だと批判され、撤廃が決まっています。

アダムズ方式はアメリカの第6代米大統領ジョン・クインシー・アダムズ(1767〜1848)が考案したとされる議席の配分方式です。人口に比例して定数を配分する計算方法の一つで、フランスやカナダの議会で採用されています。都道府県のそれぞれの人口をある数で割り、出た商の小数点以下を切り上げて定数を決めます。 小数点以下を切り上げるため、各都道府県には最低でも1が割り振られます。この方式では、定数が1議席となる都道府県がなくなり、各都道府県の人口比を反映しやすいといった利点があるとされます。

この方式を衆院選挙の小選挙区で採用すると、東北や九州などの13の県では1議席ずつ減る一方、東京・千葉など人口が多い1都4県では7議席増えるので、小選挙区の定数は「7増13減」となります。都道府県間の最大格差は1.621倍に、選挙区間の最大格差も当面、2倍未満に収まるとみられていて、選挙区間の「1票の格差」は解消されるものの、人口の少ない地域の議席が減るため、こうした地域を地盤とする自民党に慎重論があり、与野党協議は難航しています。

「浪花・浪速・難波」の区別

更新:2016年2月19日
大阪でとび職の男が、高いところによじ登って空き巣を103件重ねたとして逮捕されました。警察関係者からは「なにわの“ムササビ男”」と呼ばれていたそうです。大阪を表す古い呼称「なにわ」は「浪花・浪速・難波」といろいろな表記があります。どう区別すればいいのでしょうか?

★行政区の「浪速区」以外は決まりはない

広辞苑第四版(岩波書店)で調べると、「なにわ」は「難波・浪速・浪花」の漢字が掲載されていて、「大阪市およびその付近の呼称」とあります。

日本地名辞典(三省堂)で「なにわ」を調べると、「難波」とあり、『仁徳天皇の難波高津宮(なにわ・たかつのみや)や孝徳天皇の難波長柄豊碕宮(なにわ・ながらとよさきのみや)、聖武天皇の難波宮(なにわのみや)に見られるように、古くから上町(うえまち)台地付近を指す地域名として用いられた』とあります。

歴史的に古いのは「難波(なにわ)」であったようですが、なぜ「浪速・浪花」に変化したのでしょうか?

大阪市に「浪速(なにわ)区」ができたのは1925年(大正14)。区名の由来が浪速区のホームページに掲載されていました。

大阪の上町(うえまち)台地のすぐそばまで海が迫っていた古代には、台地の東西が難波江・難波潟と呼ばれていました。そして古い歌(古今和歌集の王仁[わに]の作)が決め手となりました。その歌は「浪速津に 咲くやこの花 冬ごもり 今ははるべと 咲くやこの花」です。ここから「浪速」が取られたんです。

一方、「浪花」ですが三味線を伴奏にするのは「浪花節(なにわぶし)」、大阪の芸者さんによる春の踊りは「浪花踊り(なにわおどり)」など芸能分野で良く使われています。こちらは「漢字のイメージ」という説があります。

さらに「難波」は「なんば」と読むと南海電車の難波駅一帯を中心としたエリアを指します。地名辞典では、「道頓堀の南からなんば駅前周辺の街区を漠然と指す」とあります。「難波(なんば)」は「なにわ」から「なんば」に訛ったいう説があります。

「要介護度」とは

更新:2016年2月18日
介護保険制度の見直しに向けた議論が始まりました。膨らみ続ける介護費を抑えるために、要介護度が軽い人向けのサービスを絞り込むことが柱になりそうです。よく耳にする「要介護度」について調べました。

★高齢者などの介護を社会全体で支えていく制度

介護保険制度が始まったのは2000年4月、その年の介護費は3兆6000億円でしたが、2014年度は10兆円を突破。「団塊の世代」がすべて75歳以上になる2025年には20兆円になると試算されています。この保険料は、現役世代である40歳から64歳までが支払っています。

65歳以上の高齢者は、市区町村に申請して「要介護認定」を受け、その度合いに応じて保健士などが「ケアプラン」と呼ばれる介護サービス計画を作成し、在宅サービス、または施設サービスを受けることができます。利用者は介護費用の1割を自己負担。それ以外の9割の費用は半分が保険料、残り半分が公費で賄われます。

このサービスを利用するには、要支援または要介護の認定を受ける必要があります。介護を必要とする度合いとして、最も軽い「要支援1」から最も重い「要介護5」まで、7段階の介護度が設けられています。

「要支援」とは、現在は介護の必要がないものの、将来要介護状態になる恐れがあり6か月以上継続して家事や日常生活に支援が必要な状態をいいます。「要介護」とは、原則として6か月以上継続して、入浴、排泄、食事などの日常生活動作について常に介護を要すると見込まれる状態のことをいい、要介護度1〜5の5段階に分けられます。

●要介護度1 立ち上がりや歩行が不安定。排泄、入浴などで部分的に介助が必要。 支給限度額16万5800円

●要介護度2 立ち上がりや歩行などが自力では困難。排泄、入浴、衣類の着脱などで介助が必要。 支給限度19万4800円

●要介護度3 立ち上がりや歩行などが自分ではできない。排泄、入浴、衣類の着脱などで全体的な介助が必要。 支給限度26万7500円

●要介護度4 排泄、入浴、衣類の着脱などの日常生活に全面的に介助が必要。 支給限度30万6000円

●要介護度5 寝たきり状態。日常生活全般に全面的な介助が必要  支給限度額35万8300円

「生そば」「生醤油」「生酒」

更新:2016年2月17日
「生そば」「生醤油」「生酒」はどう読みますか?「きそば」「きじょうゆ」「きざけ」と読むと教わりましたが、最近「なまそば」「なまじょうゆ」「なまざけ」という読み方もあるそうです。「生(なま)」と読む場合はどういうときでしょうか?

★混ざりもののない「生(き)」、熱処理していない「生(なま)」

「生(き)そば」は、つなぎをまったく使わないで「そば粉」だけで打ったそばのことで「十割そば」とも言います。小麦粉を混ぜたそばは、庶民的な食べ物とされ、高級な蕎麦は十割で打つものでした。ところが、乾燥した麺に対して「茹でていない(火を通していない)そば」という意味で「生(なま)そば」という言い方もあり、間違いではありません。

同じように「生醤油」は「きじょうゆ」と読むのですが、「なまじょうゆ」もあるそうです。「生(き)じょうゆ」は、純粋な醤油という意味、一方、「生(なま)醤油」は「もろみ」を絞ったあとに、雑菌などを加熱殺菌をしていない醤油のこと。香りが良く、味もまろやかだそう。

混ぜ物のない純粋の酒のことは「生(き)ざけ」と読みますが、もろみを絞っただけで、殺菌のための火入れをしていない酒は「生(なま)ざけ」です。どうやら、熱処理していないものは「なま」と呼ぶようです。

緑色の信号をなぜ「青信号」?

更新:2016年2月16日
長い間、疑問だった「緑信号」をなぜ「青信号」と呼ぶかについて、TBS系列のテレビ番組「林先生の初耳学」(2月14日放送)で見事に解説されていました。日本書紀や古事記をみても、色に関する言葉に「緑」はなかったというのです。

★日本では色を表す言葉が4色しかなかった!

もともと日本には、色を表す言葉が「黒・赤・青・白」の4色しかありませんでした。緑色のものを青と表現するのは、元々「緑」という言葉がなく、青で表現していたことの名残りです。植物の緑のことを「青ねぎ」「青竹」などと表現するのと同じです。

「黒・赤・青・白」という言葉は中国から入ってきた、方角を表す言葉でもあります。黒が「北」です。黒は別名「玄」ともいい、あとに人って書くと「玄人」となります。 青が「東」で、赤が「南」(「朱」という言い方もします)、白が「西」です。

実は季節にも対応していて、 黒の場合は、「玄冬」といいます。 青い春で、「青春」、 夏は「朱夏」といいます。 秋は「白秋」。

★方角、明るさ、濃淡を表した特別な4色

黒は「暗し」、赤は「明し」。暗いか明るいかの光の関係で「北」と「南」を表し、白は、「しるし」という古文に出てくる「はっきりしている」という意味の単語。青は「あわし」で「ぼんやりしている」。暗いか、明るいか、はっきりしているか、ぼんやりしているか、この4色が特別な色だったんです。

それが証拠に形容詞にしてみると簡単にわかります。黒い、青い、赤い、白いと「い」を付けると形容詞になりますが、他の色、例えば黄→黄い、緑→緑い、むらさき→むらさきい、では形容詞になりません。「色」をつけないといけません。

昔から日本に色はこれらしかなかったということです。特別な言葉なんです。ちなみに、大相撲の土俵の上には房が4つ下がっていますが、「黒房(くろぶさ)」「青房(あおぶさ)」「赤房(あかぶさ)」「白房(しろぶさ)」です。青房は信号と同じく「緑」に見えます。

こけら落としマッチ

更新:2016年2月15日
サッカーJ1、ガンバ大阪の新たなホームスタジアム・吹田スタジアムで、名古屋グランパスを迎えて初めての試合が行われ、ガンバ大阪は3―1で勝利しました。このニュースは各社が「こけら落としマッチ」と呼んでいましたが、スポーツ競技スタジアムでも、この言葉は使うんでしょうか?

★本来は「新しい劇場の最初の催し」を指す

「ガンバ大阪の新本拠地、こけら落とし」「こけら落としは3発快勝」など新聞の見出しはもちろん、試合後にはガンバの長谷川健太監督が「こけら落としの試合には負けるわけにはいかない」と話していました。どうも違和感があります。

「こけら落とし」は、本来は新たに建てられた劇場で初めて行われる催しのことです。「こけら」というのは、木のカケラ、細長く削った木材やカンナで出た木屑のことです。昔は、木造の屋根を持つ芝居小屋で、落成の際に屋根に残った木屑を払い落としていました。これが転じて、落成時に行われる興業を示す語になったとされます。

国語辞典には「劇場」のこと以外の用例は掲載されていません。しかし今回、主催者の吹田市やガンバ大阪が「こけら落としマッチ」という名称に決めたため、新聞・テレビ各社もこれを使いました。

「粛々(しゅくしゅく)と」

更新:2016年2月12日
資産運用に失敗した宗教法人の実務の責任者が訴えられたニュースで、この責任者が「裁判の中で粛々と述べていきたい」とコメントしていました。最近、政治家や不祥事を起こした組織のトップが神妙な顔つきで受け答えしながら、この「粛々と」を使っているのをよく見ます。お詫び会見の常套句と化しています。本来の意味をわかって使っているんでしょうか?

★本来は「静かなさま、おごそかなさま」

「粛(しゅく)は、「自粛」のように行動などをつつしむ、「粛正」のように厳しく対処する、「静粛」のようにおごそか、静か、という意味で使われる漢字です。この「粛」を重ねた「粛々」は、静かなさま、おごそかなさまを表す言葉のはずです。「葬儀は粛々ととり行われた」「粛々と判決を下した」と「重く静かな」の意味で使う言葉です。

政治家は口癖のように「粛々と」を使います。誤解を招くとしたら使わないほうがいいのですが、その一例が普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題です。菅官房長官は、会見のたびに「粛々と進める」を繰り返しました。ところが、「どんなに反対があっても、そういう反対には妨害されずに進める」というニュアンスに受け取られ、「上から目線だ」として沖縄県民から批判が上がりました。

本来「粛々と」には悪いイメージはないはずなのですが、「批判に耳を貸さずに」といった不快な意味合いを帯びるとするなら使わないほうがいいですよね。

「スマホ」「スマフォ」

更新:2016年2月10日
何気ない会話からの疑問です。スマートフォンは、略すと「スマホ」と表記します。なぜ「スマフォ」ではないのでしょうか?

★発音しにくい「スマフォ」

職場の隣席のベテラン・Kアナのガラパゴス携帯が寿命になり、ついに「スマートフォン」に買い替えることに。ご本人は「メールと電話機能だけでええねんけど」とおっしゃっていて、パソコンに準じる機能を持つ「Smartphone」には抵抗があるようです。

文字通り「賢い(smart)電話(phone)」、カタカナでは「スマートフォン」と書きます。「phone」という発音は、いわゆる「f音」で、カタカナ表記するなら、「ホ」ではなく、「フォ」とするのが合っているからです。

しかし、略語は「スマホ」が圧倒的に支持されています。(Googleで検索すると「スマフォ」2280万件 「スマホ」1億3800万件)

総務省をはじめ携帯電話会社各社も「スマホ」という表記を使っています。なぜ「スマフォ」ではないのでしょうか?「スマホ」の「ホ」なんてどこにもありません。

アナウンサー室の同僚と考えてみました。英語の発音でいえば「スマフォ」が正しいのでしょうが、発音してみてください。「マ」と「フォ」を続けて発音するのは難しい。mの後、母音aでいったん唇が離れ、すぐfへと流れます。唇をとんがらせねばならず、実に発音しにくい。

発音しにくいとなれば、より発音しやすい方向に流れて、発音のしやすさから「スマホ」が定着したのではないでしょうか?

「立たせられる」 「立たされる」

更新:2016年2月9日
先輩のアナウンサーから「立つ」の使役形「立たせる」が受身になった「立たせられる」という言葉はどう思う?と聞かれて違和感を覚えました。「立たされる」でいいのではないでしょうか?

★使役受け身の難しさ

使役で言い表されたことが、さらに受け身の形で表現されることを「使役受け身」といいます。「立つ」の使役形「立たせる」が受け身になると、「立たせられる」となりますが、これを縮めて「立たされる」ともいいます。「立た『せら』れる」の『せら』の部分が縮まって『さ』になり「立た『さ』れる」となったんです。これを使役受け身形の短縮形と呼ばれます。

「立つ」→使役形「立たせる」→受け身「立たせられる」→短縮形「立たされる」
「飲む」→使役形「飲ませる」→受け身「飲ませられる」→短縮形「飲まされる」
「書く」→使役形「書かせる」→受け身「書かせられる」→短縮形「書かされる」

●サ行の動詞は短縮形は認められない

「直す」→使役形「直させる」→受け身「直させられる」
※「直させられる」であって「直さされる」と短縮形はありません。

「話す」→使役形「話させる」→受け身「話させられる」
※「話させられる」であって「話さされる」という短縮形はありません。

●上一段活用や下一段活用の動詞も短縮は認められない

「煮る」→使役形「煮させる」→受け身「煮させられる」

「考える」→使役形「考えさせる」→受け身「考えさせられる」

気温の表現 「氷点下」「マイナス」

更新:2016年2月8日
天気予報のコメントで新人のアナウンサーが「きょうの最高気温は北部で6度、最低気温はマイナス4度」と読んでいました。私は一瞬、「最低気温は6度ー4度=2度」なのかと勘違いしました。いま、放送では氷点下もマイナスも混在している状況です。そもそも気温の「マイナス○度」という表現はいろいろと誤解を招かないでしょうか?

★地上気温以外では「マイナス○度」が適切

気象庁のホームページで「気象用語・気温に関する用語」を調べると、「氷点下:気温0度以下 気象情報では『氷点下』を使用し、『マイナス9度』といった表現はしない。0度の場合は、氷点下は付加しない」とあります。

一方、同じNHKの「気象・災害ハンドブック」には「気温を表す場合に、氷点下○度○分を、マイナス〜度〜分と言ってもよい」と書かれています。

もともと基本的には「氷点下」で統一されていた温度の表記、なぜ揺れてきているんでしょうか?

●氷点とは1気圧の元での摂氏零度のこと。気圧は上空へ行くほど低くなりますから、例えば上空5000メートル付近では1気圧よりも低くなり、そこでは氷点下という言葉は適切ではありません。その気温が1気圧の場所であるかどうかが問題になります。そのため地上以外の気温に限っては「マイナス」のほうも容認されているのだと思います。

●それ以外に「氷点下」はどうも堅苦しい、「マイナス」のほうがスマートだと感じる人が多いという意見もあります。

ただ、「マイナス」という言葉にはいろんな意味があります。「負の数」だけでなく「引くこと」「増減の減」「過不足の不足」もあって、データを並記したばあい、比較しての表現と間違える恐れがあります。最低気温は氷点下4度というほうが余分な解釈が入り込む余地はなくなります。間違えられる恐れのあるときは「氷点下」がいいかもしれません。

ただし、「最高気温は氷点下の真冬日でした」という場合、これは「マイナス」とは言い換えることはできませんよね。

インフルエンザ注意報・警報

更新:2016年2月5日
インフルエンザの患者数が全国的に急増しています。ニュースで出てくる「インフルエンザ注意報・警報」について調べました。

★厚生労働省が発表 インフルエンザ患者数に基づく警報

空気が乾燥するこの時期は毎年、インフルエンザの流行がピークを迎えます。今年も1月半ばからの冷え込みで一気に広がり、インフルエンザの患者が急激に増えています。

厚生労働省は全国の保健所ごとに「インフルエンザ患者」を集計しています。このデータをもとに、国立感染症研究所の感染症情報センターは注意報や警報を出すことになっています。

警報には「流行発生警報」と「注意報」の2種類があります。インフルエンザ定点調査の対象とされた全国5000の医療機関について、1週間の定点あたり報告数がある基準値以上の場合に、それぞれ発生します。

注意報や警報は、あくまでも各都道府県や保健所の専門家に向けて、流行状況の指標を提供するもので、この情報に基づいて、各都道府県が「警報」を出すことになります。

●インフルエンザ注意報

いずれかの保健所管内の報告患者数が定点当たり10人以上となったときに発表。今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性が高いこと、また流行のあとなら流行が継続していると疑われることを表します。

●インフルエンザ流行発生警報

いずれかの保健所管内の報告患者数が定点当たり30人以上となったときに発表。大きな流行が発生、または継続しつつあることが疑われることを表します。

私はこの時期、予防のためにマスクを常に付けています。寒い季節が続きますが、健康で乗り切りましょう。

「表しました」の読み方

更新:2016年2月4日
北朝鮮が、事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験を予告したことに対し、中国政府は「遺憾の意を表しました」というニュースを読みました。「ひょうしました」か「あらわしました」かで読み方を迷ったのですが、どちらが正しいのでしょうか?

★「〜の意を表す」の読みは「ひょうす」

「表しました」は「あらわしました」とも「ひょうしました」とも読めますが「敬意を表す」「感謝の意を表す」「哀悼の意を表す」は、「ひょうす」と読まないと誤読になります。

●「表(ひょう)す」と読む場合

(公の場で要人が)自分の考えや気持ちを口にしたり、文書で示す、意見を表明する、という意味のときは「ひょうした」と言います。「○○の意を表した」の形になる言い回しが一般的です。

●「表(あらわ)す」と読む場合

「グラフで表した」「怒りを顔に表した」「倒置法で主人公の驚きを表した」など図表や記号による視覚的な表示や個人間の感情を出すとき、芸術作品の表現の場合は「あらわした」です。

実は、1973年までは、意味によって送り仮名の付け方が違っていたため、区別ができました。「表(あらわ)す」は「表わす」と送り仮名をつけていたんです。

国は1959年(昭和34年)の「送り仮名の付け方」、1973年(昭和48年)の「改定送り仮名の付け方」(いずれも内閣訓示・告示)と2回にわたり、 それまで統一されていなかった送り仮名の付け方を示しました。

かつては「表(あらわ)す」は「表わす」と送っていましたが、「行なう」が「行う」に改められた1973年の送り仮名改定で「表(あらわ)す」と書くように統一された結果、「ひょうします」と「あらわします」はいずれも「表します」と記すようになって以降、こうした混乱が生まれるようになったんです。

「くらい」「ぐらい」

更新:2016年2月3日
ニュースでよく出てくる「〜位」は「ぐらい」と濁るか「くらい」と濁らないのか、よく迷います。「100人くらい」か「100人ぐらい」か。「中くらい」か「中ぐらい」か。「どのくらい」か「どのぐらい」か。何か法則のようなものはあるのでしょうか?

★伝統的には体言には「ぐらい」を使う

NHKの「ことばのハンドブック第2版」の「〜くらい・ぐらい」を見ると「以前は次のような使い分けがあった」として次のように書かれています。

(1)体言には「ぐらい」が付く。
(2)「この・その・あの・どの」には「くらい」が付く。
(3)用言や助動詞には、普通は「ぐらい」が付くが「くらい」が付くこともある。

一方、日本国語大辞典(小学館)で「くらい」を調べると

江戸時代には、名詞に付くばあいには濁音、コ・ソ・ア・ドに付くばあいは清音、活用語に付くばあいは清濁両形をとる傾向がある。とかかれています。NHKとよく似ています。

こうしてみると現在ではとくに明確な区別はないようです。

私は、原稿に「〜くらい」と書かれていると何も考えずに「ぐらい」と濁って読む場合が多い気がします。ただ、その前の言葉に濁音がある場合、例えば「十代くらい」では濁音が続かないように「くらい」と濁らずに読みます。

「揺すぶる」と「揺さぶる」

更新:2016年2月2日
大阪で生後3か月の長男に暴行を加え死亡させた罪に問われた父親の裁判員裁判のニュースを読みました。泣き止まないことに腹を立て体を「激しく揺すぶった」と原稿にあり、「揺さぶった」ではないかとデスクと話し、原稿を変えました。「揺すぶる」と「揺さぶる」はどう違うんでしょうか?

★外から圧力を加えて揺するのが「揺さぶる」

新明解国語辞典(三省堂)で調べると一目瞭然でした。

●「揺さぶる」=外から力を加えて大きく揺れるようにする。何らかのショックを与えて気持ちを動揺させる意にも用いられる。
(例)心(足もと・基盤・政局)を揺さぶる。(名詞)「揺さぶり」(例)揺さぶりを掛ける

●「揺すぶる」=大きくゆれるように動かす(例)からだを揺すぶる

一目瞭然。「揺さぶる」も「揺すぶる」も、ともに大きく揺れるようにすることですが、外から力を加えるのが「揺さぶる」、自分で揺らすのが「揺すぶる」と使い分けます。今回、この赤ちゃんは、自分で「揺すぶった」のではなく、外から力を加えられて、つまり父親によって「揺さぶられた」のです。

ちなみに乳児の身体を大きく揺することで網膜(もうまく)出血、硬膜下(こうまっか)血腫、クモ膜下血腫が引き起こされることは、「揺さぶられっ子症候群」「乳幼児揺さぶられ症候群」と呼ばれています。

「装填」と「装荷」

更新:2016年2月1日
関西電力の高浜原子力発電所3号機が「臨界」に達したニュースで、4号機についても核燃料を「装填(そうてん)」する作業が行われたとありました。この時、放送のアナウンスコメントでは「装填」、字幕では「装荷(そうか)」と出されたのですが、どう違うのでしょうか?

★原子力発電所に核燃料を配備すること

この日の全国紙各紙を見ると「燃料装荷」「核燃料を装荷」「装荷作業」という言葉が当たり前のように使われていました。しかし、「装荷(そうか)」を国語辞典で調べると、広辞苑に「電話回線で、通信電流の減衰を防ぐために、回線路の一定間隔ごとにコイルを直列に挿入すること」とあり、燃料の配備といった意味は掲載されていません。

ところが小学館・日本語新辞典には、「2.原子力発電所に核燃料を配備すること」とあり、どうやら最近の業界用語のようです。

そこで関西電力広報室報道グループに尋ねました。『一般的な言葉ではないが、原子力発電所に燃料を配備する際は、「装填」ではなく「装荷」を使っています。火力発電所などには使わない』とのことでした。「装荷」は、まだまだ一般的ではない言葉ですし、放送では「装填」「配備」のほうがいいかもしれません。



プロフィール

田丸 一男Photo
名前:田丸 一男
生年月日:1960年9月11日
入社年:1991年
出身都道府県:大阪府
出身大学:関西学院大学
趣味:ワインとイタリアン、クラシック音楽鑑賞、日本美術と印象派絵画
何でもひとこと:寝起きの良さが強み、朝一番からしっかり声が出せます。ナレーションにはこだわりがあって、硬派から軟派までOK。
もう9年、チェロ演奏が趣味。クラシック音楽が頭に常に流れていますし、庭の草むしりをしながらモーツァルトを口ずさみます。アイロン掛けや料理など家事が好きで、妻からは重宝がられていると思います。

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田丸 一男アナが千葉 猛アナを30秒で紹介します!